01 肉種戦争
街門を出てすぐの草むらで、彼らは人目もはばからず、くだらない論争をしていた。
「暴牛に決まってるだろー。肉汁たっぷりのハンバーグが食いてー」
「角ウサギにしましょうよ。薄切りにして冬香芋のすりおろしのタレで焼くんです」
シュウは街西の草原で暴牛を狩るのだと主張し、コズエは北の森でトラント草の採取ついでに角ウサギ肉を狩ろうと譲らない。
「久しぶりに唐揚げを作りてぇな」
空を仰いだコウメイが、渡り鳥を見てそう呟けば、サツキは「明日は休養日ですから、久しぶりにソーセージ作りはどうですか?」と提案する。
「魔猪肉と玉菜の鍋を食べたい」
アキラは市場で見つけた玉菜に心を奪われていた。見た目も食感もまるで白菜そのものな野菜と、薄切り魔猪肉とを交互に敷き詰めたミルフィーユ鍋しか考えられなくなっている。魔猪を探してカルカリの木を目指そうと、こちらも頑固だ。
五人のみっともない口論を少し離れた位置から眺めていたヒロは、深々とため息をついた。朝のミーティングで目的とする獲物を決めずに狩りに出ると、いつもこうなるのだ。
家から街門までの間に意見がまとまれば良いが、誰一人として譲らなければ、門の外で笑いものになるのである。
食欲で獲物を決める六人は、自分の食べたい料理のプレゼンに夢中だ。彼らを不審げに見ては通りすぎる冒険者らの視線にも気づいていない。
ヒロはもう一度大きなため息をついて、通り過ぎる冒険者らに愛想笑いを向けた後、声を荒げて凄んだ。
「時間がもったいない、ジャンケンで決めてください!」