俺が商業ギルドのギルドマスターだ
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
傷ついたフューリーベアは、イバラークを先導するように駆けた。
向かう先はララミシアの森。
イバラークはフューリーベアの後ろを駆けている。
今はトトリがそのあとに続いていない。
トトリはギルドに向うであろうホッカイとシマーネを待つためにギルドに残った。
巨体のフューリーベアは本気で走れば馬より速い。
イバラークはそれでも遅れる事なく追走している。
フューリーベアは怪我をしているせいか息が荒い。
それでも足を止める事なく走り続けている。
やがて森に入るとすぐにイバラークは異変に気付いた。
血の臭いが充満している。
決してこの森のモンスター達は弱くない。
それでもよく目を凝らすと、生い茂る草葉の陰にモンスターや動物の死骸が転がっている。
矢を受けているもの、斬られているもの、刺されているもの。
明らかに人間の手によるものだ。
さすがに林立する森の中を風の如く走るわけにはいかない。
フューリーベアは小刻みに体をくねらせて森の中を急ぐ。
臭いを覚えているのか、先導するフューリーベアは迷わず一方向に進んでいる。
そのおかげで、それはすぐにイバラークにも知覚できた。
戦闘の気配。
イバラークは先導するフューリーベアを追い抜いて気配のもとへと駆ける。
まるで何も無いかのように疾風となって走り抜ける。
「おいおいおい、やりすぎじゃあ、ないのかい?」
鹿の首を今まさに刎ねんとするショートソードをイバラークは素手で掴んで止める。
「なんだ、お前!?」
剣を止められた事も、それも素手で止めた事にも、獲物を狩るのを止めた事に対しても驚愕だった。
イバラークと同じくらいの年齢の男だ。
革鎧をつけた軽戦士といったところか。
「なぜ止める!? 離せ! 指が落ちるぞ!?」
「あん?」
イバラークは剣を握った手を離すどころかさらに強く握り締める。
そしてそのまま軽戦士から剣を奪い取ってしまった。
「あ!?」
奪い取ったそれを無造作に投げる。
放たれた剣は少し離れた木の上部に突き刺さる。
その脇には冷や汗をかいた弓士が。
右肩の真上、右頬すれすれに剣が突き立っているせいで立ち上がる事ができないでいる。
弓士が樹上で弓をつがえていた事を、イバラークは見抜いていた。
そしてイバラークはその二人にはもう見向きもしない。
森のさらに奥の一点を見つめている。
「なんだ、俺にも気付いてるのか? たいした腕前だが、はて、そんな強い奴なのにお前みたいな奴聞いた事がないな」
イバラークとやはり同じような年齢だ。
明るい灰色の髪を短く刈り込んでいる。
使い込まれた革鎧に実用性重視のごついナイフ。
腰にはショートソードを佩いている。
身のこなしから只者ではないのがすぐにわかった。
「俺はハンターギルドのナグヤ。あんたは?」
「俺はセンディ! 商業ギルドのギルドマスターだ!!」
そんなわけあるか。
みなさん、お晩です。
いつも読んで下さってありがとうございます。
珍しく今回イバラークがふざけていません!
かっこいいイバラークです!
・・・・・・半分嘘です。




