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ギルドマスターとララミスの種 その2

「それ、受けちゃったんですか!?」


 イバラークがエヒムに相談した結果の第一声である。


 やっぱりまずいようだ。


「そもそも、ギルドは仲介するだけで実際の依頼はギルド員が受けるものですよね? そんな安請けあいして誰も受けなかったらどうするんですか!?」


「うむ、その時は自分で何とかする!」


「それはギルドマスターの仕事じゃありません!」


 これが十歳の子どもと齢三十を超えた大人の会話である。


 そのうえ、片方はギルドマスターという責任ある立場の人間だ。


 エヒムに怒られてさすがのイバラークも謝った。


 まだエヒムだからいいが、これがアキータだったら骨の髄までボロボロにされていた事だろう。


 よし、アキータには黙っておこう!


「これ、アキータさんにも話し通しますからね?」


「なじぇ!?」


 そんなに悪い事をしてしまったのだろうか。


 穏便に済ませたかったのに、このままでは大事な命が一つ消えてしまうかもしれない。


 イバラークは人生何度目かになる危機に瀕している。


「特殊な薬品で取り出さないと種としての価値が無くなってしまうんですよ。つまり薬学必須。アキータさん必須!」


「こうなったら、アキータに事情は説明せずに協力を仰ぐか依頼人を消すしか・・・・・・」


 依頼人を消すのはやめて欲しい。


 エヒムに言われて依頼人を亡き者にして、もとい依頼をなかった事にする案は消えた。


 そもそも、なんだってウチのギルドに依頼にきたのか。


 薬学の知識が必要となれば薬士ギルドに頼めばいいのに、とイバラークがもらしたがエヒムはそれを否定した。


「薬の知識だけでもダメです。自生しているのはモンスターが出るララミシアの森です。そして当然植物の知識がなければ見つけられません。つまり、薬と植物の知識があり、相応に戦える戦力がないと手に入らない種なんです。はっきり言って一粒白貨一枚じゃ割に合いません」


 なるほど。


 おそらく薬士ギルドにもハンターギルドにも依頼は出した。


 しかし、誰もそれを受けなかったのだ。


 薬士ギルドで依頼を出しても戦える薬士などそうそういない。


 逆もまたしかりで、ハンターギルドで依頼が出ていても、植物の知識ならまだしも薬の知識などさすがに持っている者はいないだろう。


 となれば補うように専門家を雇う必要が出る。


 薬士だったら、戦士ギルドかハンターギルドで護衛を雇う。


 逆にハンターだったら薬の知識がないので薬士を雇う事になるだろう。


 戦士だったら中級、ハンターなら中~上級のギルド員が妥当な戦力となる。


 薬士にいたっては、わざわざそんな危険な所に出向かずとも稼げるので、そんな依頼を受けるメリットはない。


 そうすると、人を雇う分出費ばかりが増え、割に合わない誰も受ける事のない不良物件となるわけだ。


 誰も受けてもらえず、ダメ元で農業ギルドに依頼を出してきたのだろう。


 農業をしている者ならすでに種を持っている可能性もあるだろうから、可能性はゼロではないと考えたのではないか。


「エヒムきゅん」


 胸の前で手を組み合わせて目を潤ませるイバラーク。


「受けて、くれるよね?」


 キモい。


 はいと言うまで続きそうだ。


「・・・・・・わかりましたよ、受けます。でも、アキータさんがうんと言えばですよ? 僕一人じゃどうにもなりません。あと、戦士ギルドで護衛を三~四人は欲しい所ですね。赤字になりますので、イバラークさん、ギルドの経費にしてくださいね?」


「フハハハハ! 任せたまへ、エヒム君。そんなものお安い御用だ!」


 すっかりいつものイバラークである。調子のいい男だ。


「じゃ、アキータさんの説得がんばって下さいね」


「フハハハハ! 任せた、エヒム君! そんなもの俺にできるか!!」

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