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ギルドマスターとララミスの種 その9

 ララミシアの森は強力な個体が多く、中上級者向けのダンジョンと言っていい。


 どちらかといえば上級者寄りだ。


 そんな森で長年頂点の座に座り続けているモンスターがいる。


 巨躯のイバラークの倍以上の大きさ。


 その腕は丸太の如く太く。


 鋭い鉤爪を持つ手足。


 口に並ぶ歯はその一本一本で刺突用のナイフを作れそうだ。


 その分厚い毛皮は並みの攻撃を通すことはないだろう。


 フューリーベア。


 戦士ギルドの上級ギルド員が徒党を組んでも無傷で勝つのは難しい熊型モンスター。


 危険度のランクは8である。


 そして、目の前にいる個体はその中でも特に強い個体だった。


 この個体に関してはランク9程度になるだろう。


 それが今、イバラーク達を憤怒の表情で見下ろして・・・・・・いなかった。


 土下座するかのように頭を低くし前足をついていた。


 後ろ足は立ったままでお尻を空にむけた格好だ。


 さかのぼる事ほんの少し前。


 ララミスとララミスモドキを選別していたエヒムがそろそろ終わりそうだと思った時、フューリーベアが現れ、イバラークたちに襲い掛かってきた。


 これにはさすがのアキータも悲鳴を上げたが、イバラークだけは鼻をホジホジしていた。


「ぁ・・・・・・もうちょっと・・・・・・」


 もうちょっとで気になる鼻くそが取れるらしかった。


 そんな事情は全く考慮されず、イバラークに向かってフューリーベアが突進してきた。


 巨大な岩が転がってくるかのような突進だったが、イバラークはほんの二歩分だけ横に移動して身をひねると、あっさりその突進をよけてしまう。


 よけられたフューリーベアが地面に爪を立てて慣性を殺し、急ブレーキ。


 方向転換してさらに突進しようと振り向いたそこには、イバラークが立っていた。


 すごく恍惚とした笑みを浮かべている。


 左手の薬指には真っ黒な鼻くそがへばりついてぬらぬらしており、強烈な異臭を放っていた。


 フューリーベアがぎょっとしてそれに目を奪われた瞬間。


 生体鼻くそ移植。


 鼻くそを移植されたフューリーベアが悲鳴を上げて転がった。


 その鋭い鉤詰めで鼻の穴をほじろうとするが、その立派な爪は鼻腔に入れるには危険かつ大きすぎた。


 鼻を血まみれにしてかきむしっていたフューリーベアの周囲に雷が発生。


 パニックになったフューリーベアの魔法が暴走を始め、放電している。


 魔法のいかづちが周囲を無差別に攻撃し始めると、イバラークは慌てることもなく転げまわるフューリーベアの心臓部に拳を突きたてた。


 その一撃で気を失ったフューリーベア。


 どれくらい気を失っていたかはわからないが、目を覚ました時には鼻の治療がされていた。


 もともと、かなわないのはわかっていた事だった。


 強者ほど相手の力量というものが量れてしまうのだ。


 それでも森の主として、侵入者を撃退しに行かなければならなかった。


 死をも覚悟したが気付けば殺されることもなく、治療までされているとは思いもしなかった。


 ここまでされたら降伏するしかない。


 敵意がないことを相手に伝えるしかない。


 考え抜いた末に、目線を相手より低くし首をさらけ出して反抗の意思がないことを示したのだ。

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