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ギルドマスターを襲う聖騎士団の男⑧

イバラーク(32)

農業ギルドのギルドマスター。

赤みがかった短い髪で身長が高くガタイも良いので農業ギルドより戦士ギルドのギルドマスターのほうがしっくりくる。

農業以外は何でも器用にこなす。


ティーヴァ(32)

元聖騎士団員。

くすんだ金髪に鋭い茶色の目。

その戦闘力は並外れており、明確な序列はないが聖騎士団の中でも三本の指に入っていた実力者。

「んぅ・・・・・?」


 ティーヴァが目を開けると見知らぬ天井が見えた。


 いや、良く見れば見知らぬというわけでもない。


 ただ、見慣れぬ天井。


 確かここは。


「目ぇ覚めたか」


「俺は・・・・・・負けたのか」


 正確にはイバラークに負けたわけではないが。


 ややこしいので適当に流しておこう。


「ま、そんなところだ」


「そうか・・・・・・」


 灯りがついているので明るいが、外はもう暗い。


 農業ギルドにはティーヴァとイバラークの二人だけ。


「なぁ、イーヴルアーク」


「・・・・・・」


「俺には未だに半信半疑なんだ。お前があの()()()()()()()()()()なんて」


「・・・・・・」


「あの日、俺は遠目にお前が山脈の上から燃え盛る大地を見下ろしていたのを見た。実際にあの大災害を引き起こすだけの力を持っているのも知っている。だが、お前がそんな事をするような奴じゃない事も知っている」


「・・・・・・そうだ。あの大災害は俺が引き起こした」


 いっそすがる様な目のティーヴァに、イバラークの無慈悲な答えが返る。


 ティーヴァは痛みをこらえるようにぎゅっと目をつぶる。


 ゆっくり目を開けたティーヴァは横目でイバラークを見る。


「何があった? 俺は真実が知りたい」


「・・・・・・俺の方が先にハーポーンに特使として出て行ったから、俺がハーポーンに行っていたのは知っているな?」


「ああ」


 友好国であるハーポーンに助力を求める為に当時のイバラークはムルを離れた。


 重要な役目であるため、可能な限り上の立場の人間が行くべきではあったが、聖騎士団の団長は戦争状態にあったムルを離れるわけにはいかず、副団長であるイバラークが向かう事になった。


 しかし、それこそが侵攻国ノゴリアの思惑であった。


 聖騎士団の最大戦力であるイバラークがいなくなったのを見計らってノゴリアはムルに全軍突撃した。


 ティーヴァはじりじりと押されていくムルの聖騎士団を離れ、北の大国に助力を求めに向かった。


 すぐにイバラークがハーポーンの援助を得て、ノゴリアを牽制してくれると思っていた。


 そして膠着状態になった所を、北の大国を説き伏せてノゴリアに牽制してもらい、ノゴリアを封じるはずだった。


 だが、実際はイバラークがハーポーンをすぐに動かす事ができなかった。


 ノゴリアの策略で、同時にハーポーンには北の大国の軍が押し寄せてきていた。


 ただし、本格的に攻撃するのではなく、押しては引いての時間稼ぎのような戦い方。


 そうは言ってもその軍をどうにかしなければハーポーンも援軍を出せない。


 やむを得ず、イバラークもその軍への応戦を余儀なくされた。


 そして、程なく知った祖国の滅亡。


 見せしめに全国民全てを虐殺したという。


 影では北の大国が糸を引いていたという話もあった。


「北の大国はその知らせとともに鮮やかな手並みで引いていった。俺は我を忘れた。ムルにたどり着いた時には正しく血の海となっていた。異様な光景だった・・・・・・ノゴリアの兵達も生気を失った顔で呆然としていた。戦争とはいえ、命を奪い続ける事がどれほど精神を削っていくか・・・・・・」


「・・・・・・」


「まともとは言えないノゴリアの兵が、よくわからない叫び声を上げながら既に息絶えた子供の亡骸に剣を突きたてているのを見て、俺は・・・・・・」


 イバラークはその続きを口にはしなかったが、ティーヴァにはわかった。


 今の自分と同じだったのだろう。


 復讐に駆られ、聖騎士団最強の男が怒りと裁きをぶつけたのだ。


 怒りに燃える炎は全てを焦がし、裁きの鉄鎚と呼ぶにはあまりにも巨大な隕石を呼び、滅びた国と滅ぼした国の二つを無に帰した。


「そうか・・・・・・すまなかった、イーヴルアーク」

読んでくださる皆さん、いつもありがとうございます。


やっとこの話というか、イバラークの過去を書ける日が来ました。

ちゃんと主人公らしい(?)人に歴史あり! っていう部分を書けました。

それにちゃんとすごい人なんだよ、というのを少しわかってもらえたかな、と。

でも、もう少し続くのでお付き合いのほどよろしくお願いします!

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