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うかつな事を言ったギルドマスターのせいで別れが来た

イバラーク(32)

農業ギルドのギルドマスター。

赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。

農業以外は何でも器用にこなす。


シニオレ(約800)

旅の途中のドラゴン。

休憩と称してエヒムの土地でごろごろしている。

博識。

 ドラゴンのシニオレはいつもの池のほとりでだらだらしていた。


 小さいながらに重たい水をせっせと運ぶエヒムを見てほっこりした気分になる。


 大きなあくびを一つ。


『うむ、平和だ』


「平和だ、じゃないだろう。お前どこかに行く途中だったんだろう? いいのか、いつまでもここにいて」


『小僧とは時間の感覚が違う。こんなものたいした時間に入らん』


 人間にしては身体の大きいイバラーク。


 とはいえ、ドラゴンを前にしたら小動物のようなものである。


『だがまぁ、頃合かもしれんな』


「・・・・・・なんだ、本当に行っちまうのか?」


 空を眺めてシニオレがつぶやくと、イバラークが意外そうな顔をした。


 いつもの軽口のつもりが思わぬ方向に行った。


『小僧が言い始めた事だろう』


「あぁ、まぁそうなんだが・・・・・・」


 なんならジャマくさいな、くらい思っていたが、近頃ではいる事に慣れすぎていた。


 これからもずっといるような気がしていたのに。


 イバラークにしてみれば貴重な目上の存在だ。


 自分が庇護する必要のない相手はイバラークにしてみれば一緒にいて楽なのである。


「もともと休憩のために寄っただけだからな。旅立つのが本来の予定だ・・・・・・引き止めんよ」


 イバラークが寂しそうな笑顔をシニオレに向ける。


 なかなかに珍しい顔だ。


『小僧・・・・・・』


 シニオレもつられてしんみりした気分になってしまう。


 ここで人間達と生活をして人間の情というものがシニオレにも移ってしまったようだ。


「シニオレにはいろいろと世話になっ・・・・・・てないな。世話はしたけど」


『小僧!? 道を作ってやったり・・・・・・道を作ったり・・・・・・いろいろしただろう』


「おま、あれ下手したら俺ら全員死んでただろうが!? しかもそれしかしてないし!」


 シニオレの食料を調達する代わりに山脈にトンネルを開けるはずだった件である。


 手違いで山脈の一部を消し飛ばした。


 ブレスの最中にくしゃみをするという大失態で下手すればイバラークやギルド員たちを巻き込んで消し炭に変えるところだった。


「まぁ、それは置いといて。寂しくなるな・・・・・・ウロコ、全部置いてけよ」


『さらりと追いはぎ宣言するな!?』


 良くも悪くも、ドラゴンにこんな事を言う人間は世界中探してもイバラークだけだろう。


 普通、ドラゴンにこんな事を言ったら一瞬で消し炭になるかひき肉になっている。


 イバラークとシニオレだから成り立つ会話だ。


 シニオレもだいぶ人間に感化されているようだ。


 初めて出会った頃はこんな感じではなかった。


 人間などただの小動物だった。


 それが今は対等に接し、愛おしいとさえ思える。


 それはシニオレだけではない。


 イバラークを始め、農業ギルドのギルド員たちもそうである。


 エヒムなんてあんなに怖がっていたのに、今ではしょっちゅうシニオレの話し相手になっていた。


『エヒム坊が嫁に行ったら我は泣く』


 シニオレがこの間そう言っていた。


 それくらいエヒムとは付き合いが深い。


「もう少しくらいはいるんだろ? ギルドの連中呼んでくるからさ」


 寂しそうに微笑んでイバラークはそう言った。

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