バケーション
美園愛良は悩んでいた。
ネットを休止してしまった。
それ以外の楽しみを見つけなければならない。
学校が楽しくない。
TheEND
「いやっっだめだろっっ!!!」
ガバッと布団から起き上がる。
ボサボサの黒髪をさらに乱しながらこの後のことを考えていた。
美園愛良はネットの中ではヒーローだった。
バスケ部のスタメンだと嘘をついていた。
本当は幽霊部員なのだと言えなかった。
美園愛良の中で【まめまるくん】は理想の存在だった。
いつの間にか自分の理想が他人の理想になっていた。
「はあっ」
ここで大きく息を吸い込んだ。
今の自分が余りに情けなくて鏡を見て笑った。
鏡の中の自分はやけに落ち込んだ顔をしていた。
「おはよー...」
少し声を出しクラスの数少ない友達の1人に声をかける
「おはよ、どしたー!」
にやっと犬歯をだして笑いながら脇腹をつついてくる茶髪は犬養里央、学校や教師間では厄介な奴として認定されているが少し馬鹿なだけでいい所が沢山あるんだ。優しいし...ちょっやめろっ脇腹つっつきすぎんなっくすぐったいからっ
「愛良は面白い反応を毎回してくれるからやりがいがあるなあ!!!」
僕が笑い転げていると里央がにっしっしと笑う。
「だから...愛良って呼ぶな」
思いっきり不機嫌な顔を作って吐き捨てるように言葉を発する。
僕は自分の名前が好きではない。
美園愛良
傍から見れば女の名前。
不機嫌を全面に出したからか少し申し訳なさそうにしている里央が
「これあげるから許せよ...」
そう言っていちごミルクを差し出してきた。
...ふんっまあっ?許してやらないこともないかなって!!!
「顔が緩んでるぞ美園」
嫌味ったらしく里央が笑う。
「そんで、どうしたんだ、急に休止なんて、【まめまるくん】?」
犬歯の覗く笑った口とは裏腹にやけに真剣味を帯びた真っ黒な目が僕の事を見ていた。