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美男と美女とギルドマスターと

「お、お、おおおま、お前って奴はああああ!?」


「?」


 イバラークは目を血走らせる。


 まぁ・・・・・・無理は無い。


 言ってみればちょっとした英雄である。


 白翼褒章と言ったら、国あるいは王族を救うといった特別な功績を立てた者に贈られるものである。


 それが武力である必要は無いが、ホッカイの場合は完全にその武力込みでの褒章授与だ。


 人を助けるその姿勢や実力からして、国のために騎士になった方が良いに決まっている。


 もう騎士になる件は蹴ってしまっているようだが、それにしたって戦士ギルドに行けば少なくとも上級ギルド員、あるいは特級ギルド員にだってなれる筈である。


 騎士になれば月収で金貨十枚以上は稼げるし、戦士ギルドの特級ギルド員なら割の良い依頼がバンバン入ってくる。


 田舎の大部分の農家など月収で金貨一、二枚というところだ。


 子供達、特に男子に聞くと必ずなりたいものランキングで一位が騎士で、剣士というのも常に上位に入る。


 あと何故か十位の内にスライムが入っている。


 まぁ、それは置いといて。


 流れで彼をギルド員と認めてしまったが、彼の為にも国の為にもお引取り願った方が良いのではないか。


 武力が全く農業ギルドに必要無いかと問われればそんな事は無い。


 害獣駆除の依頼があれば、相応に戦える者が必要だ。


 しかし、彼はそんなものに使うには惜しい人材だ。


 こんな所で埋もれてしまってはお百姓さんに申し訳が立たない!


「ねー、オジサン。私を無視すんなよ~。敬えよ~。褒めちぎれ」


「よし、これからも頼んだぞ、ホッカイ君!」


 キリッ。


 ・・・・・・何も言うな。


「ええい、まずは名を名乗れ! そこな小娘!」


「はあ!? ちょっ、信じらんない! 私の事知らないの!? 薬士ギルドのアキータとは私の事よ!」


 心底驚いたという顔をする美女ことアキータ。


 まぁ、噂くらいは聞いた事がある。


 腕利きの薬士であり、若くして王宮の客分研究員として招かれた事もあるらしい。


「で、その天才様が何だって農業よ? 温室ぬくぬくお嬢様ができるような楽な仕事じゃないんだぞ? 薬士ギルドだって、戦士ギルドや商業ギルド、工業ギルドにハンターギルドと並ぶ大ギルドだろうが」


「あんな所、頭でっかちの馬鹿ばっかのギルドよ。私のレベルとは釣り合わないわ。それに、私の為に働きたい男なんていくらでも居るのよ! 私は見てればイ・イ・の」


 つまり、彼女は土地の開墾自体は誰かにやらせるつもりのようだ。


 そして自分は見てるだけ。


 イバラークのこめかみがヒクヒクと痙攣している。


「・・・・・・帰れ。貴様は二号ですらない。お前みたいなのをギルド員とは認めない!」


 かろうじて怒気をこらえながら言葉を搾り出す。


 気を抜いたら怒鳴り散らしそうだった。


 いけ好かない女だとは思ったが、想像以上だったようだ。


「はあ? この私がギルド員になってやるって言ってるのに断」


「出てけっ!」


 我慢の限界だった。


「・・・・・・分かったわよ」


 アキータは回れ右をしてドアに手をかけた。


 その時。


「待ってくれ!」


 バタバタと男達がギルド内に入ってくる。


 気配から外に人が居るのは分かっていた。


 アキータの取り巻きだろう。


「アキータさんは悪くない!」


「アキータさんは俺達の女神様なんだ!」


「アキータさんは誰より優しい!」


 入ってきた三人の男たちが口々にまくし立てる。


「あ~と、お前さん達は?」


 こいつらは何を言っているのだろうか。


 弱みでも握られてるのか?


「俺はヤスケ」


「ユスケ」


「ヨスケ」


 似た背格好に似通った顔立ちの三人が名乗る。


 紛らわしいな。


「兄弟?」


「違う」


 どれが誰だかもうわからなくなったイバラークだが、誰かが答える。


「アキータさんは、俺達みたいな貧民に優しくしてくれるんだ!」


「お金が無くて薬が買えない家に薬を分けてくれたり!」


「仕事が無い俺達みたいなのを雇って面倒を見てくれるんだ!」


 息ぴったりだな、オイ。


「薬士ギルドだって、俺たちさえ居なければ続けられるんだ。薬士ギルドでは、ギルド員ではない俺達を一緒に仕事させるのは駄目だと言われて、それでアキータさんは・・・・・・」


 そう言って三人は悔しそうな顔をした。


 事情は分かった。


 口は悪いし、性格も悪そうだが、悪人ではないようだ。


 こいつらの言い分が正しければ、アキータを慕う人間は他にも大勢居るのだろう。


 アキータの目的は、自分の農場で仕事にあぶれた連中を雇い入れ、雇用を生み出す事だったのだろう。


 悔しいが、イバラークは感動した。


「言い分は分かったよ、ヤスケ」


「俺はユスケ」


 ・・・・・・間違った。


「・・・・・・じゃあ、お前達はギルド員の登録はしないんだな?」


「はい、それでお願いします」


「分かったよ、ヨスケ」


「俺はヤスケ」


 ・・・・・・確率二分の一で間違えた。


「・・・・・・そしたら、準ギルド員で登録しておく。まぁ、なんだ。そこの女におんぶに抱っこって訳にもいかんだろう。手が空いた時に単独でも仕事を受注できるようにしといた方が良いだろう」


 怒りはすっかり抜けてしまった。


 見れば、アキータはそっぽを向いているが、その顔はほんのり赤い。


 可愛い所もあるじゃないか、とイバラークは苦笑する。


「アキータさんの分も含め、お礼を言わせて頂きます。ありがとうございます!」


 そう言って深々と頭を下げてくる。


「顔を上げなよ、ヨスケ」


「俺はヨスケ」


 ・・・・・・また間違っ・・・てない!


「紛らわしいんじゃあああああ!!」

前回、感想を入れてくれた神様がいらっしゃいましたが、さらにブックマークをしてくれている方がいらっしゃるようで。

これはもう立って寝るしかないですな。

本当にありがとうございます。

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