ギルドマスターを襲う聖騎士団の男⑥
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
トトリ(19)
おっとりとした見た目の美しいお姉さん。長い黒髪を肩から前に流している。その可憐な姿はハポンナデシコ。
元暗殺者。
そしてきょぬー。
ティーヴァ(32)
元聖騎士団員。
くすんだ金髪に鋭い茶色の目。
その戦闘力は並外れており、明確な序列はないが聖騎士団の中でも三本の指に入っていた実力者。
「ティーヴァ・・・・・・生きて・・・いたのか・・・!」
「イーヴルアーク・・・・・・どういうつもりだ!? なぜ祖国を・・・ムルを滅ぼしたっ!?」
ティーヴァはイバラークに剣を突きつける。
ティーヴァの着る金属プレート付きの白いローブは昨日と違って汚れが無く、本来の白い色を取り戻している。
ただし、まだ生乾きのようだが。
「!? ムルを俺が・・・・・・? いや、そうだな・・・・・・俺が滅ぼした」
「イーヴルアーク! 皆がお前を信頼していた! それを・・・それをぉおおお!」
ティーヴァが一瞬にして一歩踏み込むと、剣を横薙ぎにしてイバラークを襲う。
それをイバラークは上半身を後ろに反らして避け、そのままバク転して距離を取る。
二人とも一瞬の動きである。
怒りに身を任せて斬りつけたティーヴァも、一閃を避けたイバラークも動かない。
「・・・・・・何、あれ。昨日再開果たしたんじゃないの? なんで初対面みたいなやり取りしてるの?」
「さぁ・・・・・・? マスターの思考はたまによくわからないですよね」
コクリ。
近すぎず、遠すぎずの距離で見ているのはホッカイ、アキータ、トトリである。
ホッカイとアキータは襲撃があったあの後、王都で宿を取った。
エヒムも一緒だったが、エヒムはギルドで留守番をさせている。
戦闘になる可能性があるので、エヒムは連れてこなかった。
ギルドはエヒムとトトリの妹シマーネに任せてある。
一応はイバラークを心配してついてきたものの、いまいちシリアスになりきれていない。
「生憎、ここで死ぬわけにはいかんのでな。俺にはやらなければならない事がある」
「・・・・・・何がやらなければならない事だ! 貴様がやらなければならなかったのは、ムルを護る事で滅ぼす事じゃなかったっ!」
ティーヴァが一瞬の体重移動で鋭い突きを放つ。
身体ごとぶつかるようなその突きはガードできるようなものではない。
イバラークは大きく横に身体を投げ出してその突きを避ける。
一回転してその反動で立ち上がり、ティーヴァの次撃に備える。
ティーヴァの方も、避けられるや否や突きに制動をかけて左足を軸に身体を反転させてイバラークに対峙する。
「相変わらずの鋭いチャージだな」
「イバラーク、お前は弱くなった。お前は変わった。昔のお前はもっと・・・・・・髪が長かった!」
そこかよ。
イバラークを始め、農業ギルドのメンバー全員が思った。
「それに、お前はそんなふざけた男じゃなかった! 強大な力を持ちながら誰より鍛錬し、誰に対しても慈しみをもって接する慈愛と高潔さを持つ、誰もが認める騎士だった!」
ティーヴァが昂ぶった感情を吐き出す。
イバラークが複雑な思いを抱いていたように、ティーヴァもまた複雑な思いを抱いていたのだ。
信頼、憧憬、親愛、そして失望。
「・・・・・・え、自愛と不潔さを持つ誰もが認める虫だった? やっぱり人じゃなかったのね」
「ティーヴァさん、その方はイバラークであってイーヴルアークではありませんよ?」
コクリ。
「え、お前達なんか酷くない?」
イバラークは薄情なギルド員達を涙腺が緩みそうな目で見るのだった。




