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意外とギルドマスターは博識です

 今居るのはホッカイの土地である。


 その隣はアキータの土地である。


 二人とも中級ギルド員スタートなので、十区画まで借りられる。


 当然のように二人とも十区画土地を借りた。


 少し離れた所にエヒムの土地が有る。


 エヒムは下級ギルド員スタートなので、一区画だ。場所は池のほとり。


 場所的には一等地といえる。


「マスター、ここら辺ってモンスターは居ないんですか? さっきから全然見かけませんけど」


「さすがエヒム君。良い質問だね。さぁ、見てごらん。この一面の荒野を」


 ドヤ顔でイバラークが解説を始める。


 素直にエヒムは周囲を見渡す。


 ものの見事に何も無い。


「? えーと? 何も無いですけど」


 そう言われても何も気付かないので、見たまんまを口にするエヒム。


 しかし、それで正解だった。


「そう、つまりエサになるものが居ないのさ。あ、ちなみに動物と害獣とモンスターの区別は知っているかい?」


「あ、いいえ・・・・・・すいません、わからないです」


 申し訳無さそうにするエヒムにイバラークが苦笑する。


「別に悪い事じゃないさ。動物は人に害を及ぼさない生物。害獣は積極的に人を襲うことは無いけど畑や住まいを荒らす生物。モンスターは積極的に人を襲う存在という区別が厳密には定義されている。それで言うとスライムはモンスターではなく害獣に分類される。ちなみにスケルトンやリッチは例え人に害をなさなくても、生物ではないのでモンスターに分類される」


「へ~、さすがマスターですね! 初めて知りました!!」


 キラキラした目でエヒムがイバラークを見ている。


 なんて純粋な子なんだ。


 あ、何気にホッカイも同じような顔をしている。


 そんな顔をされてイバラークは天狗になっているようだ。


 調子に乗りすぎて変な顔をしている。


「調子ん乗ってじゃないわよ、モンスターが」


「ぅをいぃ!? なんでじゃ、こらぁ!?」


「隙有らばすぐに人を襲おうとする変態マスターのクセに」


「濡れ衣だ!! あ、やめて! 二人ともそんな目で俺を見ないでっ!!」


 ああ、さっきまでの憧れの人を見るかのような視線は、一年間お小遣いを貯めて買ったおもちゃがたった一日で壊れてしまったかのような残念無念また来週なモノに。


 何故かアキータまで死んでしまった子犬を見るかのような目でイバラークを見ている。


「あれか、俺は残念な奴なのか・・・・・・? 可哀想なのか・・・・・・?」


 しばらくイバラークは気をつけの姿勢でうつ伏せになっていた。


 その間ずっとエヒムがおろおろとその周りで慌てていたが、アキータは美しい自分の髪先を指でいじって遊んでいた。


 ホッカイは指でつんつんしていたが、イバラークはしばらく動かなかった。


 再始動。


「こうして三匹の子コボルトは魔王を倒し、幸せに暮らしましたとさ」


 そんな話はしていなかった。


 でも、ツッコむとまた面倒くさいので、誰も何も言わなかった。


「で、せっかく農業経験者が居るので、ホッカイの所で畑を作るレクチャーをしてもらおうかと」


 イバラークの思惑はそういう事だった。


 なんせホッカイもアキータも農業経験ゼロである。


「分かりました。僕で良ければお教えします!」


 こくり、と一つ頷いてエヒムが自分の胸を叩く。


 何だろう、背伸びをしている子どもを見るととても微笑ましい。


 イバラークがエヒムのその姿に癒されて鼻の下を伸ばす。


 その隣では、道端の汚物を見る目で見るアキータと、鼻息を荒くして(くわ)を持つホッカイの姿が有った。


 あれ、自前の鍬・・・・・・?

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