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お金の無い科学者はVRMMOの知力スキルに頼って研究するようです。  作者: お腹が減った人X
1章 始まりの街・冒険の始まり
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20話:スタンピート?

「ラウンドラッシュ!!」


もう何体目かも分からないくらい敵を斬って、テオもそろそろ疲れてきた頃、漸くコボルト達の量も目に見えて減ってきていた。


「後少しっすかね…てか、一体何体倒してるんすか俺は」


「テオさん!」


不意に後ろから名前を呼ばれ、振り向くテオ。

見れば、そこではミハとアズマ、そしてアルバートが10匹程度のコボルト達に囲まれながら悪戦苦闘といった様子だった。


どうしよう、助けてあげた方がいいんですかね


そんな彼らとは対照的にまた一匹また一匹とコボルトの頭を吹き飛ばしながら、テオは考える。

自分が手を差し伸べれば、彼らの練習にならないのではないか?と

そもそも、こんなに大量じゃなければ、いい練習相手として大半を彼らに任せる予定だったのだ。

ならやはり、ここは彼らに任せるべきではないのか?


「皆さんならきっと倒せます。落ち着いて戦ってください!」


そう叫ぶ間にテオの背後にコボルトの一体が回り込むが、倍速化されたテオはその攻撃も難なくかわして振り向きざまに大剣を振るう。


いい加減疲れてきた気がしますよ…

普段動かないデブをこんなに働かせるとか、どうかしてるでしょ…

と、誰かに聞かれたら拙いので、心の中だけでそう思うテオに、今度は3体が纏めて襲いかかる。

それも、彼らも少しは学習したのかラウンドスラッシュを避ける為に上下方向の三体同時攻撃だ。

これなら凪払いで対処出来ないと踏んだのだろう。

こんな事が出来るあたり、コボルトでさえ現実の人間(足を機械サイボーグ化してる人は別)よりもずっと強力な脚力を持っているのかも知れない。


だが、テオにとって敵が縦に並んでいようと横に並んでいようと関係ない。

今まで横に振っていたのを少し傾けて振ればいいだけなのだ。


「ラウンドスラッシュ!!!…え?」


大声で叫んだテオに対して大剣はいつもみたく青く輝こうとしない。

ひょっとして、もう使えないんすか!?


MPゲージが魔法の撃てる数を管理するのとは裏腹に、スキルの使用回数を管理するゲージはこのゲームには存在しない。

だから、テオはスキルは無限に使えるのではないかと、半分くらい思っていたのだ。


だが、本当はテオが知らないだけで各スキルには1日の使用回数回数が決まっているのだ。


だから、テオはミハ達にその事もちゃんと伝えなくてはならないだろう。

テオ自身、その存在をすっかり忘れていたため、彼らにその事を一切喋っていないのは幸いか。

後で少し補足説明として伝えるだけでいいかもしれない。


とは言え、テオがピンチなのは変わりなかった。

何せ、コボルトを3匹とも倒すつもりで剣を振ったのに、その宛が外れたのだ。

スキルの発動しなかった大剣の攻撃はは1匹のコボルトの体を数メートル吹き飛ばして、それだけで終わってしまったのだ。


だから、今まさに、テオの体に残った2匹の攻撃が襲いかかろうとしていた。

明音の魔法で強化されていたお陰で今までコボルトの攻撃をよけられてきたが、装備自体はほぼ初期装備なのだ。

攻撃を受ければ只では済むまい。

テオが被弾すること、これはアカネのテオ英雄化計画にとって美味しくない事態なのだ。


(アカネさんに殺されそうっすね)


