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君を想う月  作者: ししん
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夏といえば

はじめまして

右も左もわからない状態で書いております。

なんだか、もやもやしてすっきりしない

言葉に出来ない様な恋などを少しでも言葉に出来たらなぁなんて思って書きました。

少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

 今思えば僕にとっても大した話じゃないんだ。

 思春期故の勘違い、痛くて情けなくて恥かしい過去の話。

 でも何度も思い出してしまう。



 あれからもう長い月日が過ぎたというのに。

 ほんとにふとした事で彼女の影が走る。

 その度にありもしないたらればが僕を支配する。


 なぜなんだろう、あのたらればの中でなら僕はいつも正解を理解していて、それをちゃんと実行出来て、わずかなミスも起こさず、全てをうまくフォローして、彼女の些細な問題にも落ち着き払った優しい笑顔で、大丈夫って僕が何とかするからって。


 そんな現実とはまるで正反対の出来事なのに過去の記憶とごちゃごちゃになって、実は僕はそう出来てたんじゃないか、そうしてたんじゃないかって思うくらいに完璧に妄想できてしまう。


 だけどいつもそのたらればですら終わりだけは、現実と一緒で。


 彼女の家の玄関の前、振り向いた顔、いつもの気だるそうな眼がいつもより曇ってて、最後に僕の眼を見たまま軽くキスをして家の中へ消える。


 それから彼女からの連絡は一切来なくなって、連絡先も変わり気づいた時には僕の知り合いの先輩と付き合っている。


 毎度飽きることなくその映像が新鮮に蘇る。

 そこまでして僕はやっと支配から解放される。

 引きずっている、性懲りも無く。



 あれから僕は前進はおろか停滞も後退も出来ていない。

 ただ、流れに身を任せふらふらと何も考えないように生きている。

 でも、最近は特にひどい。

 タオルを見れば、歯ブラシを見れば、川を見れば、夜の坂道を、夜の公園を、本当に月日が重なるごとに些細な切っ掛けで思い出す。



 あれからどれだけの月日がたったかなんて、僕しかきっと覚えてないんだろうなって思う。 

 時間でいえば三年足らずかもしれない、でも振り返ると凄く時間が過ぎた感覚に囚われる。


 そりゃ、僕と君が出会ってから会わなくなるまでの時間よりも会わなくなってからの時間のほうが長いからかもしれない、でもやっぱりあの頃よりも時間が無駄に流れていくんだ。


 君が居た時は時間が生きていた。

 君が来るまでの時間が最初の頃は心の準備が間に合わなかったり、あの公園の時はずっと身体が熱くて、頭に白い靄がかかっていて、約束の時間まで、秒針が近づくたびに加速してる気がして。


 君となんども会う内に今度は凄く待っている時間が長く感じて、自転車の音がする度に聞えたほうに自然と意識が集中して。

 でも、ずっと変わらなかったのは君とあっている時間だけはとても早くて。

 時計は生きているんじゃないかってくらい複雑な動きをしていたんだ。



 だから、君と会わなくなってから時計は死んでしまった。

 いつも正確に一秒を刻んで、それに僕はどんどんなれて気づくと季節が変わってしまうくらいに。




 今の僕は抜け殻みたいに生きている。

 彼女のせいではない、でもあの時から僕の人生になんの起伏も感じれなくなった。

 あの時バイトしていた店に僕は就職した。

 店長が二号店を出すタイミングの時に従業員が足りなくなる一号店に就職した。

 バイトの頃よりは稼いではいるけど、けして給料が良い訳ではないけれど。

 

 君の思い出がこの街で唯一薄いところだったから。


 たったそれだけの情けない理由で僕は就職を決めた。

焦っていたのかもしれない、会わなくなってから君の仲の良かった友達に君がトリマーを目指して専門学校に進学するのを聞いて。


 僕の前では一切夢なんて語らずにいた君が、しっかりした目標と夢を持っていた事に。

 僕には何も無かったから、君と出会う前も会わなくなってからも僕には何も無いままで、君はあの人と出会ってから変わったのかななんて思うと、なんだかモヤモヤして、余計に自分が空っぽだといわれているようで。


 ただの妄想。

 わかっていたはずなんだ、君にとって僕は何にもなれない事も。

 僕と君が一緒にいたってなんにも生まれないことも。


 夏が近づくといつもこうだ。

 でも、今年は特に酷い。

 君のことを思い出して、過去のことを後悔をして、悔しくなって、また都合の良い風に過去を解釈する。

 去年まではそれだけですんだのに。


 きっと彼女のせいだ、新しく入ったバイトの女子高生。

 色白で、女の子にしては高めの身長で。

 運動が好きで、体の小さい君とは大違いなのに。


 あの目だ。

 切れ長で、くりっと丸くて大きな目。

 猫みたいな目。


 初めて彼女を見たときから、頻繫に君のことを思い出す。

 夏が近いこの時期に応募してきた彼女。

 

 まるで、あの暑い日に僕を訪ねにきた君みたいで、ずっと脳裏にその映像が流れている中彼女に仕事を教えてあげたんだ。

 こじ付けなのはわかってる、最近の僕は特におかしい、自分でも自覚している。

 

 だって、彼女と仕事先で会う度に夏を感じて。

 

 君にもう一度会えないかなって、会えるんじゃないかなって毎日思っているんだから。

 





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