ギルドマスターも知らないホッカイの過去⑪
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
タスマーニャ村は平穏を取り戻した。
イバラークとホッカイの活躍により、盗賊団は全員捕縛。
女子供は全員無事に帰ってきた。
しかし、抵抗した村の男達のうちの数人は残念ながら帰らぬ人となってしまった。
死者数は六名。
いずれもタスマーニャ村の男達だ。
重傷を負った村人はあとから追いついたアキータが調合した薬で事なきを得ている。
盗賊団は五十名を超えているが、全員生け捕りだった。
村の入り口に縛られて転がされている。
そこに憎悪の目で盗賊達を見つめる女性達。
手には棒を持っている。
いずれも夫を殺された女性達だ。
「なんで旦那が死んでお前らが生きてる!? 死ぬのはお前達だ! なんで! なんで!」
女性は手に持った棒を振り上げる。
そして振り下ろされた腕。
しかし、その棒が盗賊を打つ事はなかった。
優しくその腕を受け止めたのはホッカイだった。
ホッカイは首を横に振る。
「なんで止めるの!? 止めないで! こいつらのせいで旦那は・・・・・・!」
それでもホッカイは首を横に振る。
激昂する彼女と同じくらいの悲哀の目でホッカイは彼女を見た。
助けられなかった命。
自分が全てを背負えるなんて事は考えていない。
頭でわかっていても心は悲鳴を上げている。
もっと自分が早く村に着いていたら。
迷わずに戦っていたら。
そんな『もしも』が頭の中をぐるぐると回る。
それでもこれだけは言える。
「・・・・・・死んだ旦那は、妻の手を赤く染める為に戦ったんじゃない」
「あんたに何がわかる!?」
「あんたの旦那の事はわからない。でも、『守る為に戦う男』の事は知っている」
女性は手から棒を落とす。
周りの女性達も手から棒がこぼれ落ち、泣き崩れた。
イバラークはホッカイの肩をぽん、と叩く。
それでいい、と。
ホッカイは泣きそうな顔で頷く。
「イバラーク、ホッカイ、こっちは治療終わったよ。あとはツバ付けとけば直るような怪我人だけね」
アキータにもかなり働いてもらった。
アキータが村に着く頃にはほぼ盗賊団の制圧が終わっていたので、重傷者を優先に治療に当たってもらった。
常備しているストックでは薬が足りなかったので、急遽ありあわせの薬草で薬を調合して間に合わせた。
ありあわせでこれだけの効能の薬を短時間で作り出すアキータは、やはり天才なのだろう。
アキータがいなかったら死者数は両手の指では足りなかったはずだ。
その後、イバラーク達は村長のはからいで無料で宿に泊まる事になった。
盗賊団は村の男達が持ち回りで見張る事になっているらしい。
王都の警備隊を呼びに行っているが、来るまでに時間がかかる。
警備隊ならば早馬で来るだろうから、イバラーク達よりは早くにここにたどり着けるだろう。
やがて夕食時、宿の食堂で食事をしていると村長がイバラーク達を訪ねてきた。
改めて礼をしに来たという。
「あ~、俺らは王都の農業ギルドの者でね。農業ギルドを通してもらえると助かるんだが。つまり、事後にはなるが、緊急依頼という事で手続き自体はあとからでも問題ない。正式に農業ギルドへ依頼という事で事務処理をして欲しい」
個人の功績ではなく、農業ギルドの功績という事だ。
本来なら盗賊退治なんて警備隊かせいぜい戦士ギルドに頼むものであって、決して農業ギルドに頼む内容ではないが。
それでも恩人の言葉なので村長は頷いた。
「で、村長。本題なんだが、俺らがここに来た目的が鍬の修理なんだ。ここならコクティーノ材を扱う職人がいるだろ」
「ええ。確かに取り扱っています。しかしコクティーノを鍬に、ですか?」
「ああ。こいつの鍬なんだが。こいつ自身の性能に鍬がついていけなくてな」
「はぁ・・・・・・?」
村長は何を言われているのか良くわからないという顔をしているが、それが望みならば用意するまでだ。
「わかりました。ご用意させていただきます。修理が済むまではこの宿をお使い下さい。明日、職人を向かわせます」
村長は深々と頭を下げてその場を辞した。
その夜、ホッカイはなかなか寝付けず浅い眠りのまま朝を迎えた。
いつも読んでくださる皆さん、本当にありがとうございます。
実はホームページを作ろうかなと思っていまして。
計画を立てています。
出来上がったらまたご報告します!




