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あ、こちらのギルドマスター犯罪者ですか? いいえ、変態です

「その後どうしたのよ!?」


 イバラークとトトリから、トトリが農業ギルドの事務員になった経緯を聞いていたアキータから抗議の声が上がる。


 まぁ、以下略では分からない。


「大丈夫、大丈夫。ちゃんと王都警備隊に通報したって」


「そこまでの間!?」


「え~、それ聞いちゃう? 取り合えず八人くらいの怪我人が出たけど皆無事だったよ」


 え、何故八人も怪我人が出る?


 アキータの整った顔が理解不能と訴えている。


「トトリ、この馬鹿じゃ話にならないわ」


「ええとですね、お店に居たのは皆客を装った暗殺ギルドのメンバーでして。ギルドマスターを含めた暗殺者ギルドメンバー全員のされました。こちらのマスターは素手でしたが、一切怪我無し。変態です」


 あえて負傷者の状態は言わなかったトトリだが、とりあえず首と胴体は繋がっていたとだけ追記しておこう。


 暗殺者ギルドというのは、当然人殺しを束ねているギルドなので王宮からの公認はもらえないし、当然だが殺人は犯罪である。


 不正ギルドの摘発に貢献したので、後で王都警備隊から表彰されるかもしれない。


 それでもこういった不正ギルドは無数にある内の一つである。


 暗殺者ギルドだって他にも有るかもしれないし、盗賊ギルドなんかも存在する。


 無数の内の一つを潰した所で、何が変わるわけでもない。


 せいぜい、飲食店を装った不正ギルドで凄惨な事件が起こったというニュースを生み出したくらいだ。


「で、トトリも犯罪者な訳で。本当にいいの、雇って?」


「はん? 犯罪者って誰の事ですかね? イバラークわかんなーい」


「確実に殺ってるでしょ、彼女」


「普通の村娘ですが何か?」


「普通の村娘は殺人を生業にしない」


「証拠はあるのかよ、ケージさんよぉ?」


「私の名前はアキータよ。踊る死体の脳みそでも移植した方がマシなんじゃない? 東の洞窟に住み着いてるわよ」


「ちゃんと口は封じたから大丈夫!!」


「お前も犯罪者か!?」


 イバラークとアキータの間で不毛なやり取りが繰り返される。


 イバラークとしては、やっと手に入れた事務員を手放すつもりは無いようだ。


 アキータとしては気が気ではないのだが、しょうがないと思う部分も有った。


 豊かに暮らしている者がいる一方で、貧困に悩む者達もいる。


 いけない事とわかっていて生きていく為に犯罪に手を染めてしまう者達は決して少なくは無い。


 アキータはよく貧困にあえぐ家を訪れ、薬を支給して回っている。


 だから、そんな者達の事情は理解できた。


 トトリもその口なのだろう。


 もしかしたら、イバラークもそれをなんとなく感じ取っているのかもしれない。


 だから、ふざけているように見えて、彼女を匿っているのでは、とアキータは思った。


「アキータさん、の言う事ももっともだとは思います。私は生きる為に人を殺した。それを偽るつもりはありません」


 トトリは、恥じるでも誇るでもなく語る。


 ただ偽りの無い彼女自身の言葉だ。


「ずっと、それで生きてきました。これからもそうして生きていくと思っていました。でもマスターは、私に人を殺す以外で生きる道を示してくれたんです。アキータさん、信じてください」


「・・・・・・アキータでいいわよ。さん付けされてもこそばゆいわ」


 アキータも彼女を受け入れた。


 そんなアキータにトトリは笑顔を返す。


「あ、それと名誉の為に言っておきますと、誰でもむやみに手を汚したわけじゃないですよ? どうしようもないクズ野郎を始末する依頼しか受けてませんから」


 邪気の無い笑顔でトトリが言う。


 何かやっぱり危ない女だとアキータは思った。


「ん? じゃあ、何で俺殺されそうになったの?」


 イバラークは納得のいかない顔で冷や汗をかいている。


「え、守秘義務で誰が、とは言えませんが、ここ数日で複数の女性から変態に絡まれるという被害が続出していて、恐ろしいので犯人を殺して欲しいと」


「・・・・・・・・・・・・」


 どうやら自業自得の結果だったようだ。

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