ギルドマスターを襲う聖騎士団の男④
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
トトリ(19)
おっとりとした見た目の美しいお姉さん。長い黒髪を肩から前に流している。その可憐な姿はハポンナデシコ。
元暗殺者。
そしてきょぬー。
エヒム(10)
肩口まで伸ばした金髪に青い目。美少女と見まごうばかりの美少年。
農家の次男坊で年齢に似つかわしくない知性と農業スキルを持つ。
謎の闖入者は疾風の如く気を失っているイバラークとの距離を詰める。
腰に佩いた剣を一瞬で抜くと大きく振り上げた。
もちろん目標は床に転がるイバラークである。
男が動いてからわずか二秒の出来事だ。
殺気にまみれた剣がイバラークを襲う!
・・・・・・しかし。
いつの間にか振り下ろした腕をホッカイが受け止めていた。
見た目は王族のような高貴さを感じさせるほどの整った顔立ちで、とても戦いに長けているようには見えないが、男の一太刀を容易く受け止めるあたり只者ではない事が男にも理解できた。
そして、背後からは絶世の美女が謎の液体の入った小瓶を男の頭上に掲げていた。
小瓶の蓋は開いており、何が入っているかはわからないが、毒物なら喉もとに刃を突きつけられているのと同じ状況だろう。
「ちっ! なんだお前らは!?」
恨みのこもった目でホッカイをにらみつける。
が、かすかな違和感にも似た感覚に、長年の経験と勘が視線をある方向に導く。
振り向いた先にはおっとりした美人が薄く微笑んだまま受付カウンターに立っている。
こちらの視線に今気付いたかのように視線を合わせて彼女は小首をかしげて見せてくる。
まるで剣先を突きつけられている気分だ。
「ふふ、ここで狼藉を働こうなんて考えるのはやめたほうがいいですよ?」
なんなんだ、このギルドは?
男は混乱の極みだった。
「あなたがなぜマスターを襲うのかはわかりませんが」
「イーヴルアークって言ったわね。亡国ムルの聖騎士団副団長でしょ、その名前。ここに転がってる男はイバラーク。しがない変態よ」
「イバラーク、だと・・・・・・」
男が再び白目を剥いているイバラークを見下ろす。
男の心中は穏やかではない。
憎き仇敵を目の前にして何も手出しができない。
いまこの場で無理に襲い掛かっても奴をしとめる事は難しい。
少なくとも、三人を無傷のままにしとめるのは。
男は剣を鞘にしまい、きびすを返す。
「今日は引き下がる。そこの男に伝えてくれ。ティーヴァが東門で待っている、と」
ティーヴァと名乗った男は入る時に押しのけてしまったエヒムの頭にポンと手を置いて撫でる。
「嬢ちゃん、悪かったな。怪我、してないか?」
エヒムは黙って頷く。
エヒムにはティーヴァが悪人には見えなかった。
ティーヴァはエヒムが頷いたのを見て、ギルドを出て行った。
残された者達は少しの沈黙の後、口を開く。
「・・・・・・あれ? 別に助ける必要なかったんじゃないかしら」
「アキータさん!? 助けてなかったらイバラークさん死んでましたよ!?」
「え、それがどうかしたの、エヒム君」
素で言ってたら怖いなー、とエヒムは思った。
「あの方、相当な実力者でしたね。殺気を殺していたのに、感付かれました」
「・・・・・・抜剣からの一連の動作は訓練で洗練されたものだった。しかもまだ余力があった」
戦闘に特化したトトリとホッカイの意見である。
珍しくホッカイが口を開くほどなので、相当の腕前なのだろう。
ギルド内に再び沈黙が降りる。
彼らはイバラークが目を覚ますまで、帰ろうとはしなかった。




