#13 十五と妖気な森
もう秋になり始めて、少し肌寒い。今、墓場の枯れ葉の掃除を手伝わされています。
「本当助かるわー。ありがとうね、面倒臭くてやってなかったの」
「あー、私も面倒臭いよー」
「僕も正直…」
「んもう、貴方達甘いわ!」
筆花がやけにやる気だ。そりゃそうか、筆花は掃除好きだからな…
「墓も綺麗にしておかないと。死者への気持ちを表すのだし。」
「いや、この墓私のなんだけど。私が気にしないから別に良いんじゃ…」
「セイレン、そんな事言わないの!ほら、服が汚れるでしょ!」
着物の心配なら自分にしたら…?
「筆花ー、奥の方とか溜まってるぞ。」
「はーい…貴方達進まな過ぎよ、私奥行ってくるわね。」
筆花は一人で奥に進んでしまった。
「あらあら、単独行動は危ないって言うじゃないの。」
ホラゲかよ!でも最近敵側の攻撃が増した気が…
「というかこの墓って…」
「レン、昔の話したら?今の子は知らないみたいだし。」
「そうね。桐生君、よく聞いて。とある昔話だけど…昔、その地域は川の氾濫によく見舞われていました。人々はそれを水神様の怒りのせいだと考え、鎮める為には十五歳の少女を生贄にする必要があると知りました。そして、くじで床屋の矢野家の娘が選ばれ、その娘は川に沈められて氾濫は鎮まりました。」
え、急に昔話?
「これは『十五の森』と呼ばれる伝説で、この娘というのが生前の私。…ほいっ、昔の私を出来るだけ再現出来てる筈よ。というか、こっちの方が楽ね。私の生前の名前は矢野蓮。」
そうなんだ…。生前のセイレン…蓮は綺麗だ。水色の着物は青い花びらの模様が散られている。
「もうこのままでいいや。髪は青い方にするけど、人魚姿って疲れるのよねー…」
「レンは相変わらず雑だねー」
「はは…掃除再開しよ…」
「あ、そうだねー。筆花怒ると怖いし」
大分時間が経った。普通なら一人でやってたら疲れて戻ってくるだろうに…
「筆花遅くないか?…あれ、彼奴まさか一人で?」
「一人の方が早いとか行って…」
「馬鹿、武田って人間の件もあったんだし、危ないぞ。まぁ行かせた私も悪いけど…筆花の運勢悪いし」
どうしよう、それまずいって!
「よし、お前ら三人で行ってこい。」
「あれ、ナルシェは?」
「こっちに一人はいないと危ないし…最近、鈍ってる気がするんだ。今までこんな事なかった気がするし…」
「ん、鈍ってるって…」
「あー、いや、何でもない。気のせいかもな。でも頼む、三人で行ってくれ。」
三人で向かったが、セイレンは水場以外はあまり強くないらしい。
「あまり…って言うけど、こいつ私より強いよー。」
「いや…聞いた所だと叶世も憑かれた事あるんでしょ?その時は…」
雑談もいいけど、それどころじゃないでしょ!
「あら、どうしたの?」
「普通これだけ一人でやってたら疲れて戻ってくると思って…」
「でも来てくれて良かったわ。」
何だろう、いつもの筆花じゃない。振る舞いはいつも通りだけど、オーラも違う。
「私、何だか殺りたくなってきたの」
やっぱり…!筆花は怨霊に憑かれているみたいだ。今回は能力者相手だし、叶世の時大変だったしな…
「え、こういう事なの!?じゃやるか。『投げ槍フォーク』」
これ、いつも最初に使うよな…
「『ファイアーボール』」
「あら、私と対照的な能力なのねぇ。『ウォーターキャノン』」
す、水砲?僕泳ぎ苦手だし、巻き込まれたら死ぬ…
「あら、そんなもんだっけ?『花吹雪』」
元から僕より強いけど、以前と強さは変わってないみたいだ。少し安心した…ってそうはいかないな。
「『エナジーアブソーブ』」
「季節外れだけど…『打ち上げ花火』」
これ夏に作ったやつけど…汚い花火だなー。
「あら、危ない技ね。じゃ私も遠慮なく…『大津波』」
うわ、溺れる!って何で僕らも巻き込まれてんの!?あっ、筆花の着物が…
「あら、服が濡れたじゃない。『一筆舞』」
うわぁ!濡れてて動きづらいって!
「いよーし、私が締めるわ。『十五の森』」
うわ、格好いいけど怖い!おかげで怨霊も消えた。
「…あら、何があったの?…あ、憑かれちゃったんだっけ…」
「筆花、ごめん。サボったりして」
「いいのよ。あの後は真面目にやってたんでしょ?それに、助けてくれたんだし。ありがとう」
筆花は妖怪化した人間だし、細かいけど…純粋で良い人だ。
「というか濡れてるけど、誰なの?」
あっ…どんまい、セイレン。
「セイレンがやりましたー。」
「いや、あの、戦闘で水系専門だから…」
「張り付いて気持ち悪いんだけど。お仕置き確定ね」
「ひー、ごめんなさい!」
あーぁ…
「そうか、憑かれてたのか…私らも注意しないとな。あ、一つ言ってもいいか?憑かれる対象は“体が残ってる者”だと思うんだ。だから人とは限らない。筆花の場合は妖怪化した人間だしな。体が残ってれば何でもいい。どういう事か分かるか?」
「姉貴、それってもしかして…」
「そう、死体に憑く事もあるって事だ。こちら側でも一人いるだろ?そういう奴」
えーと…あっ、千歳は死体を取ってあるって…
「そう、千歳だ。彼奴自分が死者だからって油断するかもだしな。賢いけどそういう所欠けてるから注意しないと。死体が動くのはかなり厄介だからな。墓場とかは本当に危険だ」
「うわ、それって某ゾンビ映画とかにあるやつじゃん」
ノメア、あれはもっと大規模だよ…でも怖いな、死体が動くって。
どうも、杏歌です。投稿日は私の学校がテレビに映った日です。まだ見てませんが多分私も映ってます。…あれ、誰か…
武「作者ー、なんで俺の下の名前出てないの?本編で出さなきゃじゃん。」
「あれ、武田君。ごめん、初期設定ではちょっとだけ出る事になってたから、名前までは考えてないや」
武「ふーん…まぁいいや。それよりさ、俺の秘密とかっていつ出すの?次回出してほしいんだけど」
「はいはい…つー事で、次回は彼の秘密にも触れます。まぁ桐生回ですけどね。」
武「宜しくー」