14 雨の夜
その日は夕方から降りはじめた雨のせいで、前日よりも冷え込む夜だった。
「お兄ちゃん、寒いからって火鉢を自分だけで抱え込まないで」
テーブルをセッティングしながら、サツキはリビングの片隅で火鉢を独占する兄を注意した。近くにいるコズエとヒロが寒そうにしているとようやく気づいて、アキラは二人が火に当たれる場所を作った。
「今夜は冷え込みそうですね」
「暖炉がないから、部屋があたたまらないよね」
二人は火鉢で指先をあたためつつ、ナモルタタルの冬を懐かしく思い出していた。
暖炉で部屋全体をあたためるナモルタタルとは違い、温暖なダッタザートの家屋は、雨風には強く快適だが、あまり寒さを考慮した作りではない。せいぜいカーテンを厚手のものに替えるくらいだ。それでも寒さを我慢できなければ、火鉢にあたるか厚着をするしかない。
「今晩は冷え込みそうだし、ソックス履いて寝なきゃなぁ」
「コズエちゃん、一緒に寝る? 二人の毛布を重ねたらあたたかいわよ」
寄り添っていれば互いの体温でほかほかだ。女子二人は快適な睡眠環境を手に入れたようだ。
「……ヒロ」
「すみません、俺、暑がりなので」
アキラが詳細を口にする前に、ヒロはさりげなく視線を逸らせ、火鉢で指先をあたためているくせに堂々と矛盾した理由でNOを告げた。
「コウメイさんかシュウさんに頼めばいいのでは?」
「シュウは寝相が悪すぎる……」
アキラは顔をしかめた。ベッドから落ちないのが不思議な寝相だ。殴られた痛みで目を覚ましたくはない。
「それにコウメイは寝苦しい」
枕や毛布を抱き枕にする癖のあるコウメイには、ハリハルタで雑魚寝をしていた当時、抱き枕代わりにギュウギュウに締めつけられて難儀した。
「寝苦しい」ですむような力ではなかったと愚痴るアキラに、ヒロは満面の笑みを向けた。
「暖を取るならコウメイさんが良さそうですね」
「良くない」
苦虫を噛み潰したようなアキラに、やりとりを聞いていたコズエが「縞柄鳥の羽毛があるから、軽くてあたたかい掛け布団作れますよ」と救いの手を差し伸べた。
「さすがに今夜は間に合いませんけど」
「ありがたいが、大変じゃないか?」
「売れるほどの量はないし、羽毛の使い道をどうしようか悩んでたんです。アキラさんに一枚作ってみて、良さそうなら人数分作りたいし」
試作品作り手伝ってくださいね、と微笑むコズエに、アキラは全面的な協力を約束したのだった。
翌日から、食料調達ではなく、快適な寝具の為の狩りが続くことになった。




