ギルドマスターも知らないホッカイの過去⑧
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
ターイピー村を経由し、次はコールカート村に宿泊。
コールカート村を朝早くに出立した。
ついに次は目的のタスマーニャ村である。
この分なら日が傾く前にたどり着けるだろう。
これでホッカイの鍬も一安心。
イバラークはアキータとホッカイに告げる。
「あと少しでタスマーニャ村だ。楽しいピクニックも折り返し地点かと思うと感慨深いな」
しみじみしながら、うんうんと頷いている。
ホッカイは反応に困っている。
アキータは鬼の形相で先行するイバラークをにらみつけている。
本来なら文句の一つも言いたいが、現状でそんな事はできない。
そんな事をしようもんなら舌を噛んでしまう。
体力的にも大声を出せる状態じゃない。
アキータにとっては全力に近い速さで走っている。
薬で体力をブーストしていなければとてもこのペースで走り続ける事などできない。
薬で体力強化してもきついくらいなのに、イバラークは平気でピクニックだなどと言うので恨めしい事この上ない。
薬で体力を強化してはいないが、ホッカイですらピクニックだとは思える行程ではない。
アキータは声に出せないものの、心の中でド変態め、と悪態をついておく。
「ぶぇっくしょい、ちくしょうめ! 誰か俺の噂でもしてるのか?」
椅子に座ってくつろいでいるくらいの感覚でイバラークは走るししゃべる。
おかげで完全にイバラークが独り言をしているような状態である。
「お、珍しいな。グリフォンのつがいが飛んでいったぞ」
「おい、あれ、ヤツトゲトカゲがあの木にうじゃこらしてるな。葉に擬態してる」
「もう少し南に行くと川があってそこで釣れるカワドクウオが絶品でな。すごく美味いんだが毒があるから食べると死ぬ」
「あれ、ギルド出る時ちゃんと鍵閉めたかな? あ、鍵はトトリが持ってた」
「コア・コンピタンスが大事なんだ。マーケティング・ミックスを展開する事でブランドエクイティを高めて競合他社との差別を図り・・・・・・」
いくら薬を使っているからといって、三日目ともなると疲労が溜まる。
アキータは弱音を吐くのが嫌いなので、ここまで何も言わなかったが、いい加減そろそろ休憩を入れたいところだ。
「ほら、見えてきたぞ。ん? 様子がおかしいな。止まれ」
イバラークが止まると、後ろに続くホッカイとアキータも足を止める。
「はぁはぁ、何? 何なのよ」
荒い息を整えようとアキータは深呼吸をする。
ホッカイの方は多少息が上がっているものの、乱れてはいない。
止まっていると、村の方角から誰かが走ってきたのが見える。
しばらくすると向こうもこちらを見つけたのか、駆け寄ってきた。
こちらに向かいながら何かを叫んでいる。
「・・・・・・てくれ。助けてくれぇえええ!」
イバラークとホッカイが走る。
二人は『ピクニック用』の走りとは比べ物にならない速さで駆ける。
「どうしたの?」
まだ少し息が上がっているアキータがこちらに向かっていた男性に問う。
「盗賊だ! 村を襲いに来た!」
アキータは舌打ちする。
どこにでもこの手の者はいるものだ。
「女子共もさらうつもりなんだ! 助けを呼んできてくれないか!? 俺は戻って家族を助けないと・・・・・・!」
アキータは落ち着いた態度を崩さない。
「大丈夫よ。足手まといを増やすより、あの二人に任せておいた方が百倍安心だから」
皆さん、読んでくれてありがとうございます。
皆さんがいてくれるからこそ、こうして書き続けられるのです!
昨日の報告。
昨日のわたくしのエサ、紅茶3杯。
以上。




