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ギルドマスター、イケメンに出会う

 威勢の良いイバラークの声に驚いたようだったが、訪問者は回れ右することなく入ってきた。


「ここ、農業ギルドでいいんだよな・・・?」


 輝くような銀髪に青い眼、透き通るような肌は控えめに言ってもイケメン。


 王族の人間だと言われても疑うことは無いだろう。


 細身だが身長も高く、平均身長より頭一つ分は大きい。


 まぁ、イバラークの方が大きいが。


「看板掛け間違えて無いよ。不安になって六度ほど確認したから大丈夫」


 いい笑顔でイバラークは親指を立てた。


 いや、どんだけ不安になるんだよ、とは誰も突っ込んでくれなかった。


「さささ、どうぞこちらへ」


 カウンターの外に出たイバラークはギルドの奥にある応接用の席に案内する。


 それと同時に来訪者を鋭く観察することも忘れない。


 服装は何の変哲も無い動きやすそうな格好だが、その腰には大振りな剣が佩かれていた。


 剣は鞘に収められているので柄の部分しか見えないが、その造りから重量のあるゴツい剣であると思われる。


 持つ者が持てば、鎧ごと両断できるような代物だろう。


 姿勢が良いが、軍人のような硬さは無く、自然体で最適な動きができるよう体に染み込ませた、そう、戦士のものだ。


 イバラークが椅子を引いてやると、来訪者は軽く会釈して椅子に座った。


「え~、じゃあ少しお話聞かせてもらおうかな」


 対面に座ってイバラークが話し始める。


 早いところギルド員を集めたいが、せめて初期メンバーくらいは優秀な人材を揃えたい。


 農業の知識や経験、動植物について、地質について、天気について。


 とにかく何かしらの特技や専門知識があるのが望ましい。


 まぁ、戦士と思われる彼に何ができるのか期待するのは酷かもしれないが。


「え~と、まず名前・・・・・・」


「ホッカイ」


「ホッカイ君ね・・・・・・うん、特技とかある?」


 コクリ。


「・・・・・・うん、え~と・・・・・・?」


 人見知り・・・・・・ではないようだが。


 緊張しているのだろうか?


 真っ直ぐホッカイはイバラークの目を見ているばかりだ。


「・・・・・・どんな特技かな?」


 ホッカイは鞘にしまわれたままの剣を持ち上げる。


「・・・・・・あ~、剣技ってことかな? う~ん、農業の知識なんかは・・・?」


 フルフル。


「動植物については・・・?」


 フルフル。


「地質についてとか・・・・・・土や肥料について・・・・・・」


 フルフル。


「・・・・・・・・・・・・」


 じーっ。


「うん、えーっと、ご」


「頼もーっ」


 ドアベルが必要ないんじゃないかって位に扉が勢い良く開かれて大きな音を立てた。


 そして、扉の音に負けない女性の声。


「・・・・・・ちょっとごめんね」


 イバラークはホッカイに一声かけて席を立つ。


 新たな来訪者を迎えに入り口のほうへ向かうと。


 美女が居た。


 紫がかった長い黒髪は艶やかで一切の癖が無い。


 大きな目は髪の色に似た紫で自信に満ちている。


 それはもう、溢れて滝のようになっている。


 そして、全身黒で統一したレザーの服。


 本人の容姿も相まって、とてつもなく目立つ女性だった。


「私がここのギルド員になってあげる」


 ・・・・・・まだ何も言っていない。


 ・・・・・・挨拶もしていない。


 ・・・・・・お前、誰よ。


 イバラークは目が点になったまま動けずに居た。


「私一号? 一番乗りっしょ?」


 時が動き出したイバラークは思いっきり顔をしかめて、胸の前で手を交差した。


「残念だったな、小娘! 一号はそこのイケメンだ!」


 イバラークはホッカイをギルド員にするのは断ろうと思っていたのだが。


 万が一にもこの女性を栄えある第一号のギルド員にするのは嫌だった。


「はあ? 誰よ、私の先を行こうなんて不遜な輩は」


 不遜は貴様だ。


 その女性は奥を覗き込む。


「ん? んん? もしかしてあれ、ホッカイ?」


 どうやら彼を知っているようだが。


 元彼とかか?


「知り合いか?」


 フルフル。


 ・・・・・・ホッカイか。


「じゃあ、やっぱりホッカイなのね。あの」


「?」


「・・・・・・何あんた、知らずに彼をギルド員にしたの?」


 コクリ。


 ホッカイです。


 ・・・・・・違うか。


「アイツ、白翼褒章のホッカイよ。十四の時たった一人で、小さな村に立てこもった盗賊団を壊滅させ

て、その翌年には国王暗殺を企てた一味から国王を守り、やはり一人で壊滅させた。騎士として招かれたけど、断ったって聞いてる」


 イバラークは目が点。


 時が止まっているのに、人の二倍くらいのスピードで老化した気がする。


「俺が言うのもなんだが、何でうちのギルド入ったっ、お前ぇええええ!?」


 時が動き出したイバラークは、光の速さを超えたんじゃないかってくらいの速さでホッカイの胸倉を掴んだのであった。

初めてコメントを頂きました。一話しか書いてないのに! 神か!?

どちらにお住まいかは存じませんが足を向けて寝れません。

じゃあ、寝ない! いや、寝る!

足が向いてたら本当にすいません。

コメント頂けると凄く励みになりますね。

色々な作家さんがあとがきで書きますけど、自分がその立場になると、本当にそう思います。

よし、頑張ろう!

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