ギルドマスターの元同僚は変な人
エヒム(10)
肩口まで伸ばした金髪に青い目。美少女と見まごうばかりの美少年。
農家の次男坊で年齢に似つかわしくない知性と農業スキルを持つ。
アモリン(24)
桃色の髪を後ろで髪留めを使ってまとめている。
占い師。
エロいお姉さん。もはや変態。
ティーヴァ(32)
元聖騎士団員。
くすんだ金髪に鋭い茶色の目。
その戦闘力は並外れており、明確な序列はないが聖騎士団の中でも三本の指に入っていた実力者。
「んぬぉおおお!」
がきっ!
「ぬがぁあああ!?」
下級ギルド員、ティーヴァが思い切り振りかぶった鍬を大地に突き立てると、ものの見事に柄が折れた。
悪い事には折れた先が跳ね返ってティーヴァの頬を掠めていく。
鍬の刃がティーヴァの頬に赤い筋を作った。
「何故だ・・・・・・」
ただ振り下ろすだけの作業のはずだった。
簡単な任務のはずだ。
何も一人で千人の兵士と戦わなければならないわけではない。
むしろ、千人の兵と戦った時はボコボコにしてやった。
「農業・・・・・・なんて恐ろしい敵なんだ」
不毛の大地を見つめてティーヴァは緊張で汗が一筋流れる。
戦場ですらなかなかない事だった。
その自分が緊張している?
ましてやこれは恐怖か?
未知の敵にティーヴァは身を硬くする。
「あの~・・・・・・力みすぎです。ちゃんと重力を利用してリラックスして振ってください」
見かねたエヒムが忠告する。
「お、おう、わかったぜ嬢ちゃん」
「あの~・・・・・・僕、男です」
「っ!?」
精神的に雷を打たれた気がした。
ティーヴァの手から折れた鍬の柄が滑り落ち、乾いた音を立てる。
生まれたての子ジカくらい全身がプルプルしている。
「バカな・・・・・・こんな美少女が男だなんて・・・・・・」
世の理不尽というものをいろいろと味わってきたティーヴァだが、今回の衝撃は最大級だった。
過去に出会った女性を思い返して、もしやあの女性もあの美女もあの少女も・・・・・・と疑心暗鬼の状態に陥る。
脂汗で顔中がすごいことになっている。
「ティーヴァさん・・・・・・?」
「はっ!? どうした、嬢・・・坊主!? 俺はどうもしてないぞ!? うん、すごいことになってない!」
あまりの動揺ぶりに、言っている事が支離滅裂になっている。
なぜ彼は腕立て伏せをしているのだろう。
エヒムは心の中で誰か助けて欲しいと思ったが、残念ながらここにはエヒムとティーヴァしかいない。
「あ、あの~、何で腕立て伏せしてるんですか? 汗がすごいですけど、体調悪いならやめたほうが・・・・・・」
「ふひっ!?」
ふひ・・・・・・?
「そそそ、そうだな! スクワットにしたほうがみんなも喜ぶ!」
みんなって誰だろうか。
少なくともエヒムはそこに入っていない。
どうしよう、とても付き合いづらい人だ。
救世主は意外なところからやってる。
「誰だ、私のエヒムきゅんをいじめるやつはぁあああ!?」
桃髪の占い師にしてパンツ狂信者アモリンの登場である。
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仕事が繁忙期かつ出産間近となりたてこんでおります。
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