13話:弱点発覚?
前回の話ですが、若干の修正を加えました。
ストーリーに変更はありません。
そよ風が大地を駆け抜けて、草と草の擦れ合う音がのどかな安らぎを与えてくれる空間で、緑色の地面に大の字に寝転がりながらアカネは眠りそうになりながら空を見つめる。
文明が進み機械化された現代ではめったに見ることが出来ない青空はどこまでも深く感じられて、アカネはまた眠くなる。
しかし、どうやら魔力の尽きたアカネの睡眠への欲求は、決して願いはかなうことはないらしい。
「アカネちゃん、私の記憶だと明音ちゃんのMPは魔法1,2回程度じゃなくならないと思うの。説明お願いできる?」
つい数秒前のアカネの「眠ってもいい?」と言うお願いは却下されたらしく、銀髪ケモミミロリのカノンは不思議そうに尋ねる。
「カノンさん、お願いだから休ませて」
「んー、ダメダメ、MPが0になった時に感じる眠気は錯覚だから」
まだ発売3日目なのに一体何処からそんな情報を仕入れたのか定かではないが、アカネはその言葉を真実だと受け取っておく。
そしてその上でもう一度休ませてと願うのだ。
「高速思考を使ったから。少し疲れてるんだ」
口から出まかせだ。
思考加速を使ったのは僅か数十秒であり、実際にそのせいで眠くなるなんてことは無い。
それにアカネも過去にドイツで思考加速装置を使用した経験もあってそんなことは知っていたのだ。
だが、そんな代物を使った事のある人間は世の中のほんの一握りで、カノンは勿論そんなこと知る由もない。
「...仕方ないなー。じゃあ私は見守っとくから起きたら教えて」
その言葉を聞き終えてアカネはWeaveによって疑似的に作り出された眠気に身をゆだねる。
そう言えばあのデブは何処に行ったんだろう?
さっきから姿の見えないテオを思い出して、一瞬だけそんな事を考える。
が、テオの事なんてどうでも良いと切り捨てて、睡眠を優先させる事にした。
あー、ホントに疲れた
バイト先の先輩からの許しも得たことで、アカネは暫く夢の世界へで入り浸ることにしたのだった。
+++++
「うわぁ、中々に酷いことするんすね」
いつの間にか戻って来ていたテオはどうやら男達の死体を漁っていたらしい。
PKボーナスの金銭とアイテムの回収だ。
「うん、アカネちゃんがそんな残虐非道な子だったなんて、私知らなかった」
「まあ、私、極悪非道ってスキル持ってるからな」
「うん、今ならそのスキル妥当に思える」
盗賊紛いの男達との戦闘の詳細を聞いた2人は思い思いに反応する。
そして、2人ともが思わず息を飲んだのだがそれも仕方がない事だろう。
まず、アカネは襲いかかってきた男達から身を守るために土の壁を生成した、それも敵の攻撃を吸収し武器を奪おうとする泥で出来たような軟性の壁だ。
その性質だけでも恐ろしい壁の魔法。
だが、2人があのプレイヤー達に同情したのは勿論この魔法のせいではない。
次が問題なのだ。
巨大な壁に隠れたアカネはそこで思考加速IIIを解放した。
そして、延長された数十秒、脳内時間では百数十秒の内にアカネは新しい魔法式を組み立てる。
自身を侮辱した者に最大の恐怖を植え付ける魔法を。
壁が壊れる直前のあの不気味な笑みはそれ故のものだった。
そして、放った魔法は『一瞬で永遠な牢獄』。
対象に最上級のスロウを掛け、そこに鉄の杭を幾本も穿つと言う魔法だが、当然それだけではない。
何せ一瞬で永遠なのだ。
そして、これがこの魔法の非人道的な面である。
行動がスロウになったとき、それ以上に彼らは自身の動きが遅くなったように感じたかも知れない。
何故なら、彼等には思考加速の強化魔法がかけられていたからだ。
それも何重にも何重にも。
アカネが現在扱える思考加速のバフは1分間3倍速まで。
