ギルドマスターとララミスの種 その8
白い手のひらサイズの花を咲かせた植物が群生している。
これが探していたララミスの種・・・・・・。
「なぁ、エヒムよ。どれも花が咲いていて種になってるやつなんて無いんだが」
イバラークが眺めた限り、どれも花は咲いているが種は見当たらない。
時期が早いのだろうか。
「いいんですよ。種になってからじゃ遅いんです。発芽が異常に早くて、種として成熟したらイバラークさんが鼻ほじってる間に芽が出てきちゃいますよ」
「む」
小指でほじり取った鼻くそをイバラークははじく。
アキータに詰められた物体Xの残骸が残っているようだ。
「汚いわね。で、エヒム君。察するに私の仕事は種の発芽を防ぐ事みたいだけど、そんな方法知らないわよ?」
誰のせいだ、と騒ぐイバラークを無視してアキータはエヒムに問いかけた。
薬の知識は有っても農作物の知識はあまりない。
ここまで一緒に来たものの、このままでは何の役にも立てそうにない。
「アキータさんならメディエーテルはご存知ですよね。その製法も」
メディエーテルは植物由来の解毒薬だ。
万能な解毒薬で流通が少なく高価だが、当然アキータは知っているし製造した事もある。
メディリリスという植物の根が主原料である。
そのまま使うと効き目が強くなりすぎてしまうので、メディリリスを抑える効果を持つ複数種類の植物を煮出した汁を加えて精製する。
「それと似た事をララミスにもやります。イバラークさん、実はここにララミス以外にも花が咲いているんですけど気付きました?」
「ん~? いや、さっぱりわからん! 俺の鼻なら裂けそうなくらい臭くなっているがな! そこの悪魔のせいで」
「近寄らないでくれる? 悪臭が感染るわ」
「病気みたいに言うな!? いっそ感染れ! 貴様のせいだしな!!」
話の途中で遊ばないで欲しい。
話が先に進まない。
「エヒム君、なんで急にそんな話?」
「はい、ここにララミスの種の発芽を抑える植物があるからです」
「花が咲いているのはララミスだけに見えるけど」
イバラークだけではなく、アキータにもわからない。
「見分け方は色と匂いです。かすかな違いですが、気持ち青っぽい白で甘い中に苦味があるような匂いが有るのがララミスモドキです。ララミスは毒が有る花ですがモドキには有りません。自身に毒が無いモドキは毒があるララミスに擬態する事で身を守っています。このモドキはララミスに依存しているくせに、ララミスが増えすぎないようにララミスの種の発芽を抑える物質を出して自分は増えていく、という事をしています」
「モドキから発芽を抑える成分を抽出してララミスの種が発芽しないように処理すればいいのね?」
「はい。僕はやった事がないんですけど、めしべに薬品を付けるだけでいいそうです」
アキータは右頬に手を当てて考える。
この場で薬を作り出すのは現実的ではない。少なくともホッカイの家で道具をそろえて作るしかない。
では、薬を作ってまたここまで来るのか。
効率が悪すぎる。できた薬の効果を確かめるのにこんな所まで来ていられない。
「エヒム君、ララミスってただ育てるだけなら畑でできるの? 花はどれくらい咲いていられる?」
「持ち帰りは可能です。花はおよそ三日ほど咲いています。その間に処理が必要です。すぐに発芽する事からわかるように繁殖力が強いので、一つの花から10~20粒ほど種ができます。ほうっておけば勝手に増えていきますがすぐに実をつけるほど成長はしません」
エヒムの知識力はアキータも一目置いている。
エヒムに聞く事に抵抗は一切ない。
むしろ頼りにしていると言っても良かった。
「奴隷初号機、仕事よ。運びなさい」
あごでララミスが群生しているほうをさす。
大災害跡地まで運べという事だろう。
「悪魔め・・・・・・さっさと祓われてしまえばいいのに」
使役されるゴーレムはこんな気分でいるのかとイバラークは思った。
今度遭遇したら優しくなれそうな気がする。
「イバラークさん、ララミスとモドキを選別しますので、イバラークさんはララミスを、僕とアキータさんでモドキを運びます」
そう言ってエヒムは手早く根ごと引抜きを始めた。
どれも足のひらサイズの大きさなので、大量に運ぶ事が可能だろう。
エヒムが作業に入ったのでイバラークとアキータは休憩を入れる事にした。
が、残念ながら休憩は取れなかった。
なぜなら、森の主がにらんでいたから。
読んでくださる皆様いつもありがとうございます。
先日、胃痙攣によって地獄の苦しみを味わいました。
半日くらい苦しんで、なんとか今は落ち着いています。
みなさんも胃痙攣を起こした時の為に、いくつか対処法を確認しておくことをおススメします。
ちなみに私はつぼ押したりシップ張ったりしました。
でも、一番は寝て安静にすることでした。
みなさんもお気をつけて。




