ギルドマスターと腹ペコドラゴン
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
シニオレ(約800)
旅の途中のドラゴン。
休憩と称してエヒムの土地でごろごろしている。
博識。
事件はいつも唐突に起こるものである。
エヒムの土地でいつものんびり(良く言えば)しているドラゴンのシニオレが不穏な事を言い始めた。
『小僧、腹が減った』
小僧呼ばわりのイバラークは首をひねる。
「シニオレお前さ、こんな所でごろごろしてないで食事しに行ったらどうなんだよ」
いつもごろごろして怠けて(悪く言えば)いるシニオレにはっきりと言ってやる。
ドラゴンは体が大きい分一度の食事量は多いものの、一度食べればしばらく食べる必要はない。
古竜種にもなると数百年単位で食べない奴もいる。
なので人間の中には、竜は霞を食べて生きているだの、オラにみんなの力を分けてくれって言っているだのと勝手な解釈をしている者もいる。
竜の食事シーンなど見れる機会など滅多にない。
『・・・・・・小僧、我を何だと思っている』
頭に直接響くシニオレの声が一段低くなる。
『我は、極度の面倒くさがりだぞ!?』
そんな気はしていた。
日がな一日池のほとりでごろごろしているし、いつになっても旅立たないし。
害がないので放っておいているが、今日は少しウザい。
腹が減ったからなんだというのか。
「俺はお前のオカンじゃないぞ。腹減ったと言われて飯を出す道理はない」
『むぅ・・・・・・』
シニオレは爬虫類系の顔を器用にゆがめて黙り込む。
ドラゴンなら近くの森くらいすぐに移動できるだろうに。
極度のものぐさというのは本当なのかもしれない。
「そんな険しい顔するなよ。誰も飯をやらんとは言っていない。うちは農業ギルドなんでな。依頼をしてもらえればきっちり仕事するぞ?」
シニオレのわがままを依頼という形で受けるというのがイバラークの案だ。
悪くはない。
悪くはないが。
『対価は? お前達の言う金は持っておらんぞ』
ドラゴンがお金を持っているわけがない。
何をもって依頼達成時に対価を支払ってもらうのか。
「何、お前さんにかかれば楽な作業をしてもらおうと思ってね」
イバラークがニヤリと笑う。
シニオレは怪訝な顔をしたが、イバラークに対価を聞いて二つ返事で快諾した。
どうやら本当にシニオレにとっては楽な作業のようだ。
だが、肝心のシニオレの食事をどうするのか。
シニオレにとっては楽な対価ではあるが、イバラーク側からするとどうなのか。
接触があまりない種族なのでドラゴンの生態は謎が多い。
イバラークはと言うと。
「野菜は大丈夫か? 食えるんだろ?」
『無論。我ら竜種はたいていのものは消化できる』
ならば問題ない。
なぜならここは農業ギルド。
野菜なら売るほどある。
さぁ、目指すはホッカイの土地だ。




