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ギルドマスターにハポンナデシコと暗殺を

 遡る事数日前。


 農業ギルドのギルドマスターことイバラークは王都の中心街で不審者をしていた。


 道行く人が奇異の視線を送っているが意に介さず、色々なギルドや店を覗き込んでは舐めるような目で事務員を凝視していた。


 受付カウンターに居る事務員は女性が多い。


 男性では威圧感を与えてしまう恐れが有るので、そのポジションは女性には敵わない。


 で、その女性を舐め回すように見ているわけだ。


 犯罪者確定である。


 あまりにも堂々と行為に及んでいるので、逆に通報されることは無かったが、迷惑千万。


 変質者死ねばいいのに、と道行く人も被害者達も思った。


「くっ・・・・・・何故他のギルドや店はあんなに普通に事務員が居るんだよ。そりゃ農業ギルドは王都の中心部には無いが、一応ギルドだ。将来有望な就職先のはず・・・・・・なのに、何故・・・・・・」


 もう何日も勧誘しては断られていた。


 へい、彼女。事務しない?


 怪訝そうな顔をして去っていく者三割。


 不快な顔をして去っていく者三割。


 怯えて逃げていく者三割。


 攻撃してくる者一割。


 事務員になってくれる者、ゼロ。


「何故だ・・・・・・」


 イバラークにはさっぱり分からなかった。


 残念なことに・・・・・・。


 そうして、その日も何の収穫も無いまま日は暮れていったのである。


 イバラークは酒を嗜まない。


 しかし、このやるせなさをどこかにぶつけずにはいられなかったので、やけ食いをするべく飲食街へと向かった。


 飲食店の客引きが通りに出て、あの手この手で獲物を店に引きずり込んでいる。


 イバラークにも早速声がかかった。


「お兄さん、暇かしら。私と飲みません?」


 大きな胸を強調するかのように腕を組んで見上げてくる女性。


 少し潤んだ目は柔和な顔立ちにもかかわらず色気が有る。


 しかし、そこにいやらしさというものが無い。


 この女性に誘われた男は皆、ホイホイと付いて行ってしまうのだろう。


 巨体を持つイバラークにしてみれば、その女性はあまりに華奢で触れれば壊れてしまうんじゃないかと思わせるほどだった。


 イバラークは苦笑する。


「あ~、悪いが下戸なんだ」


「あら、そうでしたの。残念だわ。せっかく勇気を出して声をかけてみたのに・・・・・・」


 しゅんとする彼女に、イバラークは同情した。


 声をかけても上手くいかない自分に姿が重なったからかもしれない。


「ちょいと上手くいってなくてな。やけ食いしたい気分なんだが、飯は出るのかな?」


 彼女が意外そうな顔をした。


「ええ、まぁ、軽食程度で良ければ・・・・・・」


 彼女が声をかければ十中八九男は付いてくる。


 しかし、彼はそんな男達とは彼女を見る目が違った。


 まるで似つかない。


 いやらしさの欠片もない。


 面食らった彼女だったが、すぐにいつもの彼女に戻ると案内を始めた。


 細い路地を通り抜ける。


 こんな奥まった所に店が有るのだろうか。


 これでは確かに客引き案内しなければ客など取れないだろう。


 果たして案内された先には大きくも無ければ小さくも無い飲食店らしき店が有った。


 中にはまぁそれなりに客が入っているようで、空席は目立つが客が居ないというほどでもない。


「お客さんが入りましたわ。お酒は飲めないそうですので、お食事を」


 厨房の方へ声をかける。


 奥から無愛想な返事が聞こえてきたが、姿は出さなかった。


「どうぞ、こちらの席へ」


 空席に案内されたイバラーク。


 五分としない内に熱々の料理が出てきた。


 炒めた米と茹で豆、サラダが出てきた。


「随分早いな!」


 早いがこれくらいではやけ食いには物足りない。


 追加で注文しても良いものか。


 値段が分からないので少し不安になる。


 メニュー一覧を広げると、酒ばかりだ。


 値段は・・・・・・少し高めだがぼったくりではない。


 酒に合わせたおつまみがメインでがっつり食べられるものが無い。


 出てきた料理を片付けながら思案する。


 と、その様子を見ていたのか、客引きの女性が戻ってきた。


「その様子じゃやっぱり足りないですよね・・・・・・」


 きょろきょろと店内を見回すと不意にイバラークの耳元に顔を寄せる。


「付いてきて下さい。まかない程度で良ければもっと違うの出しますから。ただ、こんなサービスしてないので、店の奥で」


 そう言ってイバラークを店の奥へと誘う。


 意外にも奥は広くなっているのか、店部分の奥には廊下があり、その先にいくつか扉が有った。


 その内の一つに通された。


 薄暗い部屋にベッドが一台。


 ・・・・・・おぅふ。


 これはアレか。


 アレなのか。


「ここで食べるの・・・・・・?」


「そうですね、食べるといえば食べるのですけど」


 扉に鍵がかけられる。


 薄暗い部屋に男と女とベッド。


 そう、ここで行われるのは。


「後ろを向いていて下さる?」


 何かをほどくような音。


 何かが床に落ちる。


 むき出しの何かがイバラークにぶつかってくる。


 それをイバラークは。


 避ける。


「殺す気か!?」


 暗殺。


 客引きの女の手には鞘から抜かれたナイフ。


 薄暗い中でもナイフはギラリと妖しい光を放っていた。

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