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R017話 不遇

 1941年1月◯◯日 『アメリカ カリフォルニア州 港町クレセント・シティ』


 日本軍「桜華」部隊の占領下にある港町クレセント・シティ。

 今、そこはどこもかしこも建設現場と化していた。

 港も、新たに建設されている空港もクレーンが設置され、大きな倉庫が住民を徴用して建てられている。

 機材や物資は閑見商会のダミー会社が開戦前から準備しておいた物だ。


「作業急げ! もたもたするな! 遅れは許されんぞ!!」

 作業を監督する工兵隊の将校が流暢な英語を喋り、大声で急き立てている。


「くそっ! 毎日、毎日、土木作業ばかり。俺は会計士で肉体労働は苦手なんだ」

 強制労働させられている若い白人が多少大きな声で文句を吐き出した。


「おい。声が大きい。下手な事を言うなよ。巻き添えはごめんだぞ」

 中年の太った白人が小声で注意する。


 以前に、強制労働に嫌気のさした者が、日本の兵士に面と向かって抗議をしたら殴られたのだ。

 殴られた者を庇った者も同様の目にあっている。


「すまない。でも、言わずにはいられないんだよ」

「まっ気持ちはわかるがな」

 会計士の謝罪に中年男も理解を示す。みんな内心では同じように思っているのだ。


「いったいアメリカ軍は何をやっているんだ。いつこの町を救いに来てくれるんだ」

 今度は30代の痩せた男が小さな声で不満を漏らした。


「まったくだ」

「税金泥棒め、今戦わないでいつ戦うんだ」

「そうだよな」

 同意する声がさざ波のように広がっていく。


 クレセント・シティの住人は連邦軍の多くが壊滅している事を知らなかった。

 原子爆弾で全米の大都市が殲滅されているのを知らなかった。


 開戦初日に日本軍の占領下におかれた為、入って来る情報が限られていた。


 アメリカ大統領を始め政府要人が殺害され、連邦政府が壊滅状況にある事は、日本軍側から知らされてはいたが、そんな馬鹿げた話しがあるものかと、全く信じていなかった。


 実際、開戦数日で政府首脳が悉く殺害された戦争の例など、近代国家が誕生してから一度も無い事である。

 信じられないのも無理は無かった。


 それは他の日本軍に占領された町の住民も同じだった。


 だから彼らはいつまでも待ち続けた。

 いつか、きっとアメリカ政府が軍を差し向け自分達を解放してくれると。

 それを希望として不遇に耐えた。   

 長い間、耐えていた……


【to be continued】


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