ギルドマスターも知らないホッカイの過去⑭
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
一緒にラリィアもその場を辞し、村長だけが残る。
「では、私もこの辺で・・・・・・」
村長も宿を出ようとしたところをイバラークが止める。
「村長」
イバラークは村長の手に金貨の詰まった袋を押し付ける。
あまりの重さによろけた村長が中身を確認して焦りだす。
「これは一体・・・・・・!?」
「こいつはれっきとした依頼だ。俺から村への依頼という形でだ。依頼内容は『鍬の修理』。村民の誰にやらせてもあんたの自由だが、ちゃんと村民に還元してくれよ」
「? ? ?」
「盗賊に荒らされた家や畑の補償、夫を亡くした家族への補助。少なくともこれはやってくれよ」
確かにこれだけあれば当面生活に困る事はないだろう。
だが、本来お礼としてお金を渡すのは助けてもらった村の方である。
「特に最高級のコクティーノを提供してくれたラリィアの事、よろしく頼むな」
「それなら直接ラリィアに・・・・・・」
「彼女なりのけりの付け方に値段付けられるかよ」
村長はハッとする。
目の前の男はラリィアとひいては村のために全て動いてくれた事に気付く。
亡くなった夫との決別。
前を向いて生きていこうとする彼女の決意を、彼は台無しにしたくなかったのだ。
彼女の中で生きている夫の価値はお金に変えられるものではない。
もっともっと、価値のある何かだ。
対価にお金を渡すなんてのは無粋でしかない。
また、本人にはわからぬように村からの援助という形で彼女への対価を支払うという事。
あくまでもお金を支払った先は村に対してである。
その村のお金を村のためにどう使おうと、村長の勝手である。
建物や畑、中には商売道具を失った者もいるだろう。
それらを補償して余りある金額。
さらに、家計を支える夫を失った家族。
村という小さなコミュニティである。
何かあれば助け合うのが当たり前の風土。
もとから夫を失った家庭は村で支援していくつもりだったが、このお金があれば村の負担もかなり軽減する。
そもそもが、お礼のお金を渡そうとした時だってそうだ。
ギルドへの依頼という形にとの事だったが、村からかき集めたお金自体はあそこで受け取っても問題はなかったはずなのだ。
わざわざ後から依頼と一緒にお金を払わせるのは、荒らされた村の復興にお金がかかるのを見越して、報酬金の支払いを先延ばしにしようとしていたのだろう。
村長は熱くなった目頭を袖で押さえる。
「・・・・・・必ず。彼女達の事はお任せ下さい。私の命の限り、彼女達とこの村を守ります」
「おう」
イバラークは村長が自分の意図に気付いた事をあえて見なかった事にする。
ホッカイは泣き出した村長を見てオロオロし、アキータは茶番でも見たかのようにイバラークをジト目で見ていた。
こうして今回の一連の騒動は終結を迎えた。
この翌日には柄をコクティーノ材に換えた鍬がホッカイのもとに届き、その使い心地を通りで試したところ、村の出入り口まで一撃で耕してしまい道が畑に変わってしまうというハプニングがあった。
盗賊を撃退している時のホッカイの姿を見ていなかったウーズが腰を抜かしたのは仕方がない事だと思う。
イバラーク達三人が王都へ帰る時にはちょうど王都の警備隊が到着しており、盗賊団の護送が始まっていた。
そんな中三人は村人総出で見送られて村を出た。
ちなみに帰りも走りだった。
皆さんこんばんわ。
いつも読んでくださってありがとうございます。
やっと大きな話が一つまとまりました。
本当なら十話くらいでまとまると思っていたのですが、ここまで長くなってしまいました。
疲れちゃいましたかね?
また少し短いのを挟んで長いのをやるつもりです。
お付き合い下さい。




