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ギルドマスターが出す初仕事

「嫌よ!」


「まだ依頼内容言ってないだろうが!?」


 察しの良いアキータは、自分のところのギルドマスターがどんな依頼を出すかの見当が付いたのか、間髪入れずに拒否した。


 ・・・・・・うん、ギルドマスターの直々の仕事なんだから請けようよ。


 イバラークは一瞬心が折れそうになる。


「どうせ目印を作れとか、土地を区切っていけとか、胸を触らせろとか言うんでしょ!?」


「・・・・・・!?」


「我が子が殺人を犯す現場を見てしまった母親みたいな顔をするな、ホッカイ!?」


 イバラークは気が動転しているのか、気力を奪われそうになるような奇妙な踊りを踊っている。


「うわ・・・・・・キモい」


「誰のせいだ、小娘・・・・・・!」


 ぽむ。


 つらい事が有るなら話を聴くよ、ということだろうか。


 ホッカイがイバラークの肩に優しく手を置く。


 ・・・・・・うん、今まさにつらいよ。


 心がポッキリ折れてしまったので、十分ほど一人で足元の小石を投げて投げて投げまくった。


 イバラークの足元がキレイになった所で、何事も無かったかのように魂が現場復帰した。


「まだ依頼内容言ってないだろうが!?」


「そっからやり直すの!? あぁ、もう、悪かったわよ・・・・・・貴様が」


「小娘ぇえええ!」


 最後の一言は聞こえないように言ったつもりのようだが、聞こえていたようだ。


 イバラークとアキータはずっとこうなんだろうなとホッカイは思った。当然口には出さないが。


 しばらくイバラークとアキータがじゃれあっていたので無駄な時間が過ぎてしまったが、やっと本題に入る。


「え~、心のキレイなホッカイ君には中心部の丘が見えているようなので、ここから丘に向かって真っ直ぐに進んでもらいます。その間に等間隔でこの色違いの布を杭に打ち付けて立てていってもらいます。中心部から北側が黒、東に青、南に赤、西に白を使って下さい。因みにここがちょうど西の地点になっています。後ほどコンパスを渡すので、真っ直ぐ東西に針が向くように移動しつつ、このロープの長さ分ずつ杭を打って下さい。何か質問は? 因みにおやつは赤貨50枚分まで、バナナはおやつに入りません!」


 どこから取り出したのか、四色の布とロープを取り出して見せたイバラーク。


 ロープの長さからいくと、杭を立てたら隣の杭がよく目を凝らせば見えるくらいになりそうだ。


「で、杭は? まさか自分達で調達じゃないわよね」


「心は汚いが頭の回るアキータ君、ご心配無く。杭は既に商業ギルドに発注済。三日後までにここに運んでもらえることになっている。その後、基準になる最初の一本を西と南に立てておくから、そこをスタートに等間隔に杭を打っていってくれ。力仕事はホッカイが居れば大丈夫だろ」


 イバラークとアキータの視線がホッカイに集まる。


「むふー」


 気合の入った表情で鼻息を荒くするホッカイ。


 任せろ、という事か。


「で、これだけの大仕事、納期は?」


「ん~、杭が届いた後俺が基準の杭を打っておくから、四日後から作業してもらう事になるな。そこから三十日後までに頼む」


 アキータが頭の中で計算をしているようだ。一点を見つめたまま動かないでいる。


 ホッカイがどれだけ動けるかにもよるが、アキータもお抱えの取り巻き連中を使う予定なので、いけなくはないと判断した。


「いいわ。で、報酬は?」


「お前らに好きな区画を優先的に選ばせてやるよ。あと、最初から中級ギルド員で登録。さらに今回分の働きは功績ポイントさらに上乗せ。前金で金貨十枚やるから、人を雇うなり道具揃えるなりしてくれ。後金で金貨十枚な」


 これにはアキータも意表を付かれた様だ。


 かなりの好条件。


 特に中級ギルド員の待遇は大きい。


 下級ギルド員が一区画までしか借りられないのに対し、中級ギルド員は十区画まで借りられる。


 因みに上級が五十区画。


 特級が百区画としてあるが、特級のギルド員が今後出てくるかはわからない。


 また、中級ギルド員は既に一定の貢献をしている証であり、ギルドから信頼を受けている証である。


 今後依頼を受けるに当たって、ギルドのお墨付きが有ると言えるので、下級ギルド員よりも仕事の依頼も多い。


 報酬の前払いが有るのもありがたい。


 これで人を雇いやすい。


 特に、仕事が無くて貧しい者に仕事を与えているアキータには好条件である。


 日雇いで即金で支払いができるのなら、すぐにでも人が集まる。


 アキータの顔がほころんでいる。


 その顔は自信満々の強気な笑みとは違い、とても柔らかな聖母のような微笑だった。


「・・・・・・まぁ、なんだ。自分で言うのもなんだが中々の好条件だと思うがね」


 そんなアキータの顔を見て、イバラークはこめかみを人差し指でこりこりかきながら言う。


「いいわ、契約成立」


 普段の勝気な笑みでアキータが請け負う。


 ホッカイの意思は介在しないまま契約が成立したのであった。

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