#4 見た目が全てではない事の証明
僕は新学期早々透月と話しているので、女子とは打ち解けている。しかし、男子は未だに話していない人が多く、特にこのクラスには問題児がいる。男子で唯一話すのは、林夏樹という変態だ。
「でもさー、桐生初日から女子と話すなんてな。しかも透月サンだろ?…可愛いからって、お前狙ってるだろ?一緒に学級委員やるし」
「いや、全然そんなんじゃないって!」
二人で透月の方をチラッと見たら睨まれた。うわ、怖い。あ、僕は透月と学級委員やる事になりました。これ本当。
「あ、このクラス武田って奴いんじゃん?去年暴力沙汰起こしてるみたいだからヤバいよな。お前弱いから危ねえぞ。」
そう、このクラスの問題児が彼。あの話は有名だから、皆話しかけない。それはそれで良くないと思うけど…
「はい、六時間目は学活です。今日は、夏休みにある林間学校の班決めをします。男女それぞれ三人ずつで、部屋もその三人で使います。では、始めて下さい。」
女子は、透月と事前に話しているので当てがある。女子はある程度グループがあるみたいだけど、男子はそうでもない。
「サンキュ!ただ、俺らの場合一人足りないんだよなぁ…」
「僕達残されてるもんね…」
結局殆どの男子が決まってしまって、僕と夏樹、そして武田君だけが残った。よって、強制的に組む事になった。また透月達も残っていてくれたので、班が全て決まった。
「えっと…武田君、宜しく」
「あー、宜しくねー。水篠、だっけ?話した事ないけど。今日の放課後、学校近くの空き地で話さない?帰ってからで。」
どうしよう…行った方が良いよね?
「桐生、気を付けろよ?彼処俺んちの隣だけど。」
「うん、ありがとう。じゃ、また明日」
帰ってから憂鬱だった。結局透月も来る事になったけど。
「なんか怖いなぁ…」
「あ、水篠じゃん。なんか、孤立してる同士で話すかなって。」
話してみたら、意外に親しみやすかった。でも、あの話を聞いたから怖いなぁ…
「…でさ、俺の去年の話って知ってる?」
「あ、うん…噂で聞いてるけど」
「噂かぁ〜。じゃ詳しくは知らないんだね。あん時さ、知り合いが体罰喰らってたの。だから、先生に文句言いに行っただけなんだ。でもそれがあっさりバレて、停学とか…ありえねーよ。今時体罰は駄目っつーのに。」
それは先生が悪いかもね。過激すぎたんだろうけど…
「秘密といえばさ、水篠も何かあんじゃないの?透月と初日から普通に話せるって、絶対何かあるって。能力者だったりすんの?…喧嘩とか、強い感じ?」
どうしよう、バレてる…怖いって!
「お、そうなのかな。…え、何だよあれ」
暗くなったと思ったら、黒い霊がいくつか集まってきて襲ってきた。しかも、うち一体は武田君に取り憑いてしまった!
「武田、しっかり!」
「何が起こ…桐生、彼奴ら怨霊よ。…え、武田!?」
「行くよ。『エクスプロート』」
空気だからか、怨霊にも効いた。あと、怨霊の攻撃はかわすのが難しい。霊だからかな?
「あぁもう面倒くさい!『千里眼の裁き』」
今のは即死魔法…?一瞬でほぼ消滅して、残り二体。
「『ダブルヒートエアーガン』」
『ヒートエアーガン』は熱を溜める必要があるので、一度に出せるのはニ発まで。これ不便。でも何とか消滅させられた。
「はぁ、終わった…」
「え、二人共何…?ちょ、どういう状況?水篠が爆発させてたり、透月が光使ってたり…」
「あれ、武田から何か…それより記憶をね」
とりあえず、雑貨屋に行った。
「…という事だから、彼の記憶を消してほしいの。」
「それなら簡単ですよ。今日中には終わらせておくので、そろそろ帰った方が良いと思います。暗いですし。」
あ…もうこんな時間だ。
「あ、待って。彼奴、怨霊に憑かれちゃってて…」
「私も始めて見たわ!」
「ふむ…敵のボスは異世界の者である可能性が高いですね。ただ、それも少し無理がある話ですね。」
え、どういう事?
「実は僕達三兄弟は霊界の住民なんです。他の異世界では多くの人妖がやられました。いくつか異世界はあるのですが、この世界よりは被害が大きいのです。しかも、怨霊は厄介者ですので、手を組む者がいる事すら不思議です」
「そう…ありがとう。」
学校の後だから、暗くなっていた。僕達は帰る事にした。
「ふぅ…あ、桐生達何話してたの?」
「話しやすかったから、色々と話したよ。…本人曰く、去年の暴力沙汰は知り合いを助ける為だったんだって。」
「へぇ、根は良い人なのね。なら班も安心できるわね。」
班は大丈夫そうだけど、そもそも行きたくないんだよな…でも班員の心配はなくなって良かった。