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ギルドマスターも知らないホッカイの過去⑫

イバラーク(32)

農業ギルドのギルドマスター。

赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。

農業以外は何でも器用にこなす。


ホッカイ(19)

輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。

農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。


アキータ(17)

紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。

天才薬士として有名。

地獄の底からやってきたイバラークの天敵。

 朝食ができたと宿の主人に呼ばれたので、イバラーク達は食堂に集まった。


 一階にある食堂には見覚えのある女性が座っていた。


「あんたは・・・・・・」


 女性は立ち上がると深々とお辞儀をしてこちらを見ている。


 イバラーク達に用があるという事だろう。


 ホッカイはすこし気まずそうにしている。


 イバラークは構わず女性のいる席に腰を下ろす。


 ホッカイとアキータもそれにならって同じテーブルにつく。


 女性は再度深々と頭を垂れた。


「この度はこの村を救っていただいて本当にありがとうございました。改めてお礼をさせていただきます」


「まま、座ってくださいよ」


 イバラークは彼女に座ってもらうように促す。


 女性はおずおずと席に座って話を続ける。


 その姿は昨日とはうって変わって穏やかだ。


 さすがに怒りや悲しみを乗り越えたわけではない。


 それでもやっと冷静になれたのだろう。


 悲しみを含んだ微笑を浮かべている。


「私はラリィア。生まれも育ちもこの村で、同じく主人もこの村で生まれ育ちました。この村の男ですから、当然のように木材を扱う職人になりました。普通に暮らして、普通に恋に落ちて、普通に暮らして。刺激は少ないけれど幸せでした」


「奥さん、子供は?」


 奥さんは首を横に振る。


「結婚して十年近くになりますけど、子宝には恵まれなくて。主人は子供だけが全てじゃないと言ってくれましたが、やっぱり子供は欲しかったんですけどね」


 ラリィアは懐かしむようにくすり、と笑う。


 アキータが少しだけ眉根にしわを寄せたが、何事もなかったかのように振舞う。


 同じ女として感じるものがあったのだろう。


「そのぶん主人は仕事に真面目に打ち込んで、この村でも一、二を争う職人になりました。村一番の職人の妻にしてやるからな、って。本当に頑張ってました」


 誰にともなく話していたが、ラリィアは不意にホッカイを真っ直ぐに見た。


「ホッカイさん、ありがとうございました。主人は常々、私の事を必ず守るって言ってくれていたんです。私があそこで手を汚していたら、きっとその罪を一生抱えていく事になったでしょう。きっと主人はそんな私を見たら、守れなかったと嘆いたんじゃないかって。そう思うんです。変な話ですけど、ホッカイさんが私を止めてくれたのは、主人が私を守りたくてホッカイさんをこの村に呼んだんじゃないかななんて」


 ラリィアが照れくさそうに笑った。


 本当に旦那さんの事が好きだったのだろう。


 その場にいなくてもそこまで信じられるというのは、愛なんだろう。


「ふふ、変な事を言ってごめんなさいね。で、その自慢の主人の加工したコクティーノ材、ホッカイさんに使っていただこうと思いまして。品質は保証しますよ」


 ラリィアはテーブルに立てかけていた布袋から角材を取り出した。

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