ギルドマスターとムツジロウ王国
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
オサカ(14)
頭に大砲、もとい巨大なリーゼントを装備している。くすんだ灰色の髪と短い眉の心優しき不良。
あまり頭は良くないようだ。
「ええと。確認するけど、それは何かな?」
「ぁあ!? 鳥」
「それは?」
「ぁあ!? 豚」
「じゃあこっちは?」
「ぁあん!? 牛」
「これ・・・・・・」
「山羊だ、ごるぁあ!?」
農業ギルドのギルドマスター、イバラークはギルド員のオサカの土地を視察に来たのだが。
動物というか、モンスターがワラワラいた。
マクマクが5羽。
ラージボアが2頭。
ポイズンホーンが6頭。
バフォメットが1体。
マクマクといえば、先日採集に行ったララミシアの森に生息していた鳥型モンスターだ。
ラージボアも各地で見られる猪型モンスターである。
その突進力はバカにならない。
荷がぎっしりと積まれた馬車を容易く吹き飛ばす。
ポイズンホーンはハーポーン王都からだいぶ南の方にある沼地に生息している牛型のモンスター。
その鋭利な角には毒があり、ちゃんと解毒しないと三日もあれば死に至る。
何よりバフォメット。
モンスターというか悪魔族。
ヤギなのは頭部だけで首から下は人型である。
基本魔界に住んでいるので何者かに召喚されなければこちらの世界には存在しない。
「オサカ、お前さ・・・・・・いくらなんでもバフォメットを山羊とか」
無理があると思う。
こんなものが王都で見つかったら大騒ぎだ。
すぐに討伐隊が編成されるだろう。
「もう一つ聞くけど、こいつらなんでここにいるの?」
「捨てられていたから拾った」
「返してきなさい」
「ぁあ゛ん!? 何でだ!?」
「そもそもモンスターなんだから捨てられてるとかあるわけないだろうが!? 犬や猫じゃあるまいし!」
捨て犬や捨て猫を拾ってくるのとはわけが違う。
人に危害を加えるから『モンスター』として認定されているのだ。
そこへバフォメットが、まぁまぁといった感じにイバラークとオサカの間に割って入る。
「お前は魔界に帰れ」
にべもないイバラークの言葉に、ヒドイっとばかりに山羊顔を悲痛に歪ませる。
ええい、しなを作るな。
山羊顔でされてもキモイだけだ。
「べつにこいつらは悪さをしてねぇぞ、ごるあ!?」
オサカの足元にはいつぞやのパニックフォックスがまとわりついている。
うん、そいつはいたずらしてきたよね。
オサカはひょいとパニックフォックスを抱え上げて顔の目の前に持ってくる。
赤らめて恍惚の顔。
「おい、近い」
パニックフォックスと口づけするのかと思ってしまった。
パニックフォックスなら絵的にまだほんわかするが、ラージボアやポイズンホーン、ましてやバフォメット相手にこんな事をしていたらと思うと鳥肌が立ってしまう。
これではあの超有名なフィクション大作『ムツジロウ王国』になってしまう。
人もモンスターも動物もわけ隔てなく暮らすユートピア。
「・・・・・・ま、害がなきゃいいか」
オサカの土地で悠々と過ごすモンスター達の姿を見て、イバラークはひとりごちた。




