ギルドマスターの今後が思いやられる二人
アキータ(17)
紫がかった長い黒髪で髪色と同じ色の目は大きい。怜悧な美貌の持ち主。
天才薬士として有名。
地獄の底からやってきたイバラークの天敵。
エヒム(10)
肩口まで伸ばした金髪に青い目。美少女と見まごうばかりの美少年。
農家の次男坊で年齢に似つかわしくない知性と農業スキルを持つ。
アモリン(24)
桃色の髪を後ろで髪留めを使ってまとめている。
占い師。
エロいお姉さん。もはや変態。
ティーヴァ(32)
元聖騎士団員。
くすんだ金髪に鋭い茶色の目。
その戦闘力は並外れており、明確な序列はないが聖騎士団の中でも三本の指に入っていた実力者。
「さぁ、エヒムきゅんからその汚い手を離しなさい」
確かに土仕事をしているので手は汚れているが、エヒムには指一本触れていない。
見た目はそれなりにいいが、この桃髪の女性にかかわってはいけないような気がする。
ティーヴァの中で警鐘が鳴らされている。
「あ、アモリンさん」
どうやらエヒムは彼女を知っているようだ。
ここにいるという事は、この女性もギルド員なのだろうが。
ティーヴァはまだ面識がない。
きっと向こうからしてもそうだろう。
「なんとなく占ってたらエヒムきゅんがピンチって出てたのよ! さぁ、観念してエヒムきゅんから強奪したパンツをこちらによこしなさい!」
「・・・・・・エヒム、彼女はどうしたんだ? 頭を強く打ったのか?」
「僕が知る限りは最初からああでしたけど・・・・・・」
ティーヴァがエヒムに小声で問いかける。
つられてエヒムも小声で答えた。
「最初からああって・・・・・・ヤバいだろ」
「なぜかパンツに執着してるだけで悪い人ではありませんよ?」
「エヒム、世間一般では犯罪者と呼ばれる部類だ」
エヒムにとってはパンツはただの衣類である。
それ以外に価値はない。
エヒムにはティーヴァの言葉が理解できなかった。
だが、ある意味ティーヴァはそれにほっと胸をなでおろすのだった。
「ちょっとっ! なんで無視してるのよ!?」
放っておかれたアモリンが怒っている。
「あ~、いや、かかわっちゃいけない人かと」
「なんでよ!?」
「無自覚!?」
どうやら彼女は自分が変態である事を認識していないようだ。
開き直った変態は厄介だというが、無自覚の変態も厄介である。
「とにかく、俺はエヒムに何もしていないぞ?」
「嘘よ! 男はいつもそうやって・・・・・・! 都合が悪くなるとごまかすのよ! いっつも女は泣き寝入り・・・・・・」
「誤解を招くような事言うな!? あんたには何もしてないだろう!?」
ここが王都の街中ではなくて本当に良かった。
あらぬ誤解を受けるところだった。
「エヒムきゅんのパンツを狙っておいてよくそんな口がきけるわね」
「それはあんただ!?」
この危険な女性には一刻も早くお帰り願いたいのだが、どうしたら帰ってくれるのだろう。
一つ確実な方法があるが、エヒムの尊厳的なものがすり減ってしまうので却下だ。
今はただの農民見習いだが、元聖騎士団員としてエヒムを守らねばという本能が動く。
「エヒムは貴様に渡さん!」
「なんですって、この泥棒猫が!」
「二人とも黙りなさい」
おかしな事を口走る二人に凛とした声がかけられる。
あと得体の知れない液体も。
「あ、アキータさん」
「ダメよ、エヒム君。ああいう頭のおかしな連中のいるところに一人で行っちゃ」
「え、あ、はい・・・・・・」
事の成り行きについていけないエヒムだが、とりあえずは助かった。
助かっていないのは謎の液体をかぶった二人だけである。
「大丈夫、致死率五十パーセントの毒だから、どちらかは生き残るわ。たぶん」
慌てたエヒムが二人に解毒剤を使って二人とも事なきを得たのであった。
読んでくださるみなさん、いつもありがとうございます。
まさかまさかの、あと少しで産まれるというのに逆子になっていた!
このままだと帝王切開で今月中に出産だそうです……




