ギルドマスターも知らないホッカイの過去④
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
トトリ(19)
おっとりとした見た目の美しいお姉さん。長い黒髪を肩から前に流している。その可憐な姿はハポンナデシコ。
元暗殺者。
そしてきょぬー。
「どういう使い方をしたんだよ!?」
ホッカイが以前世話になった鍛冶師に鍬を見せた後の第一声である。
彼はハーポーンでも指折りの鍛冶師であり、腕は確か。
だというのにホッカイの鍬はすでに老朽化が始まっていた。
まだ使い始めて半年程度。
そんなすぐに磨耗するはずがないのだが。
「使い方は普通よ。でもその結果は普通じゃないわね」
「嬢ちゃん、前にもこの兄ちゃんと来てたな。わかるように説明してくれや」
壮年の鍛冶師はアキータを見ている。
以前にホッカイとアキータが来た時にも、ホッカイはしゃべらずアキータが話をした。
もしかしたらホッカイは声が出ないと思っているかもしれない。
「二人の人間が同じ大きさの石を同じ投げ方で投げても、片方が子どもで片方が大人なら飛ぶ距離は違うわ」
「力任せに扱ったって事じゃねぇのかい?」
「そんな単純なものじゃないわよ。ま、とにかくこの鍬を修理してちょうだい」
鍛冶師は釈然としないながらもため息を一つついて鍬を眺める。
明らかにこれは磨耗した跡である。
本来ならこうなるまでに何年もかかる。
鍬の刃を固定している部分が磨り減って隙間ができている。
「なぁ兄ちゃん、何ならタスマーニャ村で木材を調達してきたらどうだ? あそこで扱っているコクティーノ材なら強度は抜群だぞ。トレントから採れる木材に匹敵する。ま、そのぶん高価だがな」
アキータは自分のあごに指を当てる。
確かにコクティーノならば強度は申し分ない。
問題はタスマーニャ村は大災害跡地とは反対方向のハーポーンの外れの方に位置している事と、この鍛冶師が言うように高価だという事だ。
かといって、このまま同じ素材の鍬を使っていてはすぐダメになってしまう。
そのたびに修理に出していたら労力と時間、お金の無駄だ。
「コクティーノ材を使うんなら、今回は応急処置だけにしといてやるぞ」
応急処置なら普通に修理するよりずっとお金はかからない。
ここは応急処置だけしておいてコクティーノを手に入れる方向で動く方がベストか。
「ホッカイ、どうするの?」
こくり。
「そうね。そっちの方が後々いいわね。おじさん、応急処置だけにしといて」
お金の方はあてがないわけではない。
残る問題はタスマーニャ村まで行く手間だけだ。
往復で一週間もあれば余裕で帰ってこれる。
馬車で行けばもっと早いが、そこはホッカイと相談だろう。
鍛冶師は隙間に三角柱の木材を打ち込み、簡易に固定する。
「通常ならこれでもしばらくは使えるんだけどな。兄ちゃんが使ったら一月もせずに壊れるだろうな」
「十分よ。ありがとう」
ホッカイは鍛冶師に支払いを済ませる。
さて、ホッカイの用事は済んだ。
本当ならばこの後買い物をしてギルドに顔を出す予定だったが、買い物はキャンセルだ。
とりあえずギルドに顔を出そう。
ギルドは今いる中心街よりずっと東、王都の外れにある。
生ものを買う予定だった都合上、ギルドに寄るのは最後にしていた。
来た道を戻るようにしてギルドへ向かう。
まだ昼前で通りには活気がある。
通り過ぎる馬車に呼び込みの声。
それも中心部を外れてくると人の通りはあるが、中心街に比べるとやはり寂しいものになる。
そして、まだまだ新しいと思わせる農業ギルドの看板が見える。
飾り気のないシンプルな看板だ。
アキータは農業ギルドの入り口に立ち、おもむろに回し蹴り。
開いた扉の奥からは笑顔を崩さないトトリと明らかに不機嫌そうなイバラークが見えた。
みなさん、いつも読んでくださってありがとうございます。
やっと我等がギルドマスターの出番となりました。
なったのかな?
次回以降活躍するのかな・・・・・・?
次回から『ミラクルマジ狩るエヒムきゅん』が始まったりしないよね?




