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ギルドマスターは嘘つきです

イバラーク(32)

農業ギルドのギルドマスター。

赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。

農業以外は何でも器用にこなす。


ナグヤ(34)

ハンターギルドの特級ギルド員。

明るい灰色の髪を短く刈り込んでいる。

ナイフとショートソードを扱う。

 沈黙が続いていた。


 イバラークが対峙するこの三人のせいで森も静まり返っている。


 静寂が耳に痛い。


 風が吹いて木のささやきが聞こえてナグヤたちの時が動き出す。


「・・・・・・おいおいおい、商業ギルドのセンディさんなら俺だって良く知ってる。お前が偽者なのはすぐにわかるぜ?」


 センディは有名人だ。


 商業ギルドのギルドマスターと言うだけでも知名度が上がるのに、辣腕で有名だ。


 しかも現場にも出るので露出も多い。


 顔も良く知られている人物だ。


「何!? よく知っているだと!? 貴様奴のストーカーか! キモイな!」


 残念ながらイバラークの思考はぶっ飛んでいた。


 三人が唖然とする。


「おいおい、俺はあくまで仕事を請ける立場でセンディさんを良く知ってるってだけだって。俺じゃなくてもハーポーンの人間なら知ってるだろ」


 仕事を請ける。


 ナグヤはそう言った。


 つまり、どこかのギルドに所属している。


 そして、センディという大ギルドのギルドマスターの仕事を請けるだけの力量がある人間。


 戦い方からして戦士ギルドかハンターギルドの特級ギルド員だろう。


 このララミシアの森は要衝ではない。


 わざわざ要衝でもない場所の殲滅依頼を戦士ギルドに出す事はないだろう。


 ならば採集目的でハンターギルドに依頼があったと考えるのが自然。


「で、そのハンター様は何の用でここに来たんだ?」


「へぇ、あれだけの会話でハンターギルドのギルド員ってわかったんだ。あんた何者・・・・・・って、真面目に答えなかったんだよな、あんた」


「何だと!? 俺は真面目な人間だ!」


 根拠のない自信はどこから来るのだろうか。


 地獄の底だろうか。


 ナグヤは話の通じない大男に怯む。


 頭のおかしい男にからまれていい気はしない。


「なぁ、あんた、そこまでわかっているなら仕事の邪魔、しないでくれるか?」


「お前らの仕事って?」


「守秘義務がある。言えないな」


 さすがに特級ギルド員、モラルもしっかりしている。


 依頼主の了解もないままに仕事の内容など言えない。


 それはイバラークも理解しているはずだが。


「ふむ、ではしょうがないな。こっちも仕事なんでな」


 イバラークは堂々と胸を張る。


「お前らを、止める」


「!!」


 ナグヤが身構える。


 ハンター達の仕事は戦う事がメインではないが、依頼品の収集には危険が伴う。


 時には過酷な土地や危険なモンスターと対峙しなくてはならない。


 当然戦闘力は高い。


 少なくともフューリーベアでは歯が立たないくらいに。


 ナグヤが右手にナイフを構える。


 あえてここでナイフを選ぶあたりもさすがというところか。


 ショートソードのほうがリーチがあるし、遠心力と重量によって攻撃力も高くなるが、木が乱立する空間では長い得物は扱いにくくなる。


 冷静な判断をしている。


 場慣れしているのだろう。


 対してイバラークは、素手のまま構える事もなく立って対峙している。


 緊張しており、動揺しているようにも見える。


「・・・・・・なぁ、ナグヤとやら。引く気はないのか」


 イバラークの言葉にナグヤは少しも隙を見せる事なく答える。


「無いねぇ」


 ナグヤがすり足で少しずつ間を詰めてきている。


 イバラークが隙を見せたら一足で懐まで飛び込み、一突きできる構えだ。


「お前も怪我はしたくないだろう。俺だって同じだ。お前ほどの使い手相手に俺も無傷で勝てるとは思っていない。お前だって」


「よく・・・・・・喋るな」


 イバラークは会話を続けたいように見える。


 それはなぜか。


 何かを待っている?


 何かから気をそらしている?


 何のため?


 イバラークの焦りをナグヤは見逃さない。


 イバラークは舌打ちする。


「今だ、やれ!」


 イバラークがナグヤの背後に向けて合図を飛ばすと同時に、ナグヤは背後に振り向きざまナイフをひらめかせる!


「・・・・・・!」


 驚愕。


 ナグヤは何が起こったかわからなかった。


 ナグヤのパーティの二人もその現象が理解できなかった。


 二人には急にナグヤがイバラークに背を向け、わざわざ背後から殴られたようにしか見えなかった。


 イバラークの細かい演技が、その細かい部分に気付いてしまうだけの力量を持ってしまっていたナグヤだけに作用した。


 背後からイバラークの仲間がふいうちしてくるという予測。


 イバラークの行動、あせり、緊張から予測したものが、予測させられていたものだったのだ。


「おい、そっちの二人は俺とやるか?」


 他二人は激しく首を横に振った。

みなさん、いつも読んでくださり、ありがとうございます。

そして、ブックマークありがとうございます。

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