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ギルドマスター同士の話し合い

バラーク(32)

農業ギルドのギルドマスター。

赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。

農業以外は何でも器用にこなす。


トトリ(19)

おっとりとした見た目の美しいお姉さん。長い黒髪を肩から前に流している。その可憐な姿はハポンナデシコ。

元暗殺者。

そしてきょぬー。


センディ(47)

商業ギルドハーポーン王都支部のギルドマスター。

やり手の元商人。

無愛想かつ鋭い眼光で付け入る隙を見せない。

トレードマークは白髪のオールバック。

「さて、なんの話だ。こちらは忙しいので『手短に』頼む」


 白髪オールバックのセンディの部屋、つまり商業ギルドハーポーン王都支部ギルドマスターの部屋でセンディとイバラークが向かい合っている。


 センディは自分の机にひじをつき、両手を組んでイバラークをにらみつけていると錯覚するほどの眼力で見つめる。


 一方イバラークは用意された椅子を逆向きにして背もたれにあごを乗せて座っている。


 これから大事な話があるというのにずいぶんと弛緩している。


「おう、じゃあ手短にいくぜ。

 そう、あれは俺がまだ五つの時の事だ。

 そん時の俺はまだハーポーンには住んでいなかった。

 で、俺が住んでた家の近くには森があってな。

 しょっちゅう遊びに森に入っていた。

 だから、その森には洞窟があるのを知っていた。

 地中にもぐっていくようなその洞窟は暑い日でも中は背筋が凍るほどの冷気で満たされていた。

 そんな洞窟だから俺も入ろうとは思わなかったんだ。

 だがある日、洞窟の近くを通った時ふと気になって洞窟をのぞいてみた。

 だが、下へ下へもぐっていくような洞窟は昼間でも入り口付近しか中の様子がわからない。

 俺は気にはなったもののそのまま帰宅した。

 その夜、俺はどうしても気になって眠れなかった。

 どうしてそんなに気になったのか、俺は未だにわからない。

 俺は家にあるランタンを手にとり森の洞窟へ向かった。

 夜の森は昼間とうって変わって不気味だった。

 それが俺の不安を増長させたが、それでも俺は導かれるように洞窟へと向かってしまったんだ。

 洞窟の中に入ると冷気が俺の背筋を襲った。

 やばい臭いがしたよ。

 俺は震える体を奮い立たせて下へ下へと降りていった。

 ものの一分くらいで洞窟内は平坦な地面になっていた。

 だが俺はそこで見てはいけないものを見てしまった。

 そこにあったのは」


 イバラークはそこで一旦言葉を切る。


 そして、覚悟しろとばかりにセンディの目を見る。


「う○こだった。くさいわけd」


「俺は『手短に』と言った。貴様のどうでもいい話はまた今度にしろ」


 絶対零度の声音でセンディがイバラークをさえぎる。


「待てよ! そいつはげr」


「本題に入れ」


「はい・・・・・・」


 しゅんとするイバラーク。


 悪いのはイバラークなのでしょうがない。


「あ~、うちのが作った作物なんだが、ちっとばかり特殊でな」


「特殊?」


「ああ。でかいんだよ」


「それがどうした。喜ばしいことだろう? 自慢にきたのか?」


 イバラークは部屋に飾ってあった壺を指さす。


「あの大きさ」


「なんだ? スリーンか? 確かにでかいな。まだ農業を始めたばかりなのにずいぶんと成果が出るのが早いな。この分なら投資した分がすぐに戻ってきそうだな」


 スリーンは種類にもよるがどれも大きな果実になる作物で、人間の頭部ほどの大きさになるものもある。


 壺は人間の頭より一回り大きいくらいだ。


 スリーンとしても大きな部類だ。


「違ぇよ。トレンジ」


「・・・・・・何?」


「トレンジ。普通に市場に並んでるオレンジ色の果実だよ」


 イバラークがこぶしを握ってぐるぐるひねって見せる。


 そう、トレンジはこのこぶしより一回り小さいくらいが一般的なサイズだ。


「まさかとは思うが、トレンジがその壺並みの大きさだとは言わんだろうな?」


「そのまさか。しかも1個や2個じゃないぞ。あの分なら一シーズンで2~300個は取れるだろうな。当然味も保証。むしろ普通のより美味いくらい」


「そんなもの市場に流したら値崩れして他の農家が死ぬぞ!?」


 めったに声を荒げないセンディが興奮した口調で声を上げる。


 今頃下の階では内勤の者達が驚いている事だろう。


「だから相談にきたんだろうが」


 じと目でイバラークはセンディを見る。


 取り乱している自分に気付き、センディは咳払いを一つして仕切り直す。


「で、どうしたいと?」


「おう、こっちでジャムに加工してやるからそれを買い取ってくれ。ジャムなら日持ちする。王都以外でも販売できる。当然他国に持っていっても問題ない。ここのギルドに独占販売だ」


 加工品でない場合、もっていけるのはせいぜい自国内のみ。


 鮮度を保ったまま輸送するには少量ずつ運ぶしかない。


 輸送費を考えると、とても市民が買える値段ではなくなる。


 だが加工品で日持ちするならば、ゆっくりになってもいいから大量に運べば輸送費のコストを抑えられる。


「いいだろう」


「用意してもらいたいのは入れ物だ。巨大な鍋でもいい。それなら商人がその場で量り売りにでもすればいい。そっちにジャムを売る代金と相殺してくれ。で、あとはお前んとこから借りてる金をそれで返済に充ててくれ」


 農業ギルド設立に当たり、商業ギルドから融資を受けている。


 それをイバラークはわりと湯水のように使ってきた。


 借金は結構ある。


 ジャムを販売した所でまだ借金は消えない。


「めちゃくちゃだな、お前は。まったくしょうがない。いくらお前があの」


「マスター、大変です!!」


 慌てて駆け込んできたのは商業ギルドの事務員ではなかった。


 農業ギルドの事務員、トトリだった。

みなさん、読んでくださっていつもいつも本当にありがとうございます。


今回、ちょこっと伏線的なのが入っている話になりました。

今後の展開をお楽しみに。

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