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お金の無い科学者はVRMMOの知力スキルに頼って研究するようです。  作者: お腹が減った人X
1章 始まりの街・冒険の始まり
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5話:いきなりの逃亡劇

「デブ!!後ろ!!」


「分かってるっすよ!」


そう言いながら振り返りざまに薙ぎ払った大剣が芋虫型のモンスターを叩き潰す。

紫色の体液が宙を舞い、その気色悪い光景にアカネは思わず目を瞑った。


現在アカネとテオは始まりの町近くの草原で二人で虫狩りの真っただ中。

何故グロテスクな虫をひたすらに買っているのかと言うと、テオの「虫の体液は解毒薬の素材になるから、競売で高く売れる」と言う情報からだ。


「10体倒してやっとレベル2…にしてもホントに気持ち悪いな」


「さっきから俺ばっかにやらせて何なんすかね?アカネさんも戦ってくださいよ」


少し離れたところから体育座りをしながら、自分の戦いを眺めるだけのアカネにテオはいら立ちを隠せない。


「いやいや、私の杖だし攻撃手段ないし」


「いやいやじゃなくて杖で殴ればいいじゃないっすか。攻撃力にも少し補正付いてるでしょ?」


「いやいやいや、杖でこんな奴等触るとかマジ無理。あり得ない」


アカネは虫が苦手だ。

だから、ドイツにいた時もたまに話をしたバイオニクスの研究者でゴキブリの研究をしているなんて人間には常日頃から近寄らないようにしていたし、そのせいで色々と噂が立ってしまったりしたことさえあったのだ。


「マジ無理、じゃないでしょ、そもそもアカネさんそのステータス何とかしなきゃいけないでしょ?自分で倒さないと」


「いーやーだー、と言っているだろー」


「ゴネても無駄ですよ」


「はぁ、仕方ない。私が一発触れて後はお前がやってくれ」


「まぁそれでも経験値は入りますけど」


アカネの提案を渋々承諾して金髪のイケメンアバターが剣をしまう。

付けている装備は皮で出来た初期装備ではあるが、その大柄なアバターのせいか何処となくたくましく見える。

まぁ初期装備にステータス補正はないから完全に見た目だけなんだけど。


「じゃあ私も動くかな」


そういってアカネが腰を上げようとしたその時、突然足元の土が盛り上がり一体の芋虫が姿を現す。


「ぎゃああああ!!!」


隊長60センチはあろうかと言う巨大な芋虫の突然の登場に、思わずしりもちをつくアカネ。

さっきまでの冷静さはどこへやら、テオの事など気にも留めず一目散に走りだした。


「まってください、そっちは断崖絶壁っすよ!」


慌てて引き留めようとするが、テオの事などやはり気にも留めず一目散に草原を走り抜ける。

そして、さらに悪いことに、余りにも虫が嫌いだったせいかアカネは目を閉じて全力疾走していたのだ。


その結果は言うまでもないだろう。

広大な大地にパックリと口を開いた渓谷の存在にも気づかず、そのまま走り抜けようとしたアカネの体は数メートルの空中歩行を試みた挙句、流石に断念したのか谷底向けて真っ逆さま。


『スキル:落下耐性Iを獲得しました(条件:100メートル以上自由落下)』


申し訳程度に新しいスキルが習得されるがスキルレベルIでは全く役に立たず、落下速度はとどまろうとしてくれない。


9.8の重力加速度によって為すすべなく自由を奪われた体は、そのまま一気に速度を上げて切り立った岩で敷き詰められた地底に突撃する。

そう思われたのだが、谷底に到達したときにアカネが感じたのは固い地面の感触などではなくもっと他の物であった。


何かに優しく包み込まれるような感覚がアカネの体を伝わっていく。

その感触はあまりにも優しくて、ひょっとしたら誰かが助けてくれたのだろうか?と言うような考えが一瞬脳裏をよぎった。


落下が終わり、完全に静止したのを確認して、アカネは恐る恐る瞼を開ける。

開かれた瞼によって覆われていた黒色の瞳の先には、白馬の王子様の姿が...


