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プロローグ
一体どれくらい待ちつづけたのだろうか。自分でもわからなくなるくらい気が遠くなるような時間、ずっと凪は海を見つめながらそこに居た。
絶壁の岩肌で、きっと帰って来るという言葉を信じて、愛しく恐ろしい人を待ちつづけている。だが、その表情は曇っていた。
「騙したのですか……」
悲しそうな声で言う凪。その声は誰にも届かず、ただ波の音にかき消された。
滅多に止む事のない風は容赦なく凪に吹きつける。バタバタと凪の白い着物の裾がはためいていたが、それを気にとめる様子もなく、凪はうつむいていた。
荒波に削られた岩は凪の足元の底まで浸食が進んでいる。岩が崩れ落ちるのも時間の問題であった。
「この島が消えてしまう前に、早く助けて下さいませ、早く」
ひとりぼっちで、凪は上を見上げた。空は鉛色の雲に包まれ、今にも雨が降ってきそうだった。凪が白い頬に涙を落とすと、空から雷鳴が轟き、雷が小島を直撃する。凪の体がまばゆい光に包まれ、一瞬にして消えた。
誰も居なくなった岩壁は、轟々と風の音だけが虚しく響いている。まるで凪の泣き声のように。