だがアカネはそれでは満足出来なかった。
だから5重にそれをかける事にしたのだ。
243倍。
それだけ引き延ばされた知覚時間の中では、男達の実時間にしてほんの数秒の恐怖は引き延ばされる。
延長された五感では杭が体に食い込んで頭が潰れていく一瞬の感覚を正確に感じ取ってしまっただろう。
いくらゲームの中で、痛みが殆ど無いとしても、その恐怖は計り知れない。
だから2人はアカネをおっかなく思ったのだ。
「でも、それだけでMPが尽きちゃったの?」
余りの事に、目の前にいる少女に若干の恐怖を覚えながら、カノンは話題を転換する。
「そうだが、普通は土の壁を作るのにどのくらいのMPが要るんだ?」
質問に答えたおまけに今度はアカネが質問をする。
薄々感づいていた、重要な質問だ。
「んー敵から武器を奪うことは無理っすけど、土壁を生み出すだけの魔法だと10くらいじゃないっすかね」
「詠唱は?」
「だいたい4単語くらいの文だよねー、でも何で?」
「えっと、私のあの魔法MPが55必要だったんだ」
「「はい?」」
予想通りの考えをアカネは自分なりの創作魔法についての考察を話すことにする。
まあ考察と言っても、まだリリース3日目で情報が出回っていないだけで、少しでも魔法式構築を弄った事のある人間なら誰でも気づきそうな事なのだが。
「多分だけど創作魔法は無詠唱と幅広い応用性の観点から使用に必要なMPが高いんだろうな」
「なるほどね、創作魔法の無詠唱は強すぎると思ってたけどそう言うことね。既存魔法と差別化するにはいいアイデアじゃん」
「ゲームバランスを守る上ではいいと思うっすけど、それじゃあ少し困りますね」
「そうだな、私もそう思う」
2人、つまりカノンとテオはアカネの燃費問題について思索する。
アカネはと言えば、特に戦闘目的でゲームをやってるわけじゃないので、燃費問題を考えてるふりをしながら、今やっている研究の事を考えていたりしたのだが、そんなこんなで1っ分ほどたった頃テオが自分の考えを口にしだした。
「今朝ネット掲示板で見たんっすけど、始まりの町から南西に進んだところにある次の町で魔法書が手に入るらしいっすよ」
「へー、何それ初耳学。魔法の書ってことは魔法を覚えられるってこと?テオ君?」
10年以上昔のバラエティー番組のタイトルをネタにしながらカノンは尋ねるが、当時は東大志望の受験生だったテオには伝わらないし、その時ドイツにいたアカネはそもそも話を聞いていない。
「いえ、まだ詳細なことは分からないんですけど、もしかしたらって思っただけっす」
「うーん、一考の余地ありかな...アカネちゃんはどう思う?」
「えっ?なんの話だっけ?」
並列演算を研究作業に使えないか色々脳内で試していたアカネは間抜けな反応をしてしまうが、カノンもテオもそれを咎めたりはしない。
こういうのはアカネといるとたまにあることなのだ。
「うん、聞いてなかったのね...次の町で手に入る町で魔法を覚えれるかもしれないって話」
「へえ」
「へえって、反応薄過ぎじゃないっすか?まあ別にいいですけど」
呆れたようにため息をつくテオは言葉を続ける。
「それで、どうします?次の町に行きません?もともと強いモンスターを求めて次に進もうって話でしたし」
「そう言えば、そんな話もしてたな。私はどっちでもいいけど」
「じゃあ早く次の町まで行っちゃわない?」
「そうですね、そうしましょう」
「お、おー」
二人の勢いに押され、アカネはノリで賛同する。
どうにも府に落ちないが、ゲーム初心者のアカネは次の方針を二人に丸投げすることにしたのだ。
今回も読んでくださりありがとうございました。
本文修正しました。
旧 残虐非道
新 極悪非道
ストーリーに変更はありません。




