スケットなわたし・最終章
『あなた、椿くんの彼女でしょ?』
そう言われた瞬間
わたしの中で時間が止まっていた。
『…えっ…』
『冗談に決まってるぢゃないですかー。』
冗談?!
か……何か知らないけど焦りまくった…
『ぢゃあまたご飯食べにきまーす。
失礼しますー』
『あっはい…
…ありがとうございました…。』
真中さんはそう言ってヒールの音をコツコツ鳴らして
トイレを出て行った。
なんなのあの人は……
椿もこんな感じで対応疲れるんだろうなぁ
だけど何で
突然あんな事言ってきたんだろ?
何となく女の直感みたいなやつで
言いたくなっちゃったのかな…
でも
それにしても初対面でお客と店員の立場でいきなり
彼女かどうか聞くなんて変な人だよね!!
わたしはそんな事を考えながら
階段を上っていると
壁にもたれながら
スマホをいじっている椿の姿が見えた。
『あーいたいた。』
『ごめんごめん!
ちょっとトイレに寄ってて。』
『なら良いんだけど
電話するとこだった。』
椿はそう言いながらスマホ画面を見せてきた。
『今すぐに着替えます!』
『あいよー
俺外出てるから。』
『うんっわかった!』
わたしは椿のオフィスに入り、
着替えようとした時洋服のボタンが
ビニール製の薄い髪の毛をしばっていたゴムが切れてしまった。
あ〜取れちゃった…
まいっか…。
切れたゴムを拾い、急いで部屋を出た。
裏口のドアを開け、キョロキョロっと椿の姿を探した。
あれ?
タバコでも吸ってるのかなと思ったけどいない…
どこだろ
裏口から続く路地を歩くと
お店の角から椿の横顔がほんの少し見えた。
『椿っ。お待たせ。』
『おっ!早速噂の彼女だなっ?!』
するとそこには初めて会う男の人がいた。
『いやっ噂って。』
『だってさっきお前の店のスタッフ達が
俺にこの子のこと言ってきたけど?』
『マジっすか。
まー…確かにスタッフには紹介しましたけど
こんな早く広まるってゆう…』
『いーぢゃねーのさっ。
俺に話したら最後だぜー。いっひっひー』
『知ってますよ。
別に隠す事ぢゃないんで良いンすけどね。』
『オッ!かっこいーねー椿くん!!』
わたしはポカンとしながら2人を見ていた。
関係性としては、この知らない男の人は年上で
お店にも来る仲でそこそこ親しい?間柄なのかな?
するとその男の人がわたしの方に歩いてきた。
『えっと、なんて名前なの??』
『えっ……』
『あー。ごめんね。
俺は、鷲尾 光 〔わしお ひかる〕。』
わたしはいきなりだったので少し困惑して
椿の顔を見ると
言って大丈夫だよと言う顔で私を見た。
『………咲坂 菫といいます……。』
『すみれちゃんかぁ。椿と菫。
花の名前同士のカップルなんてロマンチックだね。
年は椿とタメとか??』
『……あっ…はい。そうです。』
『いいなー。
こんな可愛い子と付き合っちゃってさー。
俺とも仲良くしてよー。』
そう言いながらわたしの手を掴もうとした瞬間
『はいはいー ストーップ
そこまでっすよ。』
椿が間に入った。
『椿め素早いなー』
『ぢゃあ鷲尾さん、また連絡しますんで失礼します。』
『色々楽しい報告待ってんぜー。
またねーすみれちゃんっ!』
『あっ…!はいっ。
…失礼しますっ…!』
椿はわたしの手を握り
その場をあとにした。
『やっぱり椿って沢山知り合いいるよね。』
『んまぁ、店やってるからそれなりにだけどね。』
『ぢゃああの鷲尾さんて人もお店やってるんだ??』
『駅前の〝esperança〝(エスペランサ)ってゆう
レストランバーの経営者。』
『そうなんだぁ。
確かに経営者ってゆう雰囲気出てるよね。』
『鷲尾さんはこの辺ぢゃ有名だかんなー。
親もやり手の経営者だったみたいだし。』
私たちは椿の車に乗り、
話を続けた。
『あの鷲尾さんて何歳なの??』
『確か…30…
いや、今年で31だったかな。』
『そうなんだ!若く見えるね。』
『美形だよな。
中性的な顔っつーの?ハーフみたいな。』
『うん。モテそうだよね。』
『あの人既婚者だよ。』
『えっ?!
奥さんいるようには見えなかった…!』
『ノリとかキャラがそう思わせるよな。
けど一途だと思うよ。女癖悪いとかは聞いたことないし。』
『ぢゃあ奥さん幸せだね。』
『すみれは?』
『えっわたしっ?!』
『いま、幸せ?』
椿はハンドルを握りながら
もう一方の空いてる手で
わたしの手を握って聞いてきた。
『当たり前でしょ。
凄く幸せ…。
怖いくらいにね?』
ちょうど信号で止まった車内で
椿はわたしに
自分の返事をするようにキスをしてきた。
そしてわたしの肩を抱き寄せながら
車はまた走り出した。
つづく。