あるわけなかった。


「えっ、嘘でしょ?」


目の前には赤く巨大な球体の目をし鋭利な刃を口元で嚙合わせるベリべリビックな蜘蛛が一体。

とても悲しい事ではあるが、アカネはどうやらこの渓谷でも食物連鎖のトップに君臨するようなモンスターに出くわしてしまったらしかった。


ほら、その証拠にアカネ以外にも熊やら虎やらがこの巨蜘蛛の巣に捕らえられている。


「まっ待って、逃げないと」


アカネは涙目になりながら必死で体を動かそうとするが粘着性の糸で捕えられた体は殆ど全く動かない。

動くとすれば手の指が辛うじて動くくらいだ。


だんだんと、近寄ってくる蜘蛛の刃が最速デスペナルティー記録更新のカウントダウンを告げてくる。


「何か魔法、魔法があれば...」


アカネは懇願する。何か、何かないのかと、そんな思いでメニューを開いたアカネは今まで無視していたメールボックスに赤く『!』と表示されているのに気が付いて、わずかに動く指を操作することでそのメールを開封した。


<魔法式構築I解放に対するプレゼント:コマンドクリスタル『ファイア』(効果:放火する)>


コマンドクリスタル、それは魔法式構築やオリジナルスキル構築の際に必要なコマンドのこと。

だがそんなことまだ知らないアカネは、藁にもすがる思いで手に入れたばかりにコマンドクリスタルの名前を口走った。


「ファイア!」


だが、何も起きはしない。


「ファイア!」


「ファイア!」


「ファイア!」


何度も何度もそう叫ぶが現実が変わることは無い。


『スキル:走馬燈を習得しました(条件:知力40以上且つ絶体絶命状態でのシステム的な操作ミス10回)』


そしてアカネはようやく気付く。

魔法は魔法式を組み立てなければ使えないという、ひどく初歩的な間違えにようやく気付いたのだ。


「魔法式構築!」


そう唱えたアカネの目の前に青色の画面が表示される。

昔、プログラムを触りだす前に遊んだ簡易的なスクリプト構築ソフトによく似た画面だ。


分かる


アカネはたった一つしか持っていないコマンドを配置して、決定を押す。

もう蜘蛛の赤い眼球は目の前に据えられていた。


「ファイア!!」


瞬間、周囲を炎が覆いつくし、アカネを捕らえていた蜘蛛の糸が燃える。

燃えて燃えて燃え尽きて、支えを失ったアカネはそのまま地面へ落下する。


「逃げなきゃ」


落下耐性Iによってノーダメージで着地したアカネは必死で足を動かす。

いくらゲームの中とは言え、死にたくないものは死にたくないのだ。


大蜘蛛は突然の事に驚いたようで、慌てて毒液をまき散らし巣の消化活動をしようとしているが、可燃性の巣で燃え広がった炎は中々消えてくれはしない。


今しか逃げられる時はない。


そう思って、アカネは走り出す。

一直線な渓谷を逸れ入り組んだ洞窟に足を踏み入れたアカネは復も周囲の確認をせずに走り続けた。

そして数分後、今度はその甲斐あってか何とか蜘蛛から逃げ切ることに成功したのだ。


「ここ、どこ?」


何とも間抜けな発言をするが、どうもこうも言ってられないのでアカネは洞窟の探索を開始する。

実を言うと、その洞窟は未だ誰も到達していない超上級ダンジョンだったりするのだが、そんな事知らないアカネはズケズケとダンジョンを進んでいった。


「にしても暗いな」


通常洞窟を探索する際必須となる暗視スキルを持たないアカネがそう思う。


それでもだんだん目が暗闇に慣れてきたおかげで辛うじて周りの様子を確認すると、アカネは洞窟の壁にもたれかかるように腰を下ろし一つ休憩をすることにした。


「メニュー」


とりあえず、現状把握の一環としてメニュー画面を表示して心の落ち着きを図る。

まだまだ見慣れぬものではあるが、それでもほとんど何も見えない真っ暗闇と何度か見たことのある青白い画面とならメニュー画面の方が断然彼女に落ち着きを与えてくれるのは言うまでもないだろう。


