3話:魔法は使えない?
1日目から100件以上のアクセスありがとうございました。
後、言い忘れていたのですが、2,3日に一度投稿出来ればなと思っております。
宜しくお願いします。
「あ、あのですね、アカネさん。チュートリアルはちゃんと見たっすか?」
「いや、飛ばした」
「はぁ、やっぱり...」
イケメンと化したデブであるテオはその返事を聞いて力なく肩を落とす。
「あー、この世界に魔法とかスキルがあるのは知ってもすよね?」
「ああ、さっき色々とスキルを習得したからな」
「ええ、そうです。それでこの世界の魔法やスキルっていうのはですね、あらかじめ運営が作っている物の他に、新しく自分で作ることが出来るんですよ」
「自分で作る?」
「そうです、『燃える』とか『飛ぶ』とかそう言うコマンドを組み合わせて作るんですけど、その時に必要になるのが知力と器用なんですよ。ほら、知力が6を超えた時に魔法式構築のスキルを習得したでしょ?」
テオは普通チュートリアルで聞いている筈の事を一から説明し始める。
どれもこれも、このゲームをやる上で非常に重要な情報だ。
「それで、知力とか器用の値は、直接的には新しく生み出すことのできる魔法やスキルの容量なんですよ。
例えば『前方』、『一人』、『に向けて』、『炎を』、『放つ』って魔法を作るときは2+2+2+5+4で15の知力が必要で、これがスキルだったら器用さが必要になるんです」
「なるほど、それで何が問題なんだ?」
「だからですね、例えば知力10の魔法を作ったとするじゃないですか」
「ほう」
「そしたら、その魔法を使うのに、魔力が10以上必要で、MPも10必要なんっすよ」
「あー完全に理解した。じゃあ私は魔法を新しく作ってもそれを使えないのね」
「そういうことっす」
中々とんでもないことを仕出かしてしまったらしいと、薄々か感じ始めるアカネだが、こうなってしまえば仕方あるまい。
魔力が増える武器を買えばいいのだ。
「じゃあ私は魔法武器を買って来れば良いわけか、じゃあ買ってくる」
「ちょっ、まってくださいよ!」
見る見るうちに人込みに消えていくアカネの姿をテオはすぐに見失う。
なぜ引き留めたのかと言えば、もっと他にも話さなければいけない事があったからなのだが、もう遅い。
テオは深くため息をつきながら、ただただアカネが早まったマネをしないように祈るだけだった。
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「ふう、これでいいか」
アカネは満足げにそう呟くと、初期の持ち金である1500ゴールドの内1480ゴールドを使って、その店で一番高い魔法の杖を購入する。
まだ始まりの町と言うだけあってか、NPCによって販売されている武器はどれも初期の持ち金で余裕で買えたのだが、杖だけ異様に値が張ったのでもう残金は20ゴールドしかなくなっている。
これは薬草を数個買うので精一杯なくらいの金額だ。
さて装備しなきゃいけないんだったか。
アカネはステータス画面を色々いじって買ったばかりの杖を装備する。
すると、アカネの背中に光の粒子が集結し大きな木の杖が形成された。
「ステータス」
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プレイヤー:アカネ
Lv:1
HP:11
MP:13
攻撃力:4
魔法力:0+24
物防 :0
魔防 :0
器用 :0
知力 :42
敏捷 :0
スキル:魔法式構築IV
装備 :武器 初級魔法使いの杖
頭 -
胴 -
腕 -
腰 -
足 -
アクセ ー
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「これで良し」
実際良い訳が無いのだが、とても満足げに頷いて明音は店を出る。
そして、店を出た先には可愛げに微笑むアカネとは対照的に寝不足でやつれたような顔をしたテオの姿があった。
「待たせたな、デブ。装備を買ってきた」
「ゲーム内ではデブってじゃなくてテオって呼んでくださいよ。ゲーム内でむやみやたらに現実の事を話すのはタブーなんっすよ?」
はいはいと、いつもの様に聞き流すアカネを心配しながらテオは満を持して、アカネに聞くべきことを尋ねる。
「それで何買ったんすか?」
「初級魔法使いの杖」
「いくらで?」
「1480ゴールド。所持金の残りは20ゴールドだ」
「実は馬鹿なんすか、貴女は!!」
再び大きな声を町に響かせるテオだが、アカネは何の事か分からずにキョトンとテオの顔面を見つめる。
これだから初心者は...
何処かで聞いたそんなセリフを吐きたくなる気持ちを無理やり押し殺してテオは再び口を開く。
「勝てないモンスターに襲われたらどうするんですか?イチコロですよ?イチコロ?アカネさんは自分の防御力を知ってるんですか?」
「えっ、そんなの逃げれば...」
「敏捷0で逃げ切れるわけないでしょ!?」
「ぐぅ、確かに」
到底22歳とは思えない可愛らしい声を上げて押し黙るアカネ。
どうやら漸く自分がまたやらかしたことに気が付いたらしい。
「はぁ、まぁやってしまった事は仕方ないので、取り合えず外に出てお金を稼ぎましょう。どんな魔法が使えるんすか?」
「えー、ちょっと待って」
そう言って自分のメニュー画面から魔法の枠を選択して確認し始めるアカネ。
自分の使える魔法を確認するアカネ。
確認するアカネ?
だんだんアカネの顔が青ざめていくのテオには分かった。
分かってしまったのだ。
「ご、ごめん。私まだ魔法使えないみたい...」
「うん、そうですよねー、知ってた知ってた」
既存魔法は素の魔力に応じて解放されていくのだから、知力全振りのアカネが魔法を使える訳が無いのだ。
「「あははー」」
どうしようもない事実を知った二人の間には乾いた笑い声が残っただけだった。
5/12修正
ステータスに器用を追加しました。(完全に忘れてた)
5/19 誤字脱字を修正しました。