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病室に着くと、ちょうど手術室から梨花が出てくるところだった。
「梨花…」
梨花は、そのまま集中治療室に運ばれて行った。
俺がガラス越しに梨花を見ていると、涙ぐんだ梨花の母さんがやってきた。
「彰くん、手術は成功だって」
「本当ですか。良かった...」
俺は、情けないことに座り込んでしまった。
(良かった。梨花は、戻ってきた)
俺は、流れてくる涙を止めることが出来なかった。
「あなたが梨花を説得してくれたおかげよ。あの子を助けてくれて、本当にありがとう」
梨花の母さんが頭を下げたので俺は慌てた。
「礼なんてやめてください。みんなの気持ちが梨花に手術を決めさせたんです」
「でも、一番は彰くんが梨花を支えてくれたからだわ。ありがとう」
次の日、麻酔から覚めた梨花は、俺に向かってピースサインを見せた。
まだ、いろいろ管はついているが、俺の大好きなあの笑顔だった。
梨花が退院する頃には季節も変わり、夏を迎えていた。
そして、今、俺は無事に退院した梨花の部屋にいる。
「梨花、退院おめでとう」
「ありがとう」
「あのさ。俺、…」
「あっそういえば。私ね。手術中、彰の夢見たんだよ」
「俺の夢?」
「うん、桜が綺麗な公園に彰といる夢。あの桜綺麗だったな~」
「それって...」
「なに?」
「いや。公園で何してたんだ」
「なんだっけな?あっ!背比べしてた。ねぇ、本当に比べっこしようよ」
梨花に手を引っ張られ立ち上がった。
「う~ん。夢とはやっぱりちょっと違うな。夢では、彰はもっと大きかったような」
「梨花。身長いくつ?」
「185だよ」
「え?181じゃないの?」
「それは、高2の時。あれ?何で私の身長知ってるの?もしかして、彰、私のストーカーなのって。あれ?これどこかで同じこと言ったような」
俺は、梨花を抱きしめた。
「彰、本当に大きくなったね。念願のどんぐりの背比べだね」
「それも前に言った」
「そうだっけ?」
梨花は、腕の中で笑った。
「梨花、お帰り」
「ただいま」
俺は、もう一度ぎゅっと抱きしめた。
「恥ずかしいからこのまま言うぞ」
「うん」
「梨花、ずっと大好きだった。これからも、ずっとそばにいさせてください」
「うん。どこにもいかないでね。私も大好きだよ」
俺の長い片思いがやっと実を結んだ。
月日は流れ、また春がやってきた。
そして、今俺たちは、桜吹雪の中を散歩している。さっきまで、桜を堪能していたのに、突然梨花が俺の顔を見て笑った。
「やっぱり、王子様は彰の方だったね」
「なんだよ突然」
「だって彰は、一年前、私を死の淵から助け出してくれたでしょ。ありがとう、王子様」
「わがままな姫を助け出すのは本当に大変だったよ」
俺は大袈裟な手振りをしながら答えた。
「それは、お手数をおかけしました。手がかかる姫はお嫌いですか?」
「手がかかる子ほどかわいいからね。どうかな?」
腕に捕まってきた梨花の頭を撫でた。
「じゃあ、これからも私は、わがまま姫でいなくちゃね。私だけの王子様」
「ほどほどでお願いします」
「う~ん。どうかな」
桜吹雪の中で笑う梨花は、とっても綺麗だった。
(泣き虫でかわいい俺だけのお姫様。ずっと側で守ってあげるからね)
俺が頭をまた撫でると不思議そうに梨花は、俺を見た。
「どうしたの?」
「かわいいなって思ってさ」
「ばか。何言ってるの」
耳を赤くして下を向く梨花に、俺はもう一度耳元に囁いた。
「俺のかわいいお姫様。大好きだよ」
完結です。
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