ギルドマスターはやっと土地を与える
ついにこの日がやってきた。
念願の土地が手に入る(ギルドからの貸与ではあるが)のである!
ギルドマスターからの直々の依頼をこなす事で、自分達で好きな位置の土地を選べる権利を持つホッカイとアキータは、既にどこにするかは決まっているようだ。
実の事を言えば、イバラークにはどこを選ぶかの見当が付いていた。
ギルドから街道を東に進み、その途中にクレーター外周の山脈付近まで来る。そこから山越えが始まるのだが、真っ直ぐ登って降った地点より左周りに進むと程なく、水辺が有るのだ。
山脈を含め、クレーターには植物が生えていない。
雨が降ると何の抵抗も無く低い場所へ水は流れ、水溜りを形成。
やがて水溜りはちょっとした池となっていった。
イバラークが事前に調査を行った所、こういった池はクレーター外周部に比較的多く存在している。
中央に近い方にも池は存在するが、外周部ほど数は多くない。
当然ながら作物を育てるに当たって、水は必要不可欠である。
井戸を使えば良いのでは、と思われるかもしれないが、残念ながらクレーターが出来た時に井戸は全て消滅している。
下手すれば、いや、かなりの確率で水脈も元の形から変わってしまっていると思われる。
適当にそこら辺を掘った所で水が出るとは限らないのである。
王都への交通と水の確保という点において、クレーター中央部から見た南西部の外周にある池の近くを選ぶだろう。
ホッカイだけならともかく、アキータが一緒に行動しているので、その判断は間違いなくされる。
アキータは頭が切れるのだ。
イバラークは違う意味でよくキレているが。
ゆくゆくは水路を引きたい所だ。
井戸が出る土地に当たった者はラッキー。
こればかりはくじ引きみたいなものだ。
池に関しては土地の所有者を決めないようにする。
ただし、土地の割合に対して池が占める割合が一割未満の土地は使えるようにする。
水路が無いままで水辺を貸与し、水を独占されては弊害が出る。
果たして、イバラークの予想通り二人は池の周辺を選んだ。
予想外なのは完全に二人が隣同士になるように土地を選んだ事だが。
「お前らってそんなに仲良かったか? 一緒に作業する内にデキちゃった系?」
ふるふる。
ホッカイは横に首を振る。
「さすが変態は安直な思考をしているわね。デュラハンの頭と交換してきたら? 王都の西の地下遺跡に大量に発生してたわよ」
「デュラハンに頭ついて無いだろうが!? 交換したら俺の頭無くなるわ!!」
「無い方がマシなんじゃない?」
「いくら何でも傷つくわい!」
「じゃあ、傷つかないように体も交換してもらったら? 鉄の体になれるわよ」
「やつら基本的に鎧だけだからな!! ってか物理的にじゃないし!! 体も交換したらまるまるデュラハンだしねーーー!!」
もう突っ込み所満載だ。
「ま、あれよ。協力体制ってやつ。体力的なものはホッカイに全く敵わないから、手伝ってもらうのよ。代わりに肥料とか虫除けみたいな薬に関する事は私が面倒見てあげようと思って」
「ほう。ホッカイはそれで良いのか?」
こくこく。
まぁ、二人がそれでいいなら良かろう。
「・・・・・・あの、み、皆さん元気ですね」
初めて大災害跡地に来たエヒムの額には汗が浮き、軽く息が弾んでいる。
アキータの時よりはまだマシだが、結構疲れているようだ。
「鍛え方が違うのよ」
なんだか、聞いたことのある言葉だなぁ、とイバラークは思ったが思い出せなかった。
「す、凄いですね。美人で頭が良くて体力も有って・・・・・・」
アキータがふっ、と笑う。
そして、懐から何かを取り出し、エヒムに突きつける。
「この私が調合したマンドラゴラ・・・・・・は、高価で手が出なかったけど代理の物と白竜の爪・・・・・・なんて滅多に市場に出回らないので代理の物と、寝不蝶の鱗粉は王都付近じゃ手に入らないので代理の物で作った、このムキムキンを飲んで鍛えたのよ!!」
うん、確かに一般人とは鍛え方が違うね。
いや、別に駄目とは言わないけどさ。
それ鍛えるって言うのかなっていう疑問が・・・・・・。
そして何より。
「ちょ、おま、それ別物しか入ってない謎物質じゃん・・・・・・」
イバラークの言葉にエヒムは引きつった笑いをしている。
自分は普通の方法で鍛えよう、そうエヒムは思った。
書いておいてなんですが、誰が一番まともなキャラクターなのかさっぱり分かりません。
今の所新キャラエヒム君が一番まともそうですが。
私の手を離れて勝手に変な方向に進まない事を祈るばかりです。
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