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ギルドマスターも知らないホッカイの過去⑥

イバラーク(32)

農業ギルドのギルドマスター。

赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。

農業以外は何でも器用にこなす。


ホッカイ(19)

輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。

農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。


アキータ(17)

紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。

天才薬士として有名。

地獄の底からやってきたイバラークの天敵。

 イバラークにお金を借りにいった日、ホッカイとアキータは王都で宿を取った。


 タスマーニャ村に向かうには朝早くに出たほうがいいだろうという事だった。


 この中途半端な時間に出ると野宿する事になりそうだからだ。


 どっちにしろ一日では着かないのだがいくつかの宿を途中経由する。


 ちょっとした旅行だと思おう。


 ホッカイはちょっとそわそわしていたが。


 作物の水の心配をしているらしい。


 イバラークはトトリに言って、しばらくホッカイとアキータが留守になる事をエヒムに伝えるように指示した。


 これならエヒムがちゃんと代わりに水をやってくれるだろう。


 アキータの畑は、アキータの僕たちが管理しているのでアキータがいようがいまいが関係ない。


 そもそも普段からホッカイの家に入り浸っている。


 今更いなくても全然影響しない。


「そんなに心配そうな顔しなくても大丈夫。エヒム君が畑見ててくれるんだし」


 アキータはそう言ってホッカイをなだめて宿に泊まった。


 ちなみに宿で夕食をとったのだが、明らかにホッカイの畑で取れたと思われるトレンジのスープが出てきた。


 素材がいいのか味が良かった。


 そして早朝、農業ギルドに集合する。


「ん、なんだ、その鍬持っていくのか?」


 こくり。


 イバラークの視線の先にはホッカイの持つ鍬。


 荷物になるからギルドに置いていけばいいのにと思うが、元はホッカイの愛剣であった事を知っているので、無理にすすめる事はしない。


 ホッカイなら鍬の一本くらい持っていようが荷物のうちに入らないだろう。


 むしろ荷物になっているのは金貨袋のほうだ。


 金貨50枚も入っているととても重い。


 これはイバラークが持っている。


 一応はギルドのお金という事だからだ。


「さて、忘れ物はないな!?」


「忘れ物というか失くした物が・・・・・・」


「なんだ、アキータお前にしては珍しい」


「うちのギルドマスターの知性」


「をいっ!?」


「なくしたいものはうちのギルドマスターの存在」


「存在全否定!?」


「遊んでないで行くわよ」


「お前だよ!?」


 朝っぱらからイバラークはアキータにいじられている。


 ホッカイはといえば昨日の不安そうな面持ちはなく、新しい鍬ひいては愛しの作物達のために戦いに赴く戦士の顔をしていた。


 そういう顔をしていた方がもてそうだが、本人にそういう気持ちが無いのでアドバイスすらできない。


 彼に『その方がもてるよ』と言ったところで、首をかしげられて会話が終了することだろう。


 イバラークも女性関係の話は聞かないが、ただ単にもてないだけかもしれない。


 本人に言ったら絶対に否定するだろうが。


 とにかく今日のホッカイは、最近では珍しいくらい凛々しい顔で希望に膨らむ未来を見据えている。


「よし、じゃあ出発だ!」


 こうして農業ギルド一行は王都を出発した。

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