「ほんとに疲れた...何あの蜘蛛」


色々と愚痴を言いつつもアカネは一つ一つ情報を整理する。

まず、スキルから。


落下耐性I:落下ダメージを軽減する。


走馬燈:緊急時、思考加速Xの効果(思考加速X:1日に30分まで自身の知覚時間が10倍に引き伸ばされる)、オート起動


マジで?


マジである。

まだ誰も知らないスキルの一つ走馬燈は高確率で死亡が予測される条件下で何とかして生き残るための救済スキルであり、さっき土壇場でアカネが大蜘蛛に食われようとしているにも関わらず、魔法式を組み立てて発動なんて芸当が出来たのはこのスキルのお陰だった。


「ホントに思考加速装置の代わりになるじゃないか!もっと知力上げないとな」


テオにはまた怒られるだろうが、これからも知力を強化し続けることを心に決め、アカネは次に魔法の欄を確認する。


魔法ファイア:『炎』を出す(消費MP4)


先ほど助けられた魔法だが、現在アカネの最大MPは13.決して無駄撃ちは出来ない事を再認識したアカネは、最後にテオにメッセージを飛ばしておくことにする。


<|ω・`)ノ ヤァ クソブタ元気か?>


そんなタイトルで書き始めるが、その内容は見出しと違って真剣そのもの。

現在の状況の細かな説明と、これからどうすればいいかと言う事を尋ねる文だ。


「これで送信」


しばらくして『送信しました』と言う通知が脳内に響き渡る。

そしてとうとう何もすることの無くなったアカネは返信が来るまでその場で待機することにした。


メニューを閉じると同時に、アカネの周囲が再び暗闇で覆われる。

目に見える物は何もなく、ただ何処かで水滴の滴る音が度々耳に届くだけの世界。

暗いところが嫌いと言う訳では無いが、やはり一人と言うのは寂しいもので、それでもあと少しとアカネはテオからの返信を待ちわびた。


ピロン


軽快な機械音が鳴り響き、アカネの不安そうな顔がほんの少し明るくなる。

しかし、幸か不幸かその通知はテオからの返信の通知などではなかった。


『スキル:暗視Iを習得しました(習得条件:暗闇の中で30分待機)』


そんな表示があったかと思うと、アカネの視界が一気に明るくなる。

距離にして前方10メートルくらいまでが何不自由なく見渡せるようになり、アカネは期待を裏切られた形で安心感を覚えた。


これなら脱出できるんじゃないか?


暗視スキルを得たアカネはテオからの返事を待つのを止め、とうとう谷底からの脱出を試みることにしたのだった。





魔法作成についての補足


魔法の作成はコマンドクリスタルと呼ばれる命令文を組み合わせて行われる。


例えば2つのコマンド「ファイア(放火)」と「前方に」を組み合わせて、前方に炎を出すことができる。


またコマンドクリスタルにはそれぞれコストが設定されており、使用したコマンドのコストの合計値が自身の知力以下になるように魔法を作る必要がある。


さらに、作り上げた魔法を使用するにはそのコストの合計値以上の魔法力が必要であり、使用の際に商品するMPもそのコストと等しい。


一度手に入れたコマンドクリスタルは何度でも繰り返し使うことができ、知力の許す限り一つの魔法に同じコマンドを幾つも組み込むことが可能。


魔法作成の費用は一部のコマンドを除き必要ない。



分かりにくかったらすみません。






5/19 誤字脱字を修正しました。

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