スケットな私。
椿のお店のスタッフである三浦くんが
熱を出して仕事を休むことになった。
代わりに出れるスタッフがいなく
予約がいっぱいで忙しい今日は
急遽私がお店に出ることになった!
『オーナー、本当に良かったんすか??
すみれさんに手伝ってもらうなんて。』
『すみれが良いって言ってんだから良いんぢゃねーの。』
『すみれさん、美人だし目立つから変な目で見られたり
声かけられたらどーします?!』
『もしそんな奴居たらすぐ俺に言えよ。』
『笑顔が怖いっす…!!!』
『だろ?
てかまぢでそん時はよろしくなー。』
わたしは椿がいつも一人で使う事務所に入って
着替えるように言われた。
前にあの夏菜ちゃんが居た頃に
何着かサイズ違いで買ってあった
新しいブラウスとスカートを着た
『すみれ大丈夫か?』
事務所のドア越しに椿からの声。
『うん。大丈夫だよ。
パンプスはコレでいいかな??』
『つか中入るぞー』
ガチャ
『今日履いてたやつなんだけど、ヒール高すぎないよね?』
『お…おう。
いんぢゃね。足疲れなきゃ。』
『うん!
……それでどうかな?……
変ぢゃない??…』
『良いと思う、…うん。』
『なら良かった。』
『けど…スカートちょい短くね?』
『わたしもそう思ったんだけど
どうしても膝上になっちゃうんだよね。。』
『まぁ仕方ねーか。
…もし何かあったらすぐ言えよな。』
『なんかって??』
『…っだる絡みされたりあるかもしんねーから。』
『あっうん。
わかった!』
『ぢゃあ、これから他のスタッフにすみれのこと紹介して
そのあとに仕事の説明するから。』
わたしは椿と一緒に
スタッフが待つフロアへと向かった。
その椿の後ろ姿が急に
仕事している時に会う時の雰囲気になったと思った。
〝オーナーの顔〝
という言葉がぴったりのように。
『みんな集まってる?』
『おはようございます!』
椿の言葉にみんなが挨拶をした。
数えてみると
椿、トーマくん、わたしを含めて
今ここにいるだけで9人いた。
『今日三浦が具合悪くなって休みだから
その代わりに急遽仕事を手伝ってもらえることになった人を紹介する。』
そう言うと、椿はわたしの方を見て頷いた。
『…っ初めまして。
咲坂 菫といいます。ご迷惑おかけするかもしれませんが
頑張りますのでよろしくお願いしますっ…。』
『俺が今からとオープンしたあと知り合いの予約を入れたあとまでは色々教えてサポートしていくから、
そのあとはみんなで彼女をサポートしてやってほしい。
何か質問ある奴いる?』
すると何人か喋り出した。
『確か、お客として来たことありますよね?!』
『俺も思った!』
『タイプっす!
彼氏いるんですか?!』
すると椿はあきれた様子で言った。
『お前らの事だからそゆコト言うと思ってたよ。
だから先に言わせてもらう。
俺がその 〝カレシ〝 ってやつだ。
俺からは以上。
んぢゃ準備よろしくー。』
椿はわたしを呼び早速仕事のやり方を教え出した。
『……みんなにこんな早く言っちゃって良かったの?』
『いーのいーの。
あいつら根はいい奴らだけどバカだから』
『そっか。ありがとう。
椿がやりにくくならないなら私は良いんだけどね。』
『すみれが心配する事ぢゃねーから大丈夫だよ。』
そう言いい、優しく微笑んだ。
そして今日わたしがやる仕事内容は
まず、オーダーを取る事。
そのあと厨房にオーダーを入れる。
料理が出来上がったらフロアに設置されてる
一部の照明が青色に光るので運ぶ。
時間が空いてる時は少しずつでいいから
片付けをしていくことみたい。
オーダー取る時は紙に書いていくタイプなので
事前にメニューに目を通しておいて
商品名を書く。
『ざっくりとこんな感じかな。
聞いてるだけより実際にやってみる方がすぐ慣れるよ。
つかすみれが普段会社でやってる仕事内容より
ある意味ラクだと思うから心配すんな。』
『そーかなー。
…なんか緊張する…。』
『大丈夫大丈夫。
ちなみに今日は俺の知り合いの予約が多いからより気楽でいいよ。
あと今日は奥の2つのバーカウンターにはそれぞれ1人ずつスタッフがいて、フロア担当がすみれ含めて4人、
厨房が3人。俺は途中から厨房だからその3人の中の1人。
んでトーマがフロア担当の中の1人なんだけど、リードっていって主にお客さんを店に通す役目と会計、電話とかを受け持つから基本的にはその他の3人でまわすような感じかな。』
『えっ!