そして、コボルトの片手斧が眉間に食い込まんとした時、テオの視界は赤色で埋め尽くされることとなった。


暗殺者の刃アサシネイト


誰かが小さくそう呟いたかと思うと、不可視の一撃が2体の頭を同時に穿つ。

驚くほど静かで空気の振動さえ一切感じない。

だが、その一撃は確かにコボルトの頭を抉り、赤色の粒子へと変換させていた。


「勉強不足だよー、テオ君」


「か、カノンさん、ありがとうございます」


「うんうん、いいのいいの。私はベータテスターだからねー。初心者を助けるのがベータテスターってものだからさ」


どうやらカノンは本当にベータテスターだったらしい。

だからだろう、テオを助けてからの行動も戦闘慣れしている様子で、アカネによる時間短縮ヘイストがかかっていないにも関わらず、テオ以上の速さでコボルトを倒している。


「所でカノンさん、今までどこにいたんっすか?というか今の何っすか?」


テオはスキルを使わずにコボルトを叩き斬りながら問う。


「んー、それは……まぁもう一緒のパーティーで行動する事にしたし言っちゃっていっか」


「ここからだと小さい声ならミハさん達にも聞こえないと思います」


「そっか、じゃあ初めから話すけど…」






「エルファイア!!!」


カノンが話し始めようとしたその時、爆炎が周りのコボルトを一掃する。十数分前にも一度経験した、アカネの超火力魔法だ。

だが今回はそれだけじゃなかった。


「サンダー!!」


アカネとは違う少女の高い声が森に木霊して、青色の光束がギザギザにあたりを駆け巡る。


「やった、出来ましたよ!アカネさん!」


少し向こうから聞こえてくる声を聞くに、どうやら二発目の魔法はリリンの物だったらしかった。


「これ、フレンドリーファイア有効だったら俺たち丸焦げでしたね」


「うん、周りが私とテオ君だけだったから良いものを、他のパーティーが近くにいたら喧嘩になってたと思う」


「それで、今まで何してたのかって話、聞いていいですか?」


雷と炎で焦げ臭くなった森の中でテオは改めて尋ねる事にする。


「うん、その話ね。多分あの子達ミハがこっちに来るから、さっき何をしたのかは言えないけど、今までどこで何をしてたのかって言うのは、コボルトの出てきた所を見に行ってたって感じかな」


「それで、何かあったんっすか?」


「うん、あったよ…」


そして、カノンは少しもったえぶって言った。


「ダンジョンが」



+++++


ザ・ワールド・オンライン運営チーム


「スタンピート!?」


図太い声を部屋に響かせて、男は叫ぶ。

その毛深い手には今日何杯目になるかも分からないコーヒーのマグカップ。

目を見れば、見たこともないような真っ黒なくまができている。

どうやら本当にまともな睡眠をとれていないらしい。


「そうです、このカメラ見て貰えますか?」


「はあ?なんだよこれは。100はいるんじゃないか?どこの映像だ?」


「20分前の始まりの南の森ですね」


「南の森か…と言うことは『コボルトのほこら』のあるところか?」


「このコボルト達は全部そこから出て来たみたいですよ。今はアカネってプレイヤーのパーティーに全滅させられたみたいですけど」


「アカネって言うと、あのプレイヤーか」


「ええ、昨日のです」


男はアカネという名前に疲れた表情を作りながらも、話を進める。


「それで、こいつらが祠から出てきたってことは、中で何かあったんだな。ちょっとカメラ変えてくれるか?」


「分かりました、これですね」


「おいおいおい、何だよこれは…」


画面に映る大量の黒色。

それは本来ここにはいないはずの存在の跡だった。


「こっちは深層です」


若い男が画面を切り替える。


「おい、これはプレイヤーか?」


「そうですね、今回の騒動はこのプレイヤーが原因だと思います」


「あー、つまり自分よりレベルの高いプレイヤーから逃げる使用が災いしたのか。これは、上に報告だな…」


「そうしましょう、僕達もそろそろ寝たいですし、上に任せましょう」


疲れのあまり本音が出てしまっているが、兎に角スタンピートのせいで運営チームは今日も眠れないなんて事は無さそうなのであった。

読んでくださりありがとうございます。

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作者のやる気にバフがかかります。

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