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ギルドマスターの怪力を見せ付けよう

イバラーク(32)

農業ギルドのギルドマスター。

赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。

農業以外は何でも器用にこなす。


シマーネ(14)

トトリの妹。

姉とは対照的に活発な少女。

齢十四にしてすでに巨乳の片鱗を見せている。

 シマーネはトトリの妹である。


 幼い頃に父親が女を作って出ていった。


 子ども達を養う為に身を粉にしていた母は病気になり、姉のトトリが家計を支えていた。


 出ていった父、病気の母に代わり、幼い妹と弟の面倒を見たのがシマーネである。


 おっとりした姉に対し、シマーネは元気いっぱいの活発な少女だ。


 己の不幸など微塵も感じさせない性格は、周囲を明るくしてくれる。


 顔かたちはトトリにそっくりなのだが、性格の違いから印象がまるで違っている。


 黒髪をショートカットにしているので、活発な印象がさらに強まっている気がする。


 年齢はまだ十四だが、トトリと同じ血を引いているのがよくわかる胸をしている。


 母親がアキータの薬で元気になったので、妹や弟の面倒を見なくて済むようになった。


 イバラークのはからいもあり、いまは農業ギルドの事務員として働いている。


 そして、今日はギルドの消耗品の買い出しに出ていた。


「これで全部揃ったな。けっこう時間かかっちゃった」


 シマーネの両手にはパンパンになった布袋が下がっている。


 その細腕には文字通り、いささか荷が重いように思われる。


「うぅ、重い・・・・・・」


「お嬢ちゃん、重そうだね! 俺が持ってあげるよ!」


 軽薄そうな男が声をかけてくる。


 年の頃は二十歳に届くか届かないかくらいか。


 くすんだ金髪でにやけ顔の男。


 これがトトリなら軽くあしらうのだが、シマーネにそれはまだできない。


「いや! いいです! えっと、あの・・・・・・軽いので!」


「そんな見栄張らなくていいんだよ~。これでも俺、力持ちよ?」


 鼻息荒く男は詰め寄ってくる。


 生理的嫌悪を抱く顔だ。


 反射的にシマーネは顔を背ける。


「ほう、ではこれを運んでもらおうか」


「へ? うぎゃ!?」


 背後から声をかけられたかと思った次の瞬間、男の腕に想定外の負荷がかかる。


 驚いて腕を見るとよくわからない金属の塊を腕に装着させられていた。


 巨大な金属の板を折り曲げて挟んだ形だ。


「痛゛い痛゛い痛゛いぃ~!? 腕が! 肩が! ちぎれるぅ~!」


「ん、なんだ? 変な宗教にでもはまっているのか? そんな『偉大偉大』と連呼して。腕と肩が契るっていくらなんでもどん引きなプレイなんだが・・・・・・」


 泣き叫ぶ男はわけのわからない事を言ってくる奴を見上げる。


 赤みがかった短髪の巨漢だった。


 男はまさかこの巨漢が農業ギルドのギルドマスターとは夢にも思わないだろう。


「え、マスターさん、何でここに!?」


 シマーネが驚きの声を上げる。


 それにイバラークは片手を上げて軽く挨拶する。


「いや、センディの野郎が少しは金返せってうるさいから、とりあえず現物で返そうかと思って」


 イバラークは視線を男の腕に付けられた金属塊に向ける。


 実はこれ、先日タスマーニャ村を襲った盗賊団から押収した武器の金属を溶かして固めたものである。


 タスマーニャ村の代表が、村を救ってもらうという事後依頼と報酬金を出すために来たのだが、現金が少ないため、せめてという事で盗賊達の武器もギルドへの報酬として持ってきたのだ。


 それを預かったイバラークは鍛冶屋で炉を借りて、溶かして金属の塊を作っていた。


 中古の有象無象の武具防具よりは、金属素材としての方が価値がある。


 コストを抑えるために自分で溶かし、さらに輸送していたのだ。


 にやけ顔だった男は焦った顔で金属を腕から外そうと四苦八苦している。


「なんだ、運んでくれないのか?」


「運べるか!? いいから外せよこれ!」


 イバラークは金属塊を腕から外してやる。


 金属板を飴細工のように容易く広げて見せる。


 シマーネに声をかけた男はそれを見て一目散に逃げていった。


「軟弱な男だ。どれ、シマーネ。ついでだから荷物持つぞ」


金属塊を片手に、買い物を済ませた布袋をもう一方の手に持ち、イバラークは容易く農業ギルドまで荷物を運ぶのだった。

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