この広い店内を3人でっ?…』
『今日は俺も出来るだけフロアに出てほぼフォローするから。それに他のスタッフも頼りになるやつだし、遠慮なく何でも言って聞けよ。』
『…うん。わかった。
やれるだけやってみるっ!…』
とは言ったものの
わたしはかなり緊張していた。
どーしよー…
料理こぼしちゃったり
オーダーミスしたりしたらー…
わたしは一旦椿から離れて
グランドメニューとドリンクメニューを
一生懸命覚えることにした。
わたし自身が食べたり飲んだりしたことのある
メニューもあったので味の説明は出来るものもあるなと思った。
次にわたしはトーマくんのいるところへ行った。
『トーマくん。
アポ帳って見せてもらえたりする?』
『全然いつでもオッケーですよ。
ここに置いてあるので自由に見てください。』
『うん。ありがとう。』
椿の言ってた通り
今日は予約が多いんだ。
『この予約の人達は全員椿の知り合いなの?』
『こっちの2組はすぐそこでお店やってる知り合いで、この2組は口コミで来てからかなりの回数来てるんで常連さんすね。』
『そうなんだ。』
『やっぱり経営者の交友関係とか気になりますか?』
『うーん…。気にならないわけではないかな。
椿ってモテるし。』
『確かにモテますよね、オーナーは。
女性客はだいたいオーナー目当てで来てる人多いっすからねー。』
『なんか私の知らない世界って感じだよね。…』
『けどオーナーからしたら一流企業に勤めてるすみれさんに対してもきっと同じ気持ちっすよ。』
『そうかなぁ。…椿ってそーゆーこと思わなそうってゆうか。』
『頭脳、ルックス、性格、お金、
オーナーは全て揃ってます。
ただそうゆう男が一流企業にもいて更にすみれさんの近くにもいる可能性が高いとしたら何にも思わないことはないと思いますよー。』
『うーん…。』
『実際に、すみれさんはあの宮原さんと付き合ったぢゃないですか。』
『ま…ぁ…そうだよねっ…!』
トーマくんは声を小さくして言った。
『男と2人きりで遊ぶとかアウトですからねー
いくら友達だとしてもですよ。』
そうわたしに忠告して
他の準備へと移動したと思ったらまたすぐ
引き返してきた。
『1つ、言い忘れてたんすけど
この〝真中〔まなか〕さん〝て人、女4人グループでよく来てオーナーにやたら絡むんですけど気にしないで下さい。ここはホストクラブと勘違いしてる感ハンパなくて。』
『…その
絡むってゆうのはどんな感じに?…』
『腕組んだり、連絡先教えてくれとかとにかく
オーナーに対してのアピールがしつこいって感じっすね。
ひどい時は酔っ払ったフリ?的な事してオーナーに甘えたりと…。』
『……お店の中でも人がいてもお構いなしな感じなんだね…』
『前に、夏菜ちゃんて子がちょっとバイトしてたの覚えてますか?
そん時、いつもはスタッフが男しかいないのに何でみたいな感じでうざかったんでもしかしたら今日スミレさんも視線感じるかもしれないですけど、スルーして下さい。』
『うん……わかった。』
わたしはその真中さんて人が来ても気にしないように
言い聞かせた。
椿はカッコいいからモテるの仕方ないし
なにかを見ても心を無にしなきゃ。
『すみれさーん。
オーナーが厨房で呼んでますよ。』
『あっはい。いま行きます。』
わたしは急いで椿の所へ行った。
『少しはメニューとか覚えられた?』
『うん。何とか。
食べたことある料理とかは覚えたよ!
けど本番がだいぶ緊張するっ……』
『大丈夫大丈夫。
コース料理の場合はコース名間違いなければ流れで料理は出るし、単品の場合だって言われた料理名書いて確認してそのオーダー表持ってくれば良いんだから。』
『うんっ…。
メニュー取り間違えないように気をつける!』
すると椿はわたしを厨房の奥の方に手招きした。
『?なになに?
どうしたの??』
椿は大きな冷蔵庫を開けて
指を指した。
『えっ美味しそうー!
椿が作ったの?』
『そ。
試作品で、良ければメニューに出そうと思ってる。』
そこには可愛いスウィーツがあった。
見るからに美味しそう。
『仕事終わったら食べてみて。』
『うんうん!食べたい!
ありがとうッ。
そういえば椿ってメニュー色々考案して作ったりしてるけど、椿の行ってた大学って主に海外、経済系とかが強いよね??』
『大学在学中の長期の休みってあるぢゃん?その休み利用して年2回くらいイタリア行ってコックの仕事してる奴と友達になったからそいつに基礎を色々教えてもらったんだよね。』
『えっ!そうだったんだ!
やっぱり見えないとこでしっかり努力してるんだね!
でも椿の場合、その素質もあるから器用に出来ちゃうんだろうけどねっ。』
『まーねー!』
『そこは否定しないんだっ?』
『たまには認めようと思って。
俺の器用さに。』
『はいはい。
椿はとっても器用ですよー。』
すると冷蔵庫横のくぼみにわたしの背をつけ
厨房の入り口からは見えない角度へと誘導された。
『………どうしたの?』
『他にも器用な俺知ってる?』
わたしの髪の毛を撫でた。
『…………セクハラ椿。』
『好き同士が付き合っててもこの発言セクハラなの?』
『………違うかもしれないけど
今は言えないことだもん。………』
次にわたしの頬を触った
『そーゆーマジメちゃんなスミレ好きだよ。』
『……………
……わたしも……好き………。』
椿の顔が少しずつ近づいてきて
唇と唇が触れそうになった時
『お楽しみは最後まで取っとかないとなー。』
『……えっ…』
『俺もスミレ見習ってマジメくんてこと。』
『あっ…うん。
…そーゆうことねっ!……』
わたしは妙に焦った。
寸止めされて焦らされるとゆうのが
こんなにもソワソワすることだということを知った。
すると椿はわたしの耳元で静かに言った。
『今日の夜が楽しみだな。』
『ちょっ…!』
『よし!
仕事行くぞー』
『もう…
この変態。』
椿のちょっとしたセクハラS発言に翻弄されながら
わたしもフロアに向かった。
つづく。