ギルドマスターが見た、ホッカイの農業
「むふー」
どうや、これがワイの武器や、という感じにホッカイが鍬をかかげる。
気合が入っているのに、何故だろう・・・・・・デフォルメされた二頭身に見える・・・・・・。
「おお、気合入ってるなホッカイ。だが、どうした。その鍬」
真新しい立派な鍬だったので、イバラークが尋ねる。
するとホッカイはポンポンと自分の腰の位置を叩いた。
「? 分からんが・・・・・・?」
もうチョイ喋ろうよ、ホッカイ・・・・・・。
と、助け舟を出したのはアキータだ。
「ホッカイ、自分の剣を鍬とフォークに打ち直したのよ」
「なぬ!? お前、それでいいのか!?」
こくり。
「どうも愛用の剣だったみたいだから、姿形を変えて使い続けたかったみたいよ」
なんとまぁ、剣にとってはありがたいようなそうでないような。
道具としてはそこまで愛着を持ってくれるのは嬉しいだろうが、剣が鍬って、ねぇ?
何はともあれ、ホッカイは満足しているようだ。
イバラークが見た感じ、ホッカイの剣は良い素材を使っていたようだ。
永く使う事が出来そうだ。
「よし、じゃあエヒム。まずは何をすればいい?」
最早一から何をすれば良いのか分からないギルドマスターって・・・・・・。
だが、幸いな事にそれを突っ込む者はここには居なかった。
「はい、まず土地を耕しましょう! 本来ならば雑草や木が有ったりして不要なものを刈ったり伐採する所から始まりますが、幸いここは土だけです。ガンガン耕します」
コクリ。
ホッカイが力強く頷いた。
そして鍬を振り上げる。
陽光を跳ね返し、鍬がまばゆく輝く。
ざくっ。
ずどぉおおおおお!!
「・・・・・・え?」
神速で突き刺さった鍬の先から衝撃波が。
地面は遥か彼方まで掘り返されている。
「むふー」
満足そうなホッカイ。
心なしか肌つやが良くなってテカテカしているように見える。
そしてどう見てもデフォルメされた二頭身にしか見えない。
ホクホク顔のホッカイの他は皆固まっている。
「何、したのかな・・・・・・?」
イバラークがかろうじて声を出す。
「・・・・・・耕す」
「そ、そうか・・・・・・いや、俺が知ってる農業とちょっと・・・・・・だいぶ、違うから・・・・・・」
ホッカイの土地をはみ出してアキータの土地まで耕されている。
イバラークが思い描いていた農業とは凄くかけ離れていた。
あと、人間の常識からもかけ離れていた。
ざくっ。
ずばぁああああ!!
ざくっ。
ごばぁああああ!!
ざくっ。
ちゅぱかぶらぁああああ!!
ホッカイは次々と鍬を振り下ろしていく。
おもちゃを手に入れた子どものようなはしゃぎっぷりだ。
楽しそうで何より。
この光景は地獄かとも思えるが、これを引き起こしている本人は無邪気そのものなので、ギャップが凄い。
アキータは現実逃避なのか現実を受け入れた末なのか、興味を失ったかのように髪の先をいじって遊んでいる。
彼女としては自分の土地も耕されているので万々歳なのだろう。
可哀想なのはエヒム。
人間、自分に理解できないものには恐怖を覚える。
泡吹いて倒れていた。
彼が目を覚ます頃には、ホッカイが土地を耕し終えていた。
一日も早く、この非常識に慣れた方が身の為だと思うイバラークであった。
なんか一気にブックマークが増えました。
ガクブルです。
運を使い果たしたので、明日には栗のイガが直撃して死ぬんじゃないでしょうか。
本当に皆様ありがとうございます。
え~、やっと農業が始まりました。
でもこれ、本当に農業小説か?
本当はバトルものなんじゃない?
ホッカイ大暴れです。
今後の活躍に期待。




