おい
ねえねぇ、これからheavensに行くのでしょ?
札幌の街を歩いていたら小さな女の子に声をかけられた。青い瞳に茶髪、少々ぽっちゃりとした体型。緑色の生地で花柄のワンピースを着ている。森の妖精を体現したような風貌だ。この子は自分に似合う服をよくわかっている……なんて考える余裕はなかった。見知らぬ幼女から天国に行くのか問われて、僕の速度制限がかかった脳はフリーズしてしまった。
「あなたはheavensに向かっているの?」
もう一度少女が問いかけてきた。
「どういうこと?」
問返すと少女は不服そうな顔をした。
「世間知らずなのね。」
天国なんてネットニュースにはなかった。
「The bridge connecting heavens 通称ヘブン。重要特殊人材養成・研究学園の名前よ。受験資格は16から19の冴えない男子ってことだけなの。てっきり学園見学に行くのかと思ったわ」
さらっと悪口を言われた。否定はできないのだが。
「聞いたこともないよ」
と言いながら僕はスマホを取り出してググってみた。
「………………………。」
うーーん。
「ヘブンなんて見当たらないよ」
と言って顔を上げたら、少女の顔が蟹になっていた。いやク○展開過ぎるだろ。どうせこれ夢オチだな……。
「この私を見ても驚かないのですか?」
蟹が言った。どこで喋ってるんだ。
「うん別に。」
だって夢だもんね。
「素晴らしいしいです!先程までのご無礼誠に失礼いたしました!!!」
「何が素晴らしいの?」
「女の子の顔が突然タカアシガニになったら普通びっくりして倒れちゃうんですが、あなたサマは平然とされている!肝がすわってらっしゃいます、試験合格です!」
日が跳んで入学式である。このアホすぎる設定の学園の概要はこうらしいーーー
【2024年、遂に日本が独自に作成していた宇宙人へのメッセージ(暗号)に返信が来た。海王星を拠点に生息している知的生命体で、見た目は蟹に似ているプロレと言う種族だ。地球人や地球に住む生物に大部分は友好的である。そしてプロレは地球の生物で言うところの“呼吸“で気体の金Auを生成する。扱い次第で害にも大きな益にもなるため、日本は独自にプロレとの外交を担当する人材の育成を始めた。それがこの学園、ヘブンである……!!!】
さすが僕の夢、ダサいな。