ホッカイがいい子過ぎて、ギルドマスター困っちゃう
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
ホッカイ(19)
輝くような銀髪に青い目を持つハーポーンの英雄。
農業初心者だが、農業が好きすぎて農業をしているとしょっちゅうデフォルメされた二頭身の姿になっている。
シニオレ(約800)
旅の途中のドラゴン。
休憩と称してエヒムの土地でごろごろしている。
博識。
前に来た時もそうだったが、相変わらずホッカイの土地では異常な具合に作物が育つ。
通常サイズの十倍以上あるような大きさのトレンジや、トレッド。
巨大なくらいならまだいいが、あんなに自由に動く植物ってどうなんだろう。
いや、そりゃトレントやアルラウネといった植物系のモンスターがいるんだから動いちゃダメとかは言わないが、あいつらは種族的にそういう種族であって、動けるようにできている。
でも、ホッカイの土地で育っているのは『本来』普通の作物である。
動かないし、巨大な実を付ける事もない。
ここは忌避される土地ではあるが、呪われているわけではない。
なぜこんな事になるのかはイバラークもエヒムも、生産者であるホッカイも知らない。
ホッカイ自身は特に変わった事はしていないと言う。
鍬の一振りで彼方まで耕しておいてそんな事を言うのもなんだが。
とにかく、ホッカイの土地では豊作も豊作。
全てを市場に流したら値崩れを起こして市場が混乱するんじゃないかというレベルだ。
つまり、ドラゴンの腹を満たすくらいにホッカイの土地には食料がある。
腹ペコドラゴンのシニオレに食べさせる食料をホッカイから譲り受けるのがイバラークの考えだ。
もちろん、ギルドからの依頼という事で、ちゃんと報酬も出すつもりだ。
一度食べればしばらく食べなくて済むドラゴンは、その代わり一度に大量の食料を食べる。
これなら市場に混乱をきたすような供給をしなくて済むし、シニオレに頼んだ事もやってもらえる。
一石二鳥だ。
「相変わらずすごい畑だな」
水やり中のホッカイにイバラークは声をかける。
しゃべらないが満面の笑みを浮かべる二頭身ホッカイ。
そのホクホク顔をイバラークとシニオレに向ける。
相変わらず農業をしている時はこの姿だ。
剣を腰に佩いてギルドを尋ねてきた時の姿とは似ても似つかない。
キリッとしている時のホッカイはどこぞの王族かと思うほど端正な顔立ちで、隙のない格好良さがあるのに、農業をしている時の彼はおもちゃに夢中になる子どものようで可愛らしい。
ホッカイはめったにしゃべらないので、イバラークは勝手に話を続ける。
「ホッカイに仕事の依頼だ。お前んとこの作物をギルドで買い取りたい」
ホッカイはコクリと頷き即答する。
まだいくらで、とかどれくらいの量を、というのを聞いていないのに即答している。
イバラークの言葉だから無茶な事を要求したり、不当な扱いをする事はないとわかっているというのもあるが、基本お人好しなので頼まれ事を断る事があまりない。
「シニオレが腹減ったんだと。ギルドへの依頼という形で請けたから、こいつが食べた分をギルドから報酬を出すよ」
ホッカイはイバラークとシニオレを交互に見ると、イバラークに首を横に振って見せる。
そしてシニオレを見て畑を指差す。
どうやらこう言いたいようだ。
金はいいから、腹が減ったなら食べていい。
本当に人が良いのだが、それでは世の中生きてはいけない。
他に示しも付かないので却下だ。
「ダ~メ。ちゃんと報酬は払う。その代わりにシニオレにはやってもらいたい事があるからな」
ホッカイがしゅんとする。
そんな顔をしないで欲しい。
イバラークの良心が痛む。
『ふむ、馳走はまた今度の機会に頼もう。今回は我も仕事だ。世界は均衡で成り立っている。我が働きはホッカイ、お前の働きで均衡を保つのだ』
ホッカイは良くわからない、という顔をしたがとりあえず了承したようだ。
こうしてシニオレの食事が始まった。




