ギルドマスターを襲う聖騎士団の男⑦
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
トトリ(19)
おっとりとした見た目の美しいお姉さん。長い黒髪を肩から前に流している。その可憐な姿はハポンナデシコ。
元暗殺者。
そしてきょぬー。
ティーヴァ(32)
元聖騎士団員。
くすんだ金髪に鋭い茶色の目。
その戦闘力は並外れており、明確な序列はないが聖騎士団の中でも三本の指に入っていた実力者。
「イーヴルアーク、どうして攻撃してこない」
「そういうお前こそ、本気を出していないだろう」
本気のティーヴァのチャージはあんなものではない。
戦場で使えば一直線に軍を割る事ができるほどのものだ。
武勇においては聖騎士団でもトップクラスだった。
聖騎士団団長とだって互角に渡り合えるほどだ。
「それに、今の俺は『イバラーク』だ。ただの農業ギルドのギルドマスターであって、騎士でもなければ戦士でもない。あと虫でも変態でもない!」
最後のは魂の叫びである。
この場にいる女性二人の心に響いて欲しいのだが、効果はあったのだろうか?
「俺が・・・本気を出せば満足か? イーヴルアーク!」
ティーヴァの姿が掻き消える。
ほぼ同時にイバラークの姿も残像を残して消えた。
ただ、イバラークとティーヴァがいた辺りで暴風が荒れ狂う。
二人の間で激しい攻防が繰り広げられている。
かろうじて視認できているのはトトリ。
さすがにホッカイはちゃんと見えているようだ。
アキータにはさっぱり見えていない。
「ホッカイ、どうなってるの?」
「・・・・・・ティーヴァが連続でチャージ攻撃を繰り出している。イバラークは全て避けている。あ、イバラークがくしゃみした」
砂埃を吸ってくしゃみが出たのだろうか。
とにかく、イバラークは反撃らしい反撃をしていないようだ。
避け続けていても、このままではいずれ捉まってしまう。
「助太刀した方がいいの?」
「・・・・・・できるとしたらホッカイさんだけです。私ではとても手が出せません」
トトリが冷静に分析する。
「そんなに強いの、あのティーヴァって」
「ホッカイさんと同等か下手したらそれ以上です」
トトリの言葉にホッカイが頷く。
ホッカイだって十分規格外なのだが、それ以上とは。
「・・・・・・かすった」
イバラークにティーヴァの一撃が入ったようだ。
このままでは本当にイバラークが殺されてしまうかもしれない。
アキータがため息をつく。
カバンから瓶入りの薬品を取り出す。
一つは黒に近い液体が入っている。
もう一つは緑っぽい色だ。
それをまとめて暴風の中心へ投げ込んだ。
ビンが割れて中身が地面にぶちまけられた瞬間、爆発を起こした。
しかし、まだ暴風は止まない。
「止まりませんねぇ。二人ともたいがいバケモノです」
「普通なら即死の薬なんだけど・・・」
「!?」
アキータの一言にホッカイが驚愕の目でアキータを見る。
死なない二人より、平気で死ぬ薬を投げるアキータに戦慄を覚える。
「・・・・・・やっと効いてきたみたいね」
「イバラークさん、毒薬効かなかったですからね。即死級の薬使わないと止まらないんですね。あっちのティーヴァさんもそうみたいですが」
既にティーヴァは気を失っている。
イバラークは動きが止まってこそいるが、普通に立っている。
「・・・・・・おい、悪魔娘。俺じゃなかったら死ぬぞこれ」
「むしろどうやったら死んでくれるのか知りたいわ」
アキータは呆れた顔でイバラークを見る。
本当に常識が通じない男である。
「いいから解毒薬をくれ」
「え、一人分しかないわよ?」
「・・・・・・悪意を感じるが、まあいい。そいつに使ってくれ」
さも当然という風にイバラークではなくティーヴァに解毒薬を使う。
確かに、イバラークには使わなくても大丈夫そうだが。
こうして一旦は戦闘が終了した。




