#16 墓場のパーティー
秋は涼しいから好きだ。だけど、今年は生憎と楽しめなさそう。九月は彼岸があるので、墓参りに行く。ただ、死体にも怨霊は憑くと聞いたので、ちょっと怖い。
「…つー訳で、もう九月後半だし、墓参り行った方がいいと思うぜ。」
「そうね、私も…両親のお墓行こうかなって思ってたの。セイレンも墓はあるし、千歳も死体が残ってるし…」
「あたしの事はいいから!ほら、くよくよしないで。」
「うん、俺達も行くよ」
透月、一人暮らしって聞いたけど…両親いないのかもな…あと普通に考えて夏樹も一人暮らしだろうな。
「でも透月家の墓って行った事ないですね…」
「まぁね。うちのはそこらの墓場じゃないし。学校裏の小道にあるわ。」
僕達は透月に連れられ、人気のない小道を進んでいく。唯世や千歳も一緒だ。
「透月…本当にこの先にあるの?」
「えぇ。私は何度も行ってるから慣れてるわ。奥の方に少し開けた所があるんだけど…彼処はちょっと不気味な話があって…」
「それどんな話?」
「彼処は昔何十人も処刑された所らしいの。しかも、死体も撤去された訳じゃないのよ。」
「あ、俺聞いた事あるよ。ほら、バット持ってきた」
怖っ!そんな所にあるの…?岳も用意周到だな…。
「…そこなら怨霊も多そうだな」
「ちょ、困るわよ!知らないで死体置いちゃってたのよ!」
「えっ、千歳…」
何ですと!?大丈夫なの?
道幅が広くなり、もうすぐ着くみたいだ。
「もうすぐ着くわ。落ち着こう…あれ、なんか臭わない?」
「うん、なんかごみというか…血の臭いが…」
「…気のせいよね、そうよね!とりあえず進みましょう!」
少し進むと墓場に着いた。
「久しぶりね、お父さん、お母さん…今日は友達も一緒に来てるの。今、凄く楽しいです。…私達は元気に過ごしてます。」
僕は自分の親の墓が何処か知らない。見たところ、定期的に来ているらしい。だから、ちょっと羨ましい。
お供え物を置いたり、花瓶に花を刺したり…諸々を終えて帰ろうとした時だった。
「…唸り声が聞こえるわね」
「少し奥なのね。行きましょう。」
しかし、奥に進むと悲惨な光景が広がっていた。
「沢山の死体が動いてるわ!それに怨霊が憑いてる…」
「え…あれってもしかして…?」
そう…死体の中に、千歳の死体もあった。
「あれ、千歳ここにいますよね?ええと…」
「唯世、あんたがパニックでどうするの…あれ、技が出ない…」
千歳だけ技が出せないみたいだ。
「同じ人物が一つの空間に同時に存在する事は出来ないよね。同様に、同じ人の死体と魂は同時に戦えないのかな。」
「じゃ、あたしは不参加ね。岳は?」
「いや、死体なら俺でも大丈夫。持ってきたバット使うよ」
「『サイクルフレア』」
熱い!今9月だよね?いや、自分の技のせいだけど。
「素手は危ないから武器が使えねぇな。『フリーズシューター』」
「普通にこいつら危ないね。」
「えぇ、特に生者が噛まれたら感染しそうね」
唯世、いつもならもう攻撃してるのに…あれ、帰ったのかな?
「何、彼奴いないの⁉まぁ、体がないから狙われはしないだろうし…」
「『ライトニング』!…ふぅ、落ち着いたわね」
死体の動きは止まった。勝ったのかな?でも片付けが…
「あぁ、私の死体も燃え尽きてる…」
「んな事言ってる場合じゃないでしょ。消滅技使うわよ」
本当に透月は死体を消滅させた。なんか、凄い冷淡…
「でも何で唯世はどっか行ったんだろう…」
何となく、何か隠してる気もするな…
甘蜜です。電車乗り過ごして若干焦ってました。
今回はちょっと…死体と戦ってましたねぇ…(遠い目)。死体というか、ゾンビが出てくるものって多いですよね。リアルではお盆すら来てませんが。
さて、このシリーズの一章(二章以降も出すつもりです)も、もう後半です。あの人の裏の顔は次の次の話で少し触れます。次回は学校行事ですよー!