ギルドマスターが詰問するけれど
イバラーク(32)
農業ギルドのギルドマスター。
赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。
農業以外は何でも器用にこなす。
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
アモリン(24)
桃色の髪を後ろで髪留めを使ってまとめている。
占い師。
エロいお姉さん。もはや変態。
ティーヴァ(32)
元聖騎士団員。
くすんだ金髪に鋭い茶色の目。
その戦闘力は並外れており、明確な序列はないが聖騎士団の中でも三本の指に入っていた実力者。
イバラークの目の前にはアキータ、アモリン、ティーヴァの三名がいる。
農業ギルド内にはトトリとシマーネもいるが、奥に引っ込んでいる。
おそらくアモリンがいるのでトトリがシマーネを避難させたのだろう。
「で、何をしとるんだ貴様らは・・・・・・」
「いやいやいや、待てイバラーク! 熱っ!?」
慌てて席を立とうとしたティーヴァが目の前に置かれていた熱いお茶をこぼして太ももにダメージを受ける。
「・・・・・・何をしとるんだ貴様は」
「言い直すな!?」
アキータとアモリンはしらけた目でティーヴァを見ている。
「ドジっこ属性は可愛い女の子だから許されるのよ」
アキータのセリフにアモリンが頷く。
「エヒムきゅんならありだけどっ!」
アモリンのセリフにアキータは頷かなかった。
アキータの冷たい目がアモリンに刺さる。
それを受けてアモリンはなぜか顔を赤らめて荒い息を吐いている。
変態は強いな、とイバラークは思った。
「まぁ、アモリンはわかるがティーヴァまでどうした? 何が悲しくてエヒムに欲情し」
「してないわい!? あらぬ誤解を受けとるがな!?」
「アキータの報告だと、『俺のエヒムに手を出すな』と大声で叫んだとか・・・・・・」
さすがのイバラークもどん引きの顔でティーヴァを見ている。
元同僚としてどんな顔をすればいいのか。
「違っ!? 『俺の』とか言ってないし! そこの女がエヒムに狼藉を働こうとしていたから手を出すなと言っただけだ! なんかその報告に悪意を感じるんだが!?」
アキータはしれっとした顔で爪をいじっている。
そよ風程度にも感じていないようだ。
「ちょっと、狼藉って何よ? 私がエヒムきゅんに危害を加えるとでも!?」
「犯罪者予備軍どころか貴様は犯罪者一歩手前軍だわ!」
「何よぉ!?」
アキータは耳に手を当てて涼しい顔をしている。
こいつのメンタルはどうなっているんだ。
イバラークはため息をついて仲裁に入る。
「二人ともやめんか。まぁなんだ。いつものアモリンにこの調子で食って掛かったわけか、ティーヴァ。んでアキータに黙らされた、と」
大きなため息が出てしまう。
これでも元聖騎士団の一員であり、イバラークがいなければ副団長になっていたであろう人物である。
それがいとも容易くアキータにのされた挙句死にかかってエヒムに助けられた、と。
アモリンの方はいつも通りだが。
いつも思うがよく無事にいられるな、こいつ。
しょっちゅうアキータに折檻されているのに死なずにいるのだから、悪運が強いというかしぶといというか。
「おい小娘。いくら止めるためとはいえ、お前ももう少し加減をしろよ?」
「・・・・・・」
「・・・・・・おい。耳をふさいでいるから聞こえませんみたいな態度やめんか!?」
アキータはイバラークに小首をかしげて見せる。
絶対に聞こえているだろ。
人の皮をかぶった悪魔め。
憮然とするイバラークにアキータが口をパクパクする。
「?」
何かと思ってアキータの方に耳を傾けるが聞き取れない。
そんなイバラークにアキータが口をパクパクさせてイバラークの後ろを指差す。
「?」
イバラークが不思議そうに振り向くと・・・・・・
「・・・・・・!?」
後頭部に鋭い痛みが走って意識を失った。
「よし」
何が『よし』なのか。
血のついたイスを両手で持って、やり遂げた顔をしているアキータは罪悪感ゼロである。
これにはさすがのアモリンとティーヴァも唖然としてアキータを見つめるしかない。
「さて帰るわ」
「えぇ~・・・・・・?」
「イバラーク、生きてるか・・・・・・」
自身のケンカを忘れて呆然とするアモリンとティーヴァを置き去りに、アキータはイバラークを一瞥する事もなく家路についたのであった。
読んでくださるみなさん、いつもありがとうございます。
この分だと明日第二子が出産予定です。
ドキドキです。
無事に産まれて欲しいです!




