02 魔猪狩り
三人はカルカリの木を観察できる木陰に身を隠し、魔猪を待ち構えていた。
「来たぜ、トンカツだー」
普段は気配に敏感な魔猪も、好物のカルカリの実を前にすると、周囲への警戒はなおざりになる。
「……何でもいいから行け」
アキラの声で、木々の隙間からサツキが矢を放つ。三連続のうちの一本の矢が、魔猪の鼻先に刺さった。ブフォオーっという鳴き声とともに、魔猪が彼らに向かってくる。
「皮を傷つけるなよ」
「えー、めんどくせー」
アキラの注文に文句を言いつつも、シュウは突進する魔猪の頭部に剣を叩きつけた。骨を砕く手応えを感じたが、魔猪の勢いは止まらず、矢を射ったサツキに向かう。
「ごめーん」
「謝るくらいなら一撃で仕留めろっ」
妹を庇って前に出たアキラが、魔猪の喉を斬り上げた。骨を断つ力のない彼の一刀は、胴から尾にかけて深く切り裂いた。身体を割かれてようやく絶命した魔猪を見て、アキラは「シュウが仕留めていれば皮にも値がついたのに」とため息を吐いた。
「肉を狩りに来たんだから、毛皮はどーでもいいだろー」
「シュウはいい加減に、一石二鳥、あるいはちりも積もれば山となる、という言葉を覚えてくれ」
絶命した魔猪を放置して言い争う二人を、サツキが叱りつけた。カルカリの実を食べて肥え太った魔猪は、サツキの細腕では持ち上げられない。
「お兄ちゃん、シュウさん、喧嘩してないで解体を手伝